目次
大きさ
10〜22cm
すむ水
海水
在来種
毒・危険
毒・危険あり
下の「毒・危険」を確認
ゴンズイは、日本の沿岸の浅い岩場にすむ、ナマズの仲間の海の魚です。暗い褐色の細長い体に淡い黄色の縦帯が2〜3本通り、口のまわりにヒゲが4対(8本)あるので、海の釣りで出会えばまず見間違えません。大きさは全長20cm前後です。
この魚でいちばん大事なのは、背ビレのトゲ1本と、左右の胸ビレのトゲ各1本に毒があることです。刺されると激しく痛み、腫れて、痛みが数日続くこともあります。しかも死んだゴンズイでも毒は残るので、釣り場に捨てられたものにも触ってはいけません。
夜行性で、昼は岩陰に隠れ、夜に出てきます。そのため夜の堤防や砂浜での釣りで、ほかの魚をねらっているときに掛かることが多く、暗がりでよく見ずにつかんで刺される事故が起きています。
幼魚は体を寄せ合ってボールのような群れをつくり、これを「ゴンズイ玉」と呼びます。水族館でも人気の光景です。
毒・危険
背ビレのトゲ1本と、左右の胸ビレのトゲ各1本(計3本)に毒があります。 トゲのつけ根の皮膚に毒をつくる部分があります。泳いでいるゴンズイに刺されることはあまりなく、多いのは釣れた魚に触って刺されるケースです。
刺されると、激しい鈍い痛みが、時間がたつとやけどのような痛みに変わります。患部が腫れ、ひどいと数日痛みが続くことがあり、血圧が下がる・汗が出るといった全身の症状が出ることもあります(葉山町)。死んだゴンズイでも毒は残ります(環境省は「死後もしばらくのあいだ毒をつくる部分は生きている」、葉山町は「死んでも毒性を失わない」としています)。
刺されたときの応急手当て(公的資料の記載):傷口を洗い、すぐに傷口から毒を絞り出します。目に見えるトゲが残っていれば取り除き、やけどしない程度のお湯に患部をつけると、痛みがある程度やわらぎます(環境省・葉山町。お湯の温度は、海洋研究開発機構の資料では毒のトゲを持つ魚全般について40〜45℃)。お湯は痛みをやわらげる応急手当てで、治療ではありません。
痛みが引かないときは医療機関へ。 トゲが体の中に残っていることがあり、病院でレントゲン検査が必要になる場合があります(環境省)。息苦しさ・気分の悪さなど全身の異変があるときは、すぐに救急を受診してください。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
ゴンズイの見分け方
- 口のまわりにヒゲが4対(8本)ある、ナマズに似た細長い体。
- 暗い褐色の体に、淡い黄色の縦帯が2〜3本。そのうち2本は頭の先まで続く。幼魚ほど黄色い線がはっきりしていて、大人になると薄れてくる。
- 背ビレは1つで、前に鋭いトゲがある。胸ビレにもトゲがある。体の後ろ半分は、背中側と腹側のヒレが尾ビレとつながって、上下から縁取るように見える。
- 海の釣りで「ヒゲのある細長い魚」が釣れたら、まずゴンズイを疑って素手で触らない。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| ミナミゴンズイ | 2008年に分けられた近縁の別種で、見た目ではほぼ区別できない(ヒレの筋やえらの突起、背骨の数で見分ける)。本州〜九州で見るのはゴンズイ、沖縄・八重山ではどちらの可能性もある。どちらもトゲに毒がある。 |
| ギギ | ギギは川や湖にすむ淡水のナマズの仲間(ギギ科)で、海にはいない。ヒゲ4対とトゲの毒はゴンズイと同じ。地方によってはゴンズイを「ギギ」「ウミギギ」と呼ぶので、名前だけでは区別できない。 |
分布と生息環境
本州から琉球列島(西表島まで)の沿岸にすみ、本州では非常に普通の魚です。新種として記載されたときの標本には、能登半島・対馬・八丈島・相模湾・駿河湾・伊勢志摩・高知・宮崎・鹿児島・奄美・沖縄島などのものが含まれています。太平洋側に多く、日本海側には少ないとされます。
富山湾では、冬に港で500匹以上の群れが見つかったり(2009年)、川の河口近くで釣れたり(2020年)した記録があります。
岸に近い浅い岩場(磯から水深10m前後)に多く、藻場や砂の底にもいる。昼はゴロタ石や消波ブロックのすき間、岩陰に隠れ、夜に出て底の小さな生き物を食べる。汽水域に入ることもある。
生態(食べもの・産卵)
夜行性で、夜になると岩陰から出てきて、底にいる小さな生き物を食べます。幼魚はびっしりと集まった群れ(ゴンズイ玉)をつくり、大きくなると群れをつくらなくなる傾向があります。
産卵期は初夏から夏です。長崎県の浅い潮だまりの調査(1972〜1973年)では、6〜7月に、物の下の小さな穴に産みつけられた卵のかたまりが見つかり、多くはオスがそばで見張っていました。卵は直径3.1〜3.5mmの球形で、くっつかずに沈むタイプです。かえったばかりの仔魚は全長約7mmで、大きな卵黄を抱えて底にとどまり、約10日で泳ぎ始めます。かえって4日ほどで、もう底をはって集まる(群れをつくる)行動が見られました。
ゴンズイの釣り
ゴンズイをねらって釣る人はほとんどいませんが、夜の堤防や砂浜からの投げ釣り・ちょい投げでよく掛かる魚です。Honda の釣魚図鑑では、よく釣れるのは初夏〜秋としています。
釣れたときは、素手で触らないことがすべてです。公的資料がすすめる外し方は次のとおりです。
いちばん安全なのは、糸(ハリス)を切って海に返すこと(環境省)。外すなら魚ばさみやフィッシュグリップでつかみ、直接触らずに針を外します(京都府、神奈川県水産技術センターの研究者が監修した Honda の記事)。大きいものはタモですくうか、竿で吊り上げたままハリスを切ります。暗いところでよく確かめずにつかむと刺されるので、夜釣りではライトで魚を確かめてから手を出してください。
持ち帰らないゴンズイを堤防の上に捨てるのもやめてください。死んでも毒が残るので、ほかの人が刺されます。
家で飼えるか
水族館ではゴンズイ玉が人気の展示になっており、研究機関では水槽で卵をかえし、ブラインシュリンプで1か月ほど育てた記録があります。ただし、一般の家庭で飼われている例を示す信頼できる資料や、販売されている例は今回の調査では見つかりませんでした。
網ですくう・水を換えるといった世話のたびに毒のトゲに触れるおそれがあり、死んだ個体でも刺されます。家庭で飼うことは勧めません。
法律・ルール
日本の在来の魚で、外来生物法の対象ではありません。環境省の海洋生物レッドリスト(2017年)・レッドリスト2020のどちらにも載っていません。都道府県のレッドリストは確認できていません。
磯や港での採集は、地域の漁業調整