飼育の基礎立ち上げ

水槽の立ち上げ

かんたんに言うと

「立ち上げ」とは、アンモニアを無害寄りへ分解するろ過バクテリアを育て、水を安定させることです。新品の水槽にいきなり親魚や卵を入れると、アンモニア・亜硝酸で全滅しかねません。繁殖水槽こそ、卵・稚魚が敏感なので先に立ち上げておきます。

立ち上げ=窒素サイクルを回すこと

魚のフンや残餌からはアンモニア(強い毒)が出ます。これをバクテリアが亜硝酸(弱い毒)へ、別のバクテリアが硝酸塩(ほぼ無毒)へと変換します。この「生物ろ過」の菌が育つのが立ち上げです。新品の水槽やろ材にはこの菌がいないため、いきなり魚を入れるとアンモニア・亜硝酸が危険域まで上がります。水質は「まずアンモニアが上がり、遅れて亜硝酸が上がり、やがて硝酸塩が出るようになる」という順で動きます。

フン・残餌汚れの発生源
アンモニア強い毒
亜硝酸弱い毒
硝酸塩ほぼ無毒
水換えで排出
バクテリアがアンモニア→亜硝酸→硝酸塩と、毒性を段階的に下げていきます(矢印の各段階を別々の菌が担います)。最後の硝酸塩は分解されず溜まるので、水換えで抜きます。この菌を育てるのが「立ち上げ」です。

繁殖水槽を立ち上げる手順

かかる期間は環境で大きく変わります。日数でなく試験薬の数値で判断します。

1

カルキを抜いた水を張り、ろ過とエアを回す

水道水を注いでカルキを抜き、フィルターとエアレーションを常時稼働させます。水温も安定させておきます。

2

アンモニア源を用意する

バクテリアの餌になるアンモニアを供給します。方法は、フィッシュレスサイクリング(魚を入れずアンモニア源を少量ずつ添加)、丈夫な魚を少数入れるパイロットフィッシュ法、または既存水槽のこなれたろ材・種水を移植して加速する、のいずれか。

コツ繁殖水槽は、魚に負担のないフィッシュレスか、既存ろ材の移植が無難です。市販のバクテリア剤で数日〜2週間ほど短縮できるとされます。

注意繁殖予定の大切な親魚をパイロットに使うのは避けます。

3

試験薬で水質の推移を追う

まずアンモニアが上がり、遅れて亜硝酸が上がります。試験薬でアンモニア → 亜硝酸 → 硝酸塩の変化を追いかけます。

コツ「何日たったか」ではなく、試験薬の数値で判断するのが確実です。

4

完成を確認する

アンモニアと亜硝酸がほぼ0になり、硝酸塩が検出されるようになれば一段落。ここまでおおむね3週間〜10週間かかります(環境・水温・方法で大きく変わります)。

注意日数で判断して途中で魚を入れないこと。亜硝酸が残ったままだと危険です。

5

親魚を導入して繁殖へ

立ち上げが済んだら、水合わせをして親魚を導入し、産卵・採卵に進みます。卵や稚魚は必要に応じてサテライトなどへ移します。

卵・稚魚は特に敏感

アンモニア・亜硝酸は魚に有害で、卵・稚魚(針子)は成魚よりさらに弱いです。だからこそ、採卵の前に水槽を立ち上げ終えておくのが安全です。隔離に使うサテライトは本水槽の水を循環させるので、水質・水温が本水槽と同じに保たれ、水合わせなしで行き来できるのが繁殖では大きな利点になります。

立ち上げ初期に出る「白いモヤモヤ」

立ち上げて間もない容器で、底床や新品の流木、新しい用品に白い綿・モヤのようなものが出ることがあります。よくある現象なので、まず落ち着いてください。正体は水カビ(腐生性の糸状菌)や細菌性のバイオフィルムなどが考えられますが、写真や肉眼では厳密に特定できません(専門店でも呼び方が割れています)。ただし、正体が何であれ対処は同じなので、特定にこだわる必要はありません。

