魚を売る・飼う
ときのルール
かんたんに言うと
魚の販売に資格は要りません。ただし売れる場所は限られ、在来メダカや外来種には別のルールがあります。
まず結論
魚を売るのに動物取扱業の登録は不要です(対象は哺乳類・鳥類・爬虫類)。 でも魚を売れる汎用の場所はヤフオクか自前ネットショップの二択。 フリマ各社は生き物禁止です。そして川への放流と、外来種カダヤシの飼育は違法になり得ます。
2026年7月時点。環境省・国税庁・各プラットフォーム規約で確認
繁殖した魚を売っていいのか、資格は要るのか、税金はどうなるのか。田んぼで採ったメダカは飼っていいのか。 調べると意外と情報が散らばっているので、ここに一枚でまとめました。すべて環境省・国税庁・各プラットフォームの規約など、 確認できる情報にもとづいています。ただし個別の事情や最新の改定で変わることがあるので、最終的な判断は一次情報と専門家に確認してください。
「実際に儲かるのか」という採算の話は、別ページ「小型魚の繁殖は儲かるのか」にまとめています。 このページは、その手前の「そもそも売っていいのか・飼っていいのか」というルールの話です。
魚を売るのに資格・許可は要る?
魚だけを売るなら、動物取扱業の登録は要りません。 犬や猫を売るには第一種動物取扱業の登録が必要ですが、この制度の対象は動物愛護管理法にもとづく 哺乳類・鳥類・爬虫類で、魚類は含まれません(環境省)。エビや貝も同じです。 つまり家庭で殖やした魚は、誰でも、届け出なしに売れます。
(なお「魚類も対象に加えるべきだ」という意見・提言はありますが、それは現行法ではなく将来の話です。2026年7月時点の現行法では対象外です。 また、カメなどの爬虫類を一緒に扱う場合は登録が必要になります。)
ただし、ネットショップで売る場合は特定商取引法により「氏名」の表示が必須です。 住所・電話番号は、BASE等のサービスでは非表示にでき、購入者から請求があったときに開示する形が認められています。氏名だけは避けられません。
どこで売れる?(生体OKの場所は少ない)
主要なフリマ/ハンドメイド系は、ほぼすべて生き物の出品を禁止しています。
| 販路 | 魚の出品 | 手数料 |
|---|---|---|
| ヤフオク | 可 | 落札額の10% |
| BASE(自前ショップ) | 可 | 6.6%+40円/件〜 |
| メルカリ | 不可 | ―(生き物禁止) |
| メルカリShops | 不可 | ―(生き物禁止) |
| Yahoo!フリマ | 不可 | ―(卵含め禁止) |
| ラクマ | 不可 | ―(生体禁止) |
| minne / Creema | 不可 | ―(生物禁止) |
つまり、魚を売れる汎用の販路は実質「ヤフオク」か「自前のネットショップ(BASE等)」の二択です。 BASEは手数料がやや安いですが、作ったばかりの店には集客がありません(検索して来る客がいない、とBASE自身が説明しています)。 集客はSNSでの自力の宣伝に頼ることになります。手数料や販路を変えても、売れやすさが劇的に変わるわけではない、というのが実際のところです。 この点は採算のページで詳しく検証しています。
品種名を名乗って売っていい?(種苗法・商標)
「楊貴妃」「幹之」のような品種名を名乗って売っていいのか。結論は原則、問題ありません。 植物の品種を保護する種苗法は、対象が「農林水産植物」に限られ、動物であるメダカには適用されません(農林水産省)。 つまりメダカの品種名に育成者権のような権利は発生せず、その名前を使う販売を止める専用の仕組みは基本的にありません。 改良メダカの品種名は、作出者が付けた通称(業界で「ハウスネーム」と呼ばれます)にすぎず、業界全体が「増やしたら同じ名前で売る」で回っています。
唯一の例外が商標登録です。もし誰かがその名称を観賞魚の区分(生きた動物などを含む第31類)で商標登録していれば、 その名前での販売は商標権の侵害になり得ます。気になる品種名は、特許庁のJ-PlatPatで無料検索できます。 ただし、ある名称が実際に登録されているか・その権利が生きているか・自分の売り方が侵害にあたるかの判断は、 指定商品の類否などを伴い専門的です。本格的に商売にするなら、弁理士に確認するのが確実です。
