卵胎生 卵胎生メダカ

エンドラーズライブベアラーの繁殖

Poecilia wingei / Endler's Livebearer

かんたんに言うと

親が稚魚をほとんど食べないので隔離が要らず、放っておいても殖えます。ただしグッピーと交雑します。

エンドラーズのオス。体長25mmほどの小さな体に強い発色を載せる。

撮影: drew goodman / CC BY-SA 4.0

繁殖の難易度

1回の産仔数

3〜25

初産は少なく、成熟したメスほど多く産む

出産の間隔

23〜35

産卵から出荷サイズまで

83〜148

約3〜5か月

1ペアの月間産出

2〜32

産まれる数の理論値。生存率は考慮していない

エンドラーズはグッピーに近縁な卵胎生の小型魚です。オスは体長25mmほどしかありませんが、その小さな体に強烈な発色を載せています。ベネズエラ北東部の限られたラグーンが原産で、1975年にジョン・エンドラーが採集して知られるようになりました。学名が付いたのは2005年と、比較的最近のことです。

繁殖はグッピーやプラティよりさらに簡単です。決定的な違いは、親が稚魚をほとんど食べないこと。産卵箱も隔離容器も要らず、浮き草を入れておけば本水槽で勝手に殖えていきます。しかもメスは生後2か月、オスは3〜5週で成熟するため、世代の回転がプラティより速い。増殖力という点では卵胎生の中でも上位です。

一方で、この種には他にない固有の問題があります。グッピーと交雑し、しかもその雑種に繁殖能力があることです。一度混ざると系統は不可逆的に汚染されます。日本のショップで「エンドラーズ」として流通している個体の多くは、既にグッピーの血が入った交雑個体だとされています。

そしてこの純血・交雑の差は、そのまま価格に現れています。通販では「エンドラーズグッピー(外国産)」が1ペア1,350円で売られている一方、産地と採集年が明示された血統系は1ペア9,200円から15,000円。同じ「エンドラーズ」で最大11倍の開きがあります。つまりこの魚で採算を狙うなら、殖やす技術ではなく、系統を証明できるかどうかが本体です。

繁殖サイクル

親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。

  1. 1
    養成 系統を確認して親魚を選ぶ 7〜30日

    親魚を繁殖できる状態に持っていく

  2. 2
    ペアリング グッピーと絶対に同居させない 1〜7日

    オスとメスを合わせる

  3. 3
    産卵・交尾 出産を待つ 23〜28日

    繁殖行動が起きる

  4. 4
    泳ぎ出し 隔離せず、本水槽でそのまま産ませる 1日

    稚魚が泳ぎ始め、餌を食べ出す

  5. 5
    稚魚育成 稚魚を育てる 21〜60日

    出荷サイズまで育てる

  6. 6
    雌雄判別 産仔数を記録し、雌雄を分ける 21〜60日

    オスメスを見分けて選別する

  7. 7
    出荷 系統名を明記して出荷する 60〜120日

    販売できるサイズに到達

繁殖の手順

1

系統を確認して親魚を選ぶ

7〜30日 25℃

この魚では、他のどの工程よりもここが重要です。「エンドラーズグッピー」という名前で安く売られている個体は、多くがグッピーとの交雑個体(K-Class)です。純血の系統を維持したいなら、産地名と採集年が明示された個体(「ラグナデパトス 2006」のような表記)を、専門店やブリーダーから入手してください。1ペア9,000円以上しますが、それが系統の値段です。

コツ 安価な「エンドラーズグッピー」は交雑前提で買うものと割り切れば、観賞用としては十分きれいです。

注意 素性を示せない個体は、どれだけ美しくても K-Class 扱いの安値にしかなりません。

2

グッピーと絶対に同居させない

1〜7日 25℃

エンドラーズとグッピーは交雑します。しかも生まれた雑種には繁殖能力があるため、一度混ざると次の世代でさらに広がり、系統は不可逆的に汚染されます。これがこの種に固有の、そして最大の管理項目です。オス1匹に対してメス2〜3匹で組み、水温は25℃前後を維持します。オスは25mm前後とメスより明らかに小さいので、サイズ差に驚かないでください。

