抱卵 エビ・貝

レッドチェリーシュリンプの繁殖

Neocaridina davidi / Red Cherry Shrimp

かんたんに言うと

ミナミヌマエビと同じ手軽さで殖え、色がつくぶん少し高く売れます。ただし混ぜると色が消えます。

レッドチェリーシュリンプ。色は血統に依存し、薄い個体からは薄い子しか産まれない。

撮影: Uccio D'Agostino / CC BY 4.0

繁殖の難易度

1回の産仔数

20〜30

初産は少なく、成熟したメスほど多く産む

産卵から出荷サイズまで

104〜148

約3〜5か月

レッドチェリーシュリンプは、ミナミヌマエビと同じ属(Neocaridina)の小型エビを赤く固定した改良品種です。飼育も繁殖もミナミヌマエビとほぼ同じで、水槽が安定していれば放っておいても殖えます。孵化した時点で親と同じ姿をしており、汽水も微細な餌も要りません。親が稚エビを食べないので隔離も不要です。

ミナミヌマエビとの違いは色だけ、と言ってもほぼ間違いではありません。というより、ショップで「ミナミヌマエビ」として売られている個体の多くは中国原産のシナヌマエビで、これは本種と同じ Neocaridina davidi だとされています。つまり両者は「別種だが交雑する」のではなく、しばしば最初から同じ種なのです。

この事実が、この種を扱ううえで最も重要な注意点につながります。色の違うNeocaridina を同じ水槽に入れると交雑し、生まれた子は野生の保護色、つまり薄茶や薄緑に戻ります。これを先祖返りと呼びます。しかも一度混ざったら元には戻せません。戻し交配しても色は復活しないのです。色を維持したいなら、1つの水槽には1色だけ。これが鉄則です。

採算という点では、ミナミヌマエビの1匹27円よりはましですが、通常グレードで1匹55〜135円。ハイグレードでも82〜133円と、上がり幅は1.3倍程度です。ペインテッドファイアーレッドで235円、ブラッディマリーで365円、ゴールデンアイに至っては1匹3,500円という値が付いていますが、これらは色が血統に依存するため、親が良くても全ての子が同じ色になるわけではありません。詳しくは採算の項をご覧ください。

繁殖サイクル

親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。

  1. 1
    養成 1色だけの水槽を用意する 1日

    親魚を繁殖できる状態に持っていく

  2. 2
    ペアリング 水槽を完成させてから、農薬を疑って導入する 30〜45日

    オスとメスを合わせる

  3. 3
    産卵・交尾 10匹以上でまとめて入れて待つ 7〜30日

    繁殖行動が起きる

  4. 4
    卵の管理 抱卵したら環境を変えない 14〜28日

    孵化までの管理

  5. 5
    稚魚育成 隔離せず、魚のほうを排除する 14〜30日

    出荷サイズまで育てる

  6. 6
    雌雄判別 色の薄い個体を抜いて累代を組む 60〜90日

    オスメスを見分けて選別する

  7. 7
    出荷 3か月で親サイズになる 90〜120日

    販売できるサイズに到達

繁殖の手順

1

1色だけの水槽を用意する

1日

この種でいちばん重要な決断が最初にあります。同属(Neocaridina)のエビは色が違っても交雑し、生まれた子は野生の保護色である薄茶や薄緑に戻ります。しかも一度混ざったら元には戻せません。だから水槽には1色だけを入れてください。ミナミヌマエビも同居させてはいけません。市販のミナミの多くは本種と同じ種(Neocaridina davidi)だとされており、交雑して当然だからです。

注意 「1匹くらいなら」は通用しません。何年もかけた選別が1匹の混入で無になります。

2

水槽を完成させてから、農薬を疑って導入する

30〜45日

立ち上げ直後の水槽には入れないでください。エビはアンモニアと亜硝酸に魚よりはるかに弱く、ろ過が効くまで最低1か月は待つ必要があります。そして水草の残留農薬に注意してください。水草の農薬は昆虫の神経系を標的にしたものが多く、エビは昆虫に近縁な節足動物なので、魚には無害な濃度でも致命的に効きます。「無農薬」表記のものだけを使い、不安なら数匹で24〜48時間の生物検定をしてから本水槽に入れます。導入は点滴法で時間をかけます。

注意 銅を含むものと魚病薬は微量でも致命的です。魚と同居させると魚を治療できなくなります。

3

10匹以上でまとめて入れて待つ

7〜30日 24℃

オス1匹に対してメス3匹程度を目安に、最初から10匹以上で導入します。数が少ないと出会いが起きません。水温22〜26℃を保っていれば自然に交尾し、メスが腹脚に卵を抱えます。1回の抱卵数は20〜30個で、ミナミヌマエビの38〜130個と比べると少なめです。

コツ メスは脱皮の直後に交尾します。水換えが脱皮のきっかけになることがあります。

4

抱卵したら環境を変えない

14〜28日 24℃

メスは2〜3週間ほど卵を腹に抱えて運びます。水温が高いほど短くなります。この間にすべきことは何もありません。むしろ環境を変えないことが仕事です。水質が急変するとメスは卵を落とします(脱卵)。若いメスは初回の抱卵で脱卵しやすい傾向がありますが、異常ではありません。次の機会を待ってください。