そして実務では、法律より「評判リスク」のほうが重いと考えたほうがよいです。 表現がしっかり出ていない個体を品種名だけで売ると、買い手の期待との落差でクレームになります。 血統としては嘘でなくても、です。安全な書き方は、表現の出た個体は「(品種名)」、弱い個体は「(品種名)F1 未選別」「ハネ」と明記して安く、 そして入手元を「(購入元)由来」と書けると、誠実さが伝わります。誇大な表示は景品表示法などに触れうる点にも注意してください。
在来メダカは売れない・放せない
改良メダカは自由に売れますが、野生の在来メダカ(ミナミメダカ・キタノメダカ)は事情が違います。 この2種は環境省レッドリスト(2020年版時点)で絶滅危惧II類とされ、これを根拠に ヤフオクは在来メダカとその卵の出品を禁止しています(ストア出店者の人工繁殖個体は例外、改良メダカは対象外)。 くわしくは日本メダカ(野生型)のページにまとめています。
採集そのものは、種の保存法では規制されていません(両種は国内希少野生動植物種に指定されていません)が、 都道府県の漁業調整規則や自治体の条例、天然記念物指定地域で規制される場合があります。採る場所のルールを確認してください。
そして販売の可否とは別に、殖えた魚を川や池に放すことは、絶対にやめてください。 メダカは日本各地で別々の地域集団に分かれ、何万年もかけて地域ごとの遺伝的な個性を持っています。 ショップの黒メダカや他地域の個体を放すと、その土地の野生個体群と交雑し、環境省が指摘するとおり 地域の遺伝的多様性が失われます(実際に、関東で本来いないはずの関西系の遺伝子を持つメダカが見つかっています)。 グッピーやプラティも、沖縄や温泉排水のある一部河川で野生化が確認されています。良かれと思った放流が、生態系の攪乱になります。
カダヤシ(特定外来生物)に注意
田んぼや用水路で「メダカ」を採ったつもりが、実はカダヤシだった——これが起こります。 カダヤシは北米原産の特定外来生物で、外来生物法により飼育・保管・運搬・輸入・放出が原則すべて禁止です。 知らずに飼うと違法になり得ます(個人の違反には3年以下の懲役または300万円以下の罰金とされます)。
メダカとカダヤシの見分け方: メダカは尾びれが角張り、卵を水草に産みつけます(卵生)。 カダヤシは尾びれが丸く、稚魚を直接産みます(卵胎生)。オスの尻びれは交接のため棒状になっています。 採ってきた魚がどちらか判別できないなら、飼わないのが安全です。
税金はどうなる?
継続的に売って利益を得るなら、その収入は雑所得または事業所得になります(規模や継続性で区分されます)。 趣味で不要品を手放すのとは違い、営利目的なので生活用動産の非課税枠は使えません。
会社員などの給与所得者には、副業の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告は不要という一般則があります(国税庁)。 ただしこれは所得税だけの話で、住民税にはこの20万円の枠がなく、別途申告が必要です。 他に副業がある、扶養に入っているなど、個別の事情でも変わります。金額が大きくなりそうなら、税務署や税理士に確認してください。断定はできません。
まとめ
- 魚の販売に動物取扱業の登録は不要(対象は哺乳類・鳥類・爬虫類)。ネット販売は特商法で氏名表示が必須。
- 魚を売れる汎用販路はヤフオクか自前EC(BASE等)の二択。フリマ各社は生体禁止。
- 品種名(ハウスネーム)を名乗って売るのは原則OK(種苗法は植物のみ)。例外は商標登録で、気になる名称はJ-PlatPatで確認を。
- 在来メダカ(ミナミ・キタノ)は絶滅危惧種で、ヤフオク出品禁止。改良メダカは出品可。
- 放流は絶対にしない。地域の遺伝的多様性を壊す。飼育は最後まで自分の容器で完結させる。
- カダヤシ(特定外来生物)は飼育も違法になり得る。メダカとの見分けに注意。
- 継続的に売るなら雑所得/事業所得。副業20万円以下は所得税申告不要(住民税は別)。