エンドラーズ(Poecilia wingei)とグッピー(Poecilia reticulata)の比較。近縁なため交雑し、しかもその雑種には繁殖能力がある。
エンドラーズ(Poecilia wingei)とグッピー(Poecilia reticulata)の比較。近縁なため交雑し、しかもその雑種には繁殖能力がある。

撮影: Dgrummon / CC BY-SA 4.0

注意 「1匹だけなら」は通用しません。オスが1匹紛れ込むだけで系統は終わります。水槽は物理的に分けてください。

3

出産を待つ

23〜28日 25℃

交尾から23〜28日ほどで出産します。メスの腹部が膨らみ、妊娠マークが濃くなってきたら近づいている合図です。エンドラーズはグッピーやプラティのように出産のたびに慌てて隔離する必要がありません。次の工程がその理由です。

4

隔離せず、本水槽でそのまま産ませる

1日 25℃

ここがグッピー・プラティとの決定的な違いです。エンドラーズの親は稚魚をほとんど食べません。産卵箱も隔離容器も要らず、浮き草やウィローモスを入れておけば本水槽でそのまま稚魚が育ちます。親を追いかけ回してストレスをかける必要も、狭い容器で水質を悪化させる心配もありません。繁殖の手間という点では卵胎生の中でも最も楽な部類です。

コツ 浮き草を厚めに入れておくと、稚魚が隠れられて生存率がさらに上がります。

注意 フィルターの吸い込み口には細目のスポンジを付けてください。捕食されなくても、吸い込まれれば同じことです。

5

稚魚を育てる

21〜60日 25℃

エンドラーズの稚魚は比較的大きく、生まれた初日からブラインシュリンプや粉末フレークを食べられます。インフゾリアのような微細な初期飼料を用意する必要はありません。1日2〜3回に分けて少量ずつ与えます。オスは生後3〜5週で発色しはじめ、この時点で雌雄が一目で分かるようになります。

6

産仔数を記録し、雌雄を分ける

21〜60日

メスは生後2か月で成熟します。プラティより速いので、殖やしすぎたくないならこの時点で雌雄を分けてください。あわせて、1回の産仔数を記録しておくことをおすすめします。純血のエンドラーズは1回の産仔数が3〜5匹と非常に少ないとされ、10〜30匹も産む個体はグッピーの血が入っている可能性が高いと考えられています。つまり産仔数そのものが、手元の個体の素性を推し量る手がかりになります。

コツ 世代を重ねて色が薄くなり、体が大きくなってきたら交雑を疑ってください。

7

系統名を明記して出荷する

60〜120日

生後2〜4か月で成熟し、オスは完全に発色します。売るなら、系統名(産地+採集年)を必ず明記してください。charm で「ラグナデパトス 2006」が1ペア9,200円、「レッドラインタイプ」が15,000円で売られている一方、素性を示さない「エンドラーズグッピー」は1ペア1,350円です。同じ魚で11倍の差がつくのは、値段が付いているのが魚ではなく系統の証明だからです。累代の記録を残していないなら、その差額は取れません。

注意 殖えすぎた個体を川や池に放流することは絶対にしないでください。

仕入れ値と採算

2026年7月17日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。

仕入れ値(1匹)

250〜800

まとめ買いで単価が下がる

親ペア

1,350〜15,000

店頭での販売価格(1匹)

250〜800

ショップの価格。個人が同額で売れるという意味ではない

基本データ

エンドラーズライブベアラーの基本データ
繁殖形態卵胎生 — メスが体内で卵を孵化させ、泳げる状態の稚魚を産む。卵の管理が要らないぶん最も簡単で、繁殖の入門に向く。
成魚サイズ25〜45mm
寿命2〜3年
適水温22〜30℃
繁殖適水温25〜26℃
pH6.5〜8.5
性成熟まで60〜90日
妊娠期間 23〜28日
稚魚の初期飼料ブラインシュリンプ(活)。稚魚が比較的大きく、粉末フレークも初日から食べられる
親の隔離 不要
雌雄の見分け方オスは体長25mm前後と極端に小さく、強い発色と棒状の交接器(ゴノポジウム)を持つ。メスは40〜45mmと明らかに大きく、体色は地味。サイズ差が大きいので一目で分かる。オスは生後3〜5週で発色しはじめる。
原産地ベネズエラ
入手先 専門店、通販、オークション

