抱卵 エビ・貝

レッドビーシュリンプの繁殖

Caridina logemanni / Red Bee Shrimp / Crystal Red Shrimp

かんたんに言うと

単価はミナミの10倍近くありますが、水質の作り込みと選別が要り、相場は下降局面です。

レッドビーシュリンプ。白と赤の帯模様の入り方でグレードが分けられる。

撮影: 5snake5 / CC0(パブリックドメイン)

繁殖の難易度

1回の産仔数

20〜30

初産は少なく、成熟したメスほど多く産む

産卵から出荷サイズまで

110〜190

約4〜6か月

レッドビーシュリンプは、野生の黒いビーシュリンプから1990年代に日本で赤色を固定した改良品種です。白と赤の帯模様の美しさから熱狂的な人気を集め、かつては1匹数万円から10万円を超える値が付いた時代もありました。

繁殖の仕組み自体はミナミヌマエビやレッドチェリーと同じです。メスが腹脚に卵を抱えて25〜30日ほど運び、稚エビは親と同じ姿で出てきます。親は稚エビを食べないので隔離も要りません。ここまでは簡単です。

難しいのは水質です。レッドビーは弱酸性(pH 6.0〜6.5)の軟水を好み、硬度も脱皮のために一定以上が必要です。水温は24℃前後が最も殖え、28℃を超えると落ちはじめます。つまり夏は冷却が必須で、その電気代がそのまま採算にのしかかります。加えてソイルは吸着能とpHの緩衝力が1年から1年半で切れるため、定期的な入れ替えが要ります。魚と混泳させると隠れて抱卵しなくなるうえ稚エビも捕食されるため、繁殖を狙うなら単独飼育がほぼ前提です。技術の習得には2〜3年かかるとも言われます。

そして採算については、調べた結果ひとつ意外な事実が出てきました。解説サイトは「バンド<タイガー<日の丸<進入禁止<モスラ」という序列でグレードを語りますが、通販の実売価格を見ると、日の丸とタイガーは同額(5匹2,420円)、しかも1匹単位では日の丸もモスラもタイガーも全て690円で区別されていません。実際に効いている価格差は「無選別(1匹195〜280円)」と「選別済み(1匹484〜583円)」の間にある2.2〜2.5倍の壁だけです。詳しくは採算の項をご覧ください。

繁殖サイクル

親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。

  1. 1
    養成 弱酸性・軟水の水槽を作り込む 30〜60日

    親魚を繁殖できる状態に持っていく

  2. 2
    ペアリング 魚を入れない。単独飼育にする 1〜7日

    オスとメスを合わせる

  3. 3
    産卵・交尾 水温24℃前後を保って待つ 7〜30日

    繁殖行動が起きる

  4. 4
    卵の管理 抱卵中は環境を変えない 20〜40日

    孵化までの管理

  5. 5
    稚魚育成 稚エビはそのまま同じ水槽で育つ 30〜60日

    出荷サイズまで育てる

  6. 6
    雌雄判別 柄を見て選別する 90日

    オスメスを見分けて選別する

  7. 7
    出荷 出荷する前に価格の現実を見る 90〜150日

    販売できるサイズに到達

繁殖の手順

1

弱酸性・軟水の水槽を作り込む

30〜60日

この種の繁殖は水質作りがすべてです。pH 6.0〜6.5の弱酸性、硬度はGH 6〜8を目安にします。硬度が低すぎると脱皮不全で死にます。ソイルを使って弱酸性に寄せるのが定番ですが、ソイルは吸着能とpHの緩衝力が1年から1年半で切れるため、その周期で交換する前提で組んでください。立ち上げ後は最低1か月、水質が安定するまで待ってからエビを入れます。

注意 ソイルの寿命切れは静かに来ます。1年〜1年半で水槽が崩壊する原因のほとんどがこれです。

2

魚を入れない。単独飼育にする

1〜7日

レッドビーの繁殖では単独飼育がほぼ前提です。魚がいると、エビは隠れて抱卵しなくなります。仮に抱卵しても稚エビは捕食されますし、口に入らないサイズでもつつかれてストレスになります。メダカとの混泳もよく検討されますが、メダカは中性から弱アルカリ性を好み、レッドビーは弱酸性を好むため水質の要求が逆方向です。どちらかに合わせれば、もう一方が調子を崩します。