大事なのは「正体」より「どこに付いているか」です。ここで扱いが正反対に変わります。

付いている場所正体・扱い
底床・流木・用品(有機物の上)腐生性の水カビ/細菌の膜。健康な魚には基本的に無害。慌てない
魚の体・ヒレ・口水カビ病という別の問題。弱った個体・傷・水質悪化から二次的に付く。隔離して、弱った原因(水質・水温急変)を正し、必要なら換水・薬浴や塩水浴で対処

なぜ出るか:ろ過バクテリアがまだ育っておらず、そこへ餌の食べ残しなどの有機物が多いと生えます(立ち上げ直後や新品の流木で出やすい)。多孔質の底床は有機物が溜まりやすく、素材を問わず立ち上げ初期に出ることがあります。

どうするか:水槽が成熟してバクテリアが回り始めると、自然に引いていくことが多いです(収まるまでは数日〜数か月と幅があり、流木のものは長引きます)。健康な魚がいるなら急いで対処する必要はありませんが、見た目が気になる・増え続けるなら次のようにします。

  • 餌を絞る。食べ残しが最大の栄養源なので、ここを断つのが根本です。
  • 物理的に除去する。プロホースで吸い出します。水中でこするとちぎれて散らばるので、取り出せる用品や流木は取り出して洗うほうが確実です。
  • 少量の水換えとフィルターの稼働で、水槽の成熟を進めます。
  • ヤマトヌマエビは、この膜を食べてくれます(ミナミヌマエビはあまり食べません)。

薬や塩は不要です。あれは魚の体に付く「水カビ病」のためのもので、底床や流木のカビに使うとバクテリアを痛めるだけです。

よくある質問

立ち上げは何日かかる?
目安は3〜10週間ですが、環境・水温・方法で大きく変わります。日数ではなく、試験薬でアンモニア・亜硝酸がほぼ0になったことを確認して魚を入れてください。
早く立ち上げるには?
既存水槽のこなれたろ材や種水を移植する、市販のバクテリア剤を使う、で短縮できます。それでも試験薬でのゼロ確認は省かないでください。
パイロットフィッシュとフィッシュレス、繁殖ならどっち?
繁殖水槽は、魚に負担のないフィッシュレスサイクリングか、既存ろ材の移植が無難です。パイロットに大切な親魚を使うのは避けます。
立ち上げ中に卵を入れていい?
非推奨です。卵・稚魚はアンモニアや亜硝酸の毒性に弱いので、先に立ち上げを終えてから採卵に進みます。
サテライトや産卵箱は別に立ち上げがいる?
本水槽の水をエアで循環させる方式なら、本水槽が立ち上がっていれば使えます。独立した隔離水槽を新設する場合は、それ自体の立ち上げ(またはろ材の移植)が必要です。
立ち上げ中、底床や新品の流木に白い綿のようなものが出ました。カビですか?
立ち上げ初期によく出る現象です。詳しくは本文「立ち上げ初期に出る白いモヤモヤ」を参照してください。要点だけ言うと、底床や流木など有機物の上に出ているものは腐生性の水カビや細菌の膜で、健康な魚には基本的に無害で、水槽が成熟すると自然に引いていくことが多いです。餌を絞り、気になる分は吸い出します。ただし白い綿が魚の体に付いている場合は「水カビ病」という別問題なので切り分けてください。
情報源

窒素サイクル、フィッシュレス/パイロットの違い、サテライトの位置づけは、アクアリウム専門解説・用品メーカーの記述をつき合わせました。立ち上げ日数(3〜10週間)は水温・方法・種水の有無で大きく変わるため幅で示し、「日数でなく試験薬のゼロ確認で判断」を基準に据えています。主な参照先:AQUALASSIC、アクポニ、東京アクアガーデン、スドー、GEX。

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