注意 抱卵中の大量換水は脱卵の最大の原因です。

5

隔離せず、魚のほうを排除する

14〜30日 24℃

稚エビは親と同じ姿で出てきて、そのまま同じ水槽で育ちます。親は稚エビを食べないので隔離は不要です。危険なのは同居している魚のほうで、口に入るサイズの稚エビは食べられます。稚エビを残したいなら魚を入れないのが正解です。餌も底床のある水槽なら基本的に不要で、コケや残餌、微生物を食べて育ちます。

コツ ウィローモスを厚く入れておくと隠れ家と餌場を兼ねます。

6

色の薄い個体を抜いて累代を組む

60〜90日

色は血統に依存します。色の薄い個体からは薄い稚エビしか産まれません。だから色を維持・向上させたいなら、濃い個体だけを残して累代を重ねる必要があります。ペインテッドファイアーレッドやブラッディマリーといった高価な系統は、この選別の積み重ねに値段が付いています。逆に選別を怠れば、たとえ交雑がなくても色は平凡なほうへ寄っていきます。

7

3か月で親サイズになる

90〜120日

生後2〜3か月で親サイズになり、次の世代を産みはじめます。売ることを考えているなら採算の項を読んでください。通常グレードは1匹55〜135円、ハイグレードでも82〜133円と、選別しても上がり幅は1.3倍程度です。上位系統は235〜365円と跳ねますが、色が血統依存である以上、親が良くても全ての子が同じ色になるわけではありません。

注意 殖えすぎた個体を屋外の水域へ放さないでください。

仕入れ値と採算

2026年7月17日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。

仕入れ値(1匹)

55〜135

まとめ買いで単価が下がる

店頭での販売価格(1匹)

55〜365

ショップの価格。個人が同額で売れるという意味ではない

この魚は売って儲かるのか

当サイトで調べたすべての種で「個人が売って儲けるのはほぼ成立しない」という結論になりました。 腕前ではなく市場の構造の問題です。理由は 繁殖は儲かるのかにまとめてあります。 自分の条件で試算したい場合は採算シミュレーターをどうぞ。

基本データ

レッドチェリーシュリンプの基本データ
繁殖形態抱卵 — エビが腹脚に卵を抱えて孵化まで運ぶ。稚エビは親と同じ形で産まれ、そのまま同居で育つ。
成魚サイズ20〜30mm
寿命1〜2年
適水温14〜29℃
繁殖適水温22〜26℃
pH6.5〜8
性成熟まで60〜90日
産卵から孵化まで 14〜28日
稚魚の初期飼料インフゾリア・コケ・残餌。底床のある水槽なら基本的に給餌は要らない
親の隔離 不要
雌雄の見分け方メスのほうが大きく、体色が濃い。抱卵すると腹脚に卵を抱えるので一目で分かる。オスは細身で色が薄い傾向がある。
原産地台湾
入手先 量販店、専門店、通販、オークション

混泳相性

相手 相性 理由
ミナミヌマエビ 避ける 交雑して先祖返りが起きる。市販のミナミの多くは本種と同じ種(Neocaridina davidi)とされるため、混ぜれば交雑して当然。色を維持したいなら絶対に同居させない。
オトシンクルス 良い 温和でエビを襲わない。ただし稚エビを残したいならどんな魚も入れないほうが確実。
ヒメタニシ 良い 貝なのでエビを襲わない。
レッドビーシュリンプ 注意 別属なので交雑はしない。ただし好む水質が違い(ビーは弱酸性6.0〜6.5、チェリーは6.5〜8.0)、どちらかに合わせるともう一方が本調子を出せない。
エンゼルフィッシュ 避ける エビを好んで食べる。成体でも捕食される。
アベニーパファー 避ける 甲殻類を好んで食べるフグ。同居は成立しない。

よくある失敗

繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。

世代を重ねたら色が消えて茶色くなった よく起きる

症状
赤いエビを入れていたのに、殖えた個体が薄茶色や薄緑になる。
原因
先祖返り。同属(Neocaridina)のエビ同士は色が違っても交雑し、その子は野生の保護色に戻る。市販のミナミヌマエビの多くは本種と同じ種なので、同居させれば交雑して当然。
対策
1つの水槽には1色だけ。他の Neocaridina を絶対に混ぜない。混ざったら戻し交配しても色は復活しないので、その系統は諦めるしかない。

水草を入れた数日後に全滅した よく起きる

症状
水草を導入してから数日でエビだけが次々と死ぬ。魚は平気。
原因
水草の残留農薬。昆虫の神経系を標的にした薬剤が多く、エビは昆虫に近縁なため魚に無害な濃度でも致命的に効く。
対策
「無農薬」表記の水草だけを使う。不安なら数匹で24〜48時間の生物検定をしてから本水槽へ。

脱皮の途中で死んでいる よく起きる

症状
殻が途中までしか脱げていない状態で死ぬ。
原因
脱皮不全。硬度(カルシウム・マグネシウム)の不足、アンモニアや亜硝酸の蓄積、pHの急変。
対策
ミネラル分を抜きすぎない。水換えは少量を頻繁に。添加剤は規定量を守る(入れすぎも水質の急変になる)。

選別しているのに色が上がらない

症状
濃い個体を残しているつもりなのに、世代を重ねても色が平凡なまま。
原因
選別が甘い、あるいは知らないうちに他色が混入している。色は血統依存で、薄い個体からは薄い子しか産まれない。
対策
色の薄い個体を確実に別水槽へ移す。導入した個体の素性を確認する。

知っておきたいこと

色は完全に血統依存です。色の薄い個体からは薄い稚エビしか産まれません。だからブリーダーは色の濃い個体だけを残して累代を重ねます。ペインテッドファイアーレッド、ブラッディマリー、ゴールデンアイといった高価な系統は、その選別の積み重ねに値段が付いているわけです。

裏を返せば、色の維持を怠った瞬間に価値は消えます。他の色の Neocaridina を1匹混ぜるだけで、数世代で野生色に戻ります。何年もかけた選別が1匹の混入で無になる、というのがこの種の怖さです。

よくある質問

ミナミヌマエビと一緒に飼えますか?
色を維持したいなら絶対にやめてください。交雑して、生まれた子は野生の保護色(薄茶・薄緑)に戻ります。しかも一度混ざったら元に戻せません。そもそもショップで「ミナミヌマエビ」として売られている個体の多くは中国原産のシナヌマエビ(Neocaridina davidi)とされ、これはレッドチェリーと同じ種です。別種だから交雑する、のではなく最初から同じ種というケースが多いのです。
レッドチェリーの繁殖は儲かりますか?
ミナミヌマエビの1匹27円よりはましですが、厳しいです。通常グレードは1匹55〜135円、ハイグレードでも82〜133円で、選別しても上がり幅は1.3倍程度(2026年7月時点)。ペインテッドファイアーレッド235円、ブラッディマリー365円、ゴールデンアイ3,500円という値も付いていますが、色は血統依存なので親が良くても全ての子が同じ色になるわけではなく、外れた個体は安い価格でしか捌けません。選別には目視の手間と隔離水槽が要ります。エビは1匹の単価が魚より桁で安いのに、必要な手間と水槽面積は同じです。
稚エビの隔離は必要ですか?
不要です。親は稚エビを食べません。稚エビが消えるとしたら、犯人は同居している魚です。隔離するのではなく、魚を入れないのが正解です。
レッドビーシュリンプとは一緒に飼えますか?
交雑という意味では問題ありません。レッドビーは Caridina 属で、レッドチェリーの Neocaridina 属とは別属なので交雑しません。ただし好む水質が違います(レッドビーは弱酸性6.0〜6.5、レッドチェリーは6.5〜8.0)。どちらかに合わせれば、もう一方は本調子を出せません。それぞれ別の水槽で飼うほうが結果的にうまくいきます。
数値の根拠と情報源

【価格】2026-07-17 に charm(チャーム)の実売ページで確認。通常グレードは100匹5,450円=1匹55円、50匹2,950円=59円、30匹1,950円=65円、6匹810円=135円。ハイグレードは30匹2,450円=82円、6匹800円=133円で、通常の約1.3倍。上位系統はペインテッドファイアーレッド10匹2,350円=235円、ブラッディマリー10匹3,650円=365円、ゴールデンアイは1匹3,500円。 【同種問題】ショップで「ミナミヌマエビ」として売られている個体の多くは中国原産のシナヌマエビ(Neocaridina davidi)で、これは本種と同じ種であることが Wikipedia・AQUALASSIC で指摘されている。「別種だが交雑する」のではなく実質同種であるケースが多い。 【成魚サイズの食い違い】Wikipedia は「約4cm」とするが、他の情報源は2〜3cm。同属のミナミヌマエビがメスで30mm未満であることから、4cm は過大の疑いがある。ここでは20〜30mm を採用した。 【裏付けが取れなかった項目】本種固有の性成熟日数を示す情報源は見つからなかった(Wikipedia に「若いメスは初回の抱卵で脱卵しやすい」という定性的な記述があるのみ)。市販ミナミの多くが本種と同種とされることから、ミナミの「生後2〜3か月」を援用している。抱卵の間隔、硬度(GH/KH)の推奨値、稚エビの生存率、出荷サイズまでの日数はいずれも裏付けなし(出荷サイズはミナミの「約3か月で親サイズ」を援用)。原産地も Wikipedia 本文に明記が無く確度が低い。 【抱卵期間】2〜3週間(Wikipedia)/21〜28日。600÷水温=日数という経験則が複数の情報源に見られるが、一次情報ではない。 【色の遺伝】色は血統依存で、色の薄い個体からは薄い稚エビしか産まれない(Wikipedia・BloodCore)。 【主な情報源】charm(販売ページ)、Wikipedia、AQUALASSIC、tanagogo。