育て方ガイド導入

水合わせ・温度合わせのやり方

かんたんに言うと

水合わせは、袋の水と水槽の水の水温・pH・浸透圧の差で生体を弱らせないための順応作業です。「温度を合わせる → 飼育水を少しずつ足す → 生体だけを網で移す」が基本で、エビや野生採集個体は特に時間をかけます。

買ってきた生体をいきなり水槽へ入れると、店・輸送袋の水と自宅の水では水温・pH・水質(硬度・浸透圧)に差があり、その急変がダメージになります。繁殖のために苦労して手に入れた親魚・親エビを、最初の数時間で失わないための工程です。特にエビは浸透圧の変化に弱く、最も慎重な水合わせが要ります。

基本の水合わせ手順

まずはこの5ステップ。所要時間は普通の魚で全体45分〜1時間が目安です。

1

袋を浮かべて温度を合わせる

買ってきた袋を開けずに、そのまま水槽(または容器)に30分〜1時間浮かべ、袋の中の水温を水槽と近づけます。

コツ冬や夏で温度差が大きい日は長めに。資料により15分〜と短めのものもありますが、急ぐより余裕を持つほうが安全です。

注意直射日光や照明の熱で袋内が高温になったり、長く放置して酸欠にならないよう注意します。

2

容器へ移す

袋の生体と水を、バケツなどの容器に移します。容器を水槽より低い位置に置くと、次の水足しや点滴法がやりやすくなります。

3

飼育水を少しずつ足す

水槽の飼育水を少量ずつ加えます。「チョロチョロ足す」程度で急がないのがコツ。一度に大量に入れないでください。

注意pHの差が大きいほど、足す回数と時間を増やします。

4

捨てて足すを繰り返す

容器の水が1/3ほど増えたら1/3捨て、また飼育水を足す——これを3〜4回繰り返します。全体でおおむね45分〜1時間が一つの目安です。

5

生体だけを網で移す

最後は網で生体だけをすくって水槽へ入れます。袋・容器の水は水槽に入れません

注意輸送水には病原菌・薬の残り・アンモニアが溜まっています。持ち込むと病気やアンモニア汚染の原因になります。エビではスネールやプラナリアの混入も防げます。

点滴法(ドリップ法)― エビ・敏感な魚に

エアチューブで一滴ずつ落とし続け、水質を極めてゆるやかに入れ替える方法です。

水槽・飼育水高い位置に置く
エアチューブ+一方コックで 1秒に1〜3滴(エビは2秒に1滴)
容器(生体を入れる)低い位置に置く。増えたら1/3捨てて続ける
飼育水を高い位置に置き、サイフォンの原理でチューブから容器へ一滴ずつ落とします。流量を絞るほど水質の入れ替わりがゆるやかになり、エビや敏感な魚の負担が減ります。
1

道具を用意する

エアチューブと一方コック(流量調整コック)、または市販の水合わせキットを使います。生体を入れた容器を、飼育水(水槽または汲み置き)より低い位置に置きます。

2

サイフォンで水を呼ぶ

チューブの一端を飼育水側に入れ、もう一端から軽く吸って水を呼び込み、水が出始めたらコックで流量を絞ります。

コツ口で吸うのが不安なら、スポイト付きの市販キットが安全です。

3

滴下速度を絞る

1秒に1〜3滴ほどに絞ります。エビや状態の悪い個体は2秒に1滴まで落とします。絞るほど水質の入れ替わりがゆるやかになり、負担が減ります。

4

増えたら捨てて続ける

容器の水が元の1/3ほど増えたら、増えた分を捨てて点滴を続けます。エビは「元の水量の約3倍」の飼育水を入れるのが目安とされます。

注意点滴中は容器が酸欠になりやすいので、弱いエアレーションを検討します(下の「見解が割れる点」も参照)。

5

生体だけを移す

網で生体だけを水槽へ移します。所要時間の目安は普通の魚で40〜60分、ビーシュリンプ等のエビで2〜3時間ほど(温度合わせを含めると全体3〜4時間)。

生体別の目安

生体敏感さやり方の目安
ビーシュリンプ等のエビ非常に高い点滴法で2〜3時間。元の約3倍量まで。1秒1滴〜2秒1滴
野生採集・水質にうるさい種高い点滴法でじっくり
カラシン・コリドラス標準〜点滴。養殖個体は比較的丈夫、ワイルド個体は敏感
メダカ・卵胎生(グッピー等)・金魚比較的丈夫標準的な水合わせで可。ただし温度合わせと段階的な水足しは行う

「丈夫=水合わせ不要」ではありません。どの生体でも温度合わせと段階的な水足しは行います。

見解が割れる点(正直に)

  • 失敗の主因はpHショックか、アンモニア中毒か:pHの急変を主因とする解説が多い一方、あるメーカーは「袋の水は低pHでアンモニウム(無害)だが、高pHの水槽に混ざると有毒なアンモニアに変わる=主因はアンモニア中毒だ」とします。どちらの立場でも結論は同じで、袋の水を入れない・急に薄めない・水質を急変させないことが大切です。
  • 点滴中のエアレーションの是非:酸欠対策に有効とする見解と、エアレーションはpHを上げてアンモニアの毒性を高めるので序盤は避けよという見解があり、正面から割れています。長時間かけるほど酸欠と水温低下のリスクも増えるため、機械的に「長ければ良い」とは言えません。

よくある質問

水合わせにはどのくらい時間をかければいい?
普通の魚で温度合わせ30分〜1時間+水合わせ45分〜1時間。エビや敏感な種は点滴法で2〜3時間かけることもあります。pHの差が大きいほど長く。ただし袋の長時間放置は酸欠を招くので、点滴中はエアレーション等を検討します。
袋の水は水槽に入れてもいい?
入れません。輸送水には病原菌・薬の残り・アンモニアが溜まっています。網で生体だけを移してください。エビではスネールやプラナリアの混入も防げます。
点滴法の滴下速度は?
一般に1秒に1〜3滴。エビや状態の悪い個体は2秒に1滴までゆっくり。速いほど水質が急変するので、絞るほど安全です(そのぶん時間がかかります)。
pHショックとは?温度合わせだけではダメ?
pHの急変で平衡感覚を失って暴れ、数時間〜1日で死ぬことがある症状です。温度が合っていてもpH・浸透圧の差は残るため、段階的に水を足す水合わせも必要です。
エビはなぜ特に慎重にするの?
浸透圧の変化への耐性が水棲生体の中でも特に低いためです。急な水質変化で導入後2〜3時間〜数日で落ちることがあります。点滴法で時間をかけ、元の約3倍量まで飼育水を入れるのが目安です。
トリートメント(別容器での様子見)は必須?
必須ではありませんが、混泳水槽・高価な生体では有効です。別容器で1〜2週間様子を見て、異常がなければ本水槽へ。病気が出たら薬浴します。
情報源

温度合わせ・段階的な水足し・袋の水を入れない理由・点滴法・生体別の目安は、アクアリウム専門店・用品メーカー・専門解説の記述をつき合わせました。温度合わせの時間(30分〜1時間、資料により15分〜)・滴下速度(1秒1〜3滴〜2秒1滴)はいずれも資料で幅があるため幅で記載し、「pHショックかアンモニア中毒か」「点滴中のエアレーションの是非」は見解が割れているため両論を併記しています。主な参照先:東京アクアガーデン、セラジャパン、チャーム、AQUALASSIC、たなごGo!。

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