混泳相性

相手 相性 理由
グッピー 避ける 交雑します。しかも生まれた雑種に繁殖能力があるため、一度混ざると系統は不可逆的に汚染されます。攻撃されるという意味の相性の悪さではなく、系統を失うという意味で最も避けるべき相手です。
コリドラス 良い 底層で温和。生活層が分かれ、稚エンドラーズにも手を出さない。
オトシンクルス 良い 温和でコケを食べる。エンドラーズと争わない。
ネオンテトラ 良い 温和で棲み分けが成立する。
ミナミヌマエビ 注意 成体は同居できるが、稚エビは食べられる可能性がある。
ベタ(オス) 避ける エンドラーズのオスは25mm前後と小さく、捕食や攻撃の対象になる。

よくある失敗

繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。

世代を重ねたら色が薄く、体が大きくなった よく起きる

症状
黒や青の発色が薄れ、代わりに赤や緑が目立つようになる。体が大型化し、尾ビレが大きくなる。
原因
グッピーとの交雑。雑種に繁殖能力があるため、一度混ざると世代を追うごとに形質が薄まっていく。
対策
グッピーと物理的に隔離する。購入時点で系統を確認する。産仔数が急に増えたら交雑を疑う。

買った時点で既に交雑していた よく起きる

症状
純血のつもりで買ったのに、産仔数が多く、形質が安定しない。
原因
日本のショップで流通するエンドラーズの多くは既にグッピーの血が入った交雑個体(K-Class)とされる。タイプ産地の個体群でも1970年代以降に自然交雑が起きた可能性が指摘されている。
対策
産地名と採集年が明示された個体を専門店・ブリーダーから入手する。「エンドラーズグッピー」という商品名の安価な個体は交雑前提と考える。

想定以上に増えて手に負えない よく起きる

症状
本水槽が稚魚で埋まる。
原因
親が稚魚を食べないため自然減がない。加えてメスは生後2か月で成熟し、23〜24日周期で出産する。グッピーやプラティより増える。
対策
生後2か月までに雌雄を分ける。繁殖を始める前に引き取り先を確保しておく。

知っておきたいこと

タイプ産地であるベネズエラのラグナ・デ・パトス(Laguna de Patos)の個体群は、水質汚染によって野生では絶滅したとされています。「ラグナデパトス」という系統名が付いた個体が高値で取引されるのは、それが失われた原産地の血を引くとされるためです。

愛好家の間では、エンドラーズを3つのクラスに分ける考え方があります。N-Class は原産地の野生個体から直接系統を維持したもの、P-Class は同等の形質だが履歴に不確実性があるもの、K-Class はグッピーとの交雑個体です。日本のショップで一般に流通しているものの多くは K-Class にあたり、純血の N-Class は専門ブリーダーや専門店でしか入手が難しいとされています。

よくある質問

エンドラーズとグッピーは何が違うのですか?
別種です(エンドラーズは Poecilia wingei、グッピーは Poecilia reticulata)。エンドラーズのほうがオスが小さく(25mm前後)、親が稚魚をほとんど食べません。ただし近縁なため交雑し、しかもその雑種には繁殖能力があります。そのため両者を同じ水槽で飼うと、エンドラーズの系統は不可逆的に汚染されます。
純血のエンドラーズかどうか、どう見分けますか?
確実な判別方法はありません。手がかりは2つあります。ひとつは産仔数で、純血種は1回に3〜5匹と非常に少なく、10〜30匹も産む個体はグッピーの血が入っている可能性が高いとされます。もうひとつは発色で、純血は黒や青が濃くはっきり出るのに対し、血が薄いと黒や青が薄れて赤や緑が目立つようになります。確実性を求めるなら、産地名と採集年が明示された個体を専門店から入手するしかありません。
エンドラーズの繁殖は儲かりますか?
普及系(1匹250〜300円で流通する「エンドラーズグッピー」)はグッピーやプラティと同じく採算が合いません。ただし血統系には明確なプレミアムが実在します。2026年7月時点で、「ラグナデパトス 2006」が1ペア9,200円、「レッドラインタイプ」が15,000円で実際に販売されています。同じエンドラーズで最大11倍の差です。ただしこれは殖やす技術ではなく、系統を証明できるかどうかの差です。入手元と累代の記録管理が事業の本体になります。
産卵箱は必要ですか?
不要です。エンドラーズの親は稚魚をほとんど食べません。浮き草やウィローモスを入れておけば、本水槽でそのまま稚魚が育ちます。これがグッピーやプラティとの大きな違いで、繁殖の手間はこの種のほうが明らかに少なくて済みます。
N-Class、P-Class、K-Class とは何ですか?
愛好家の間で使われるエンドラーズの分類です。N-Class は原産地の野生個体から直接系統を維持したもの、P-Class は同等の形質だが履歴に不確実性があるもの、K-Class はグッピーとの交雑個体を指します。日本のショップで一般に流通しているものの多くは K-Class にあたり、純血の N-Class は専門ブリーダーや専門店でしか入手が難しいとされています。なおこの分類は愛好家の慣習であり、公式な規格ではありません。
数値の根拠と情報源

【価格】2026-07-17 に charm(チャーム)の「エンドラーズ」検索結果(80件)で実測。charm は商品名で2つの階層を明確に分けている。 ・普及系「エンドラーズグッピー(外国産/インドネシア産)」: メス10匹2,500円=1匹250円、オス10匹2,900円=1匹290円、単品はメス1匹750円・オス1匹800円、1ペア1,350円、5ペア3,100円=1ペア620円。品種物(タイガー・ゴールデンライヤーテール・ピンクホワイト・レッドチェスト)はオス1匹300〜340円、ジャパンブルーはオス1匹430円。 ・血統系「エンドラーズライブベアラー(国産グッピー/ワイルドフォーム系)」: フレームテール1ペア9,200円、ラグナデパトス2006が1ペア9,200円、レッドラインタイプが1ペア15,000円(いずれも送料無料)。 → 同じ「エンドラーズ」で最大約11倍の価格差(1ペア1,350円 vs 15,000円)。性別でも値付けが分かれる(オス800円 > メス750円。オスが観賞価値を担う)。 【情報源の食い違い】 ・pH: 日本のソース(日淡といっしょ)は6.5〜7.5・最適6.8〜7.0で弱酸性のほうが発色が良いとする。Seriously Fish は7.0〜8.5。差が大きいため両方を含む6.5〜8.5とした。前者は発色重視の飼育論、後者は原種の生息環境(汽水寄りラグーン)基準と思われる。 ・産仔数: 3〜5匹(純血・野生個体)/5〜25匹(Seriously Fish、メスの齢とサイズ依存)/10〜30匹(日本のソース)と大きく割れる。これは誤りではなく、産仔数の多寡が純血度の指標として機能するため。多産な個体はグッピーの血が入っている可能性が高いとされる。ここでは3〜25匹とした。 ・妊娠期間: 約28日(日本のソース)/23〜24日ごとに出産(Seriously Fish)。 【裏付けが取れなかった項目】貯精(一度の交尾で複数回出産できるか)について、エンドラーズ固有の記述を確認できなかった。カダヤシ科に共通する性質と推定されるが、裏付けが無いため数値としては扱っていない。出荷サイズまでの日数も直接の情報源が無く、メスの性成熟が生後2か月であることから60〜120日と推定した目安。稚魚の生存率、繁殖に必要な最小水量も裏付けなし。 【クラス分類について】N-Class / P-Class / K-Class という愛好家の分類は日淡といっしょ(単一の情報源)に依拠している。ただし「流通個体の多くが交雑である」という点は、Wikipedia が「本種として流通するものはグッピーとの人為的交雑種である可能性がある」と記載しており、charm が商品名とカテゴリを分けて11倍の値差を付けている実態とも整合する。 【採算について】個人繁殖の利益額を数値で示した一次情報は見つからなかった。本文の結論は、確認済みの販売価格と買取市場の状況からの推論である。血統系にプレミアムが実在することは charm の実売価格で確認できるが、エンドラーズが買取の対象になるかは明示された情報を確認できなかった。 【主な情報源】charm(販売ページ)、Seriously Fish、日淡といっしょ、Ordinary-Aquarium、aru-na、Wikipedia、東京アクアガーデン。