注意 水草の残留農薬と銅は微量でも致命的です。「無農薬」表記のものだけを使ってください。

3

水温24℃前後を保って待つ

7〜30日 24℃

20〜26℃が飼育の適温ですが、最も殖えるのは24℃前後です。そして28℃が壁になります。これを超えると落ちはじめるため、日本の夏は冷却が必須です。クーラーか、部屋の冷房を入れっぱなしにするかのどちらかで、その電気代がそのまま採算にのしかかります。水温さえ合っていれば、特別なきっかけを与えなくてもメスが腹脚に卵を抱えます。1回の抱卵数は20〜30個です。

コツ ミナミヌマエビの38〜130個と比べると産む数は少なめです。数で稼げる種ではありません。

4

抱卵中は環境を変えない

20〜40日 24℃

メスは25〜30日ほど卵を抱えて運びます。水温で大きく変わり、夏は20〜25日、冬は30〜40日かかります。この間は環境を変えないことが仕事です。水質が急変すると脱卵します。水換えは少量を分割して行ってください。ミネラルの添加剤を使う場合は規定量を厳守します。入れすぎもまた水質の急変であり、脱皮不全の原因になります。

注意 「調子が悪い」と気づいた時には手遅れなことが多いのがエビです。予防しかありません。

5

稚エビはそのまま同じ水槽で育つ

30〜60日 24℃

稚エビは親と同じ姿で出てきて、そのまま同じ水槽で育ちます。親は食べません。隔離も微細な初期飼料も要りません。ここはミナミヌマエビと同じで、繁殖の手間という点では楽です。稚エビはソイルの表面の微生物やコケを食べて育ちます。専用の稚エビ用フードもありますが、水を汚さない範囲で。

6

柄を見て選別する

90日

生後約3か月、体長1.5cmほどで性成熟します。この頃には柄がはっきり出るので選別できます。ここが採算の分かれ目です。ただし、親の柄が良くても全ての子が高グレードになるわけではありません。色と柄は血統に依存するため、一定の割合で外れが出ます。外れた個体は無選別の価格でしか捌けません。選別には目視の手間と、選別後を分ける水槽が要ります。

コツ グレードの基準は店ごとに違います。「日の丸」と言っても、どこまでを日の丸と呼ぶかは統一されていません。

7

出荷する前に価格の現実を見る

90〜150日

生後3〜5か月で出荷サイズになります。ただし、期待している価格差は実売には存在しないかもしれません。解説サイトは「バンド<タイガー<日の丸<進入禁止<モスラ」と序列を語りますが、通販の実売では日の丸とタイガーが同額で、1匹単位ではモスラも日の丸もタイガーも全て690円です。実際に効く差は「無選別 195〜280円」と「選別済み 484〜583円」の間の2.2〜2.5倍だけ。その2.2倍を得るために、選別の手間と外れの歩留まりロスと水槽の増設を払う計算になります。

注意 相場は下降局面です。かつて1匹数万円だった時代の話を根拠に始めないでください。

仕入れ値と採算

2026年7月17日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。

仕入れ値(1匹)

195〜280

まとめ買いで単価が下がる

店頭での販売価格(1匹)

195〜690

ショップの価格。個人が同額で売れるという意味ではない

この魚は売って儲かるのか

当サイトで調べたすべての種で「個人が売って儲けるのはほぼ成立しない」という結論になりました。 腕前ではなく市場の構造の問題です。理由は 繁殖は儲かるのかにまとめてあります。 自分の条件で試算したい場合は採算シミュレーターをどうぞ。

基本データ

レッドビーシュリンプの基本データ
繁殖形態抱卵 — エビが腹脚に卵を抱えて孵化まで運ぶ。稚エビは親と同じ形で産まれ、そのまま同居で育つ。
成魚サイズ25〜30mm
寿命1〜2年
適水温20〜26℃
繁殖適水温23〜25℃
pH6〜6.5
性成熟まで90〜90日
産卵から孵化まで 20〜40日
稚魚の初期飼料インフゾリア・微生物・専用の稚エビ用フード
親の隔離 不要
雌雄の見分け方メスのほうが大きく(約3cm、オスは約2.5cm)、腹部が丸い。抱卵すると腹脚に卵を抱えるので一目で分かる。
原産地中国、香港
入手先 専門店、通販、オークション

混泳相性

相手 相性 理由
レッドチェリーシュリンプ 注意 別属なので交雑はしない。ただし好む水質が違い(ビーは弱酸性6.0〜6.5、チェリーは6.5〜8.0)、どちらかに合わせるともう一方が本調子を出せない。
タイガーシュリンプ 避ける 同じ Caridina 属なので交雑する。色を維持したいなら混ぜない。
メダカ 避ける 水質の要求が逆方向(メダカは中性〜弱アルカリ性、ビーは弱酸性)。どちらかに合わせるともう一方が調子を崩す。加えて稚エビが捕食される。
小型カラシン 避ける 稚エビが捕食される。口に入らないサイズでもつつかれてストレスになり、抱卵しなくなる。
ヒメタニシ 良い 貝なのでエビを襲わない。ただし弱酸性の水では貝殻が溶けやすい点に注意。

よくある失敗

繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。

夏に落ちる よく起きる

症状
梅雨明けから夏にかけて、抱卵が止まり、次々と死ぬ。
原因
高水温。レッドビーは28℃が壁で、これを超えると落ちはじめる。
対策
クーラーを入れるか、部屋の冷房を入れっぱなしにする。この電気代が採算に直撃するため、始める前に見積もっておくこと。

1年〜1年半で水槽が崩壊する よく起きる

症状
安定していた水槽が、ある時期を境に調子を崩し、殖えなくなり落ちていく。
原因
ソイルの寿命。吸着能とpHの緩衝力が1年から1年半で切れる。
対策
1年〜1年半でソイルを交換する前提で組む。この周期を知らずに「原因不明の崩壊」として諦める人が多い。

脱皮の途中で死んでいる よく起きる

症状
殻が途中までしか脱げていない。頭胸部と腹部の継ぎ目が白く開いて死んでいる。
原因
脱皮不全。硬度(GH)の不足が主因。アンモニアや亜硝酸の蓄積、pHの急変も引き金になる。添加剤の入れすぎも水質の急変として作用する。
対策
GHを6〜8に保つ。最低でも3は必要。ミネラル添加剤は規定量を厳守する。水換えは少量を頻繁に。

抱卵しない

症状
エビは元気だが、いつまで経っても卵を抱えない。
原因
魚との混泳によるストレス。エビが隠れて出てこない。あるいは水温が繁殖適温から外れている。
対策
単独飼育にする。水温を24℃前後に保つ。

水草を入れた数日後に全滅した よく起きる

症状
水草を導入してから数日でエビだけが次々と死ぬ。
原因
水草の残留農薬。昆虫の神経系を標的にした薬剤が多く、エビは昆虫に近縁なため致命的に効く。
対策
「無農薬」表記の水草だけを使う。不安なら数匹で24〜48時間の生物検定をしてから本水槽へ。

知っておきたいこと

学名について補足します。レッドビーシュリンプは長らく Caridina cantonensis の変種として扱われてきましたが、2014年に Klotz と von Rintelen が分類を見直し、ビーシュリンプやクリスタルレッドの正体は Caridina logemanni であるとされました。C. cantonensis はその姉妹種にあたります。日本ではいまも C. cantonensis var. の表記が広く使われているため、古い学名を見かけても誤りとは限りませんが、現行の分類では logemanni が正しい名前です。

かつての熱狂ぶりを示す話として、2000年代には1匹あたり数万円で取引され、養殖で稼ぐという触れ込みの情報も出回りました。現在の実売価格は無選別で1匹200円程度です。相場は明確に下降局面にあります。

よくある質問

グレードが高いほど高く売れますか?
思っているほどではありません。解説サイトは「バンド<タイガー<日の丸<進入禁止<モスラ」という序列を語りますが、通販の実売価格を見ると日の丸とタイガーは同額(5匹2,420円)で、1匹単位では日の丸もモスラもタイガーも全て690円と区別されていません(2026年7月時点)。実際に効いている価格差は「無選別 1匹195〜280円」と「選別済み 1匹484〜583円」の間にある2.2〜2.5倍の壁だけです。グレードの基準自体も店ごとに違います。
レッドビーの繁殖は儲かりますか?
厳しいです。単価はミナミヌマエビの10倍近くありますが、選別しても上がるのは2.2〜2.5倍が上限で、しかも親の柄が良くても全ての子が高グレードにはなりません。外れた個体は無選別の価格でしか捌けません。そこへ選別の手間、水槽の増設、夏の冷却電気代、1年〜1年半ごとのソイル交換が乗ります。相場も下降局面で、かつて1匹数万円だったものが現在は無選別で200円程度です。技術の習得に2〜3年かかるとも言われます。
メダカやテトラと一緒に飼えますか?
繁殖を狙うなら単独飼育にしてください。魚がいるとエビは隠れて抱卵しなくなり、稚エビも捕食されます。特にメダカは中性〜弱アルカリ性を好むのに対しレッドビーは弱酸性(pH 6.0〜6.5)を好むため、水質の要求が逆方向です。どちらかに合わせれば、もう一方が調子を崩します。
レッドチェリーシュリンプと交雑しますか?
しません。レッドビーは Caridina 属、レッドチェリーは Neocaridina 属で別属です。ただし同じ Caridina 属のタイガーやクリームとは交雑します。色を維持したいなら、Caridina 属どうしを混ぜないでください。通販ではビーとクリームなどを混ぜたセットも売られていますが、色を維持したいなら避けるべきです。
学名が Caridina cantonensis と書かれているのを見ました
古い学名です。2014年に Klotz と von Rintelen が分類を見直し、ビーシュリンプやクリスタルレッドの正体は Caridina logemanni であるとされました。C. cantonensis はその姉妹種にあたります。日本ではいまも旧学名の表記が広く使われているため、見かけても誤りとは限りませんが、現行の分類では logemanni が正しい名前です。
数値の根拠と情報源

【価格】2026-07-17 に charm(チャーム)の実売ページで確認。 ・無選別: 300匹58,500円=1匹195円、200匹39,500円=198円、100匹21,000円=210円、30匹6,300円=210円、20匹4,400円=220円、10匹2,300円=230円、5匹1,400円=280円。 ・選別済み: タイガー5匹2,420円=484円、日の丸5匹2,420円=484円、日の丸3匹1,670円=557円、モスラ10匹5,290円=529円、モスラ3匹1,750円=583円、クリーム10匹3,450円=345円。 ・1匹単位: タイガー・日の丸・モスラはいずれも690円。レッドファンシータイガー1匹1,550円。 【グレードの序列と実売の乖離(重要)】解説サイトは「バンド<タイガー<日の丸<進入禁止<モスラ」という序列でグレードを語る。しかし charm の実売では日の丸とタイガーが同額(5匹2,420円)、1匹単位では日の丸・モスラ・タイガーが全て690円で無差別。つまり序列は理論値で、実売はもっと平坦。実際に効いている価格差は「無選別(195〜280円)」と「選別済み(484〜583円)」の間の2.2〜2.5倍の壁だけである。なおグレードの基準は店ごとに異なる。「進入禁止」は charm に単独商品が無く、価格の裏付けが取れなかった。 【学名】2014年に Klotz & von Rintelen が Caridina cantonensis を分割し、ビー/クリスタルレッドの正体は Caridina logemanni とされた(GBIF、Seriously Fish)。C. cantonensis は姉妹種。日本では旧学名の表記がいまも広く使われている。なお BloodCore は本種を「Neocaridina sp.」と記載しているが、これは属が違う明白な誤り。 【裏付けが取れなかった項目】抱卵の間隔、KH の具体値、稚エビの生存率は裏付けなし。出荷サイズまでの日数は「生後約3か月・体長1.5cmで性成熟」を根拠にした目安で、「販売サイズ」という定義自体が情報源に存在しない。 【抱卵期間】25〜30日。夏20〜25日、春秋25〜30日、冬30〜40日と水温で大きく変わる。600÷水温=日数という経験則が複数の情報源に見られるが一次情報ではない。 【採算について】個人繁殖の利益額を数値で示した一次情報は無い。本文の結論は確認済みの実売価格と、コスト要因(ソイルの1〜1.5年での交換、夏の冷却電気代、選別工数、2〜3年の技術習得期間)からの推論である。相場の下降については「かつて1匹数万円〜10万円超の時代があったがピークは過ぎ、現在は1匹200円程度が妥当」という複数の記述があり、charm の無選別210円と一致する。 【利益相反への注意】検索上位に「ビーシュリンプ養殖で副業・独立」を謳うページがあるが、これは養殖セットを販売する業者の広告ページであり、採算の根拠には使っていない。 【主な情報源】charm(販売ページ)、GBIF、Seriously Fish、BloodCore、urushiebi、tanagogo、bee-shrimp.com、東京アクアガーデン、aquatic-grass、red-bee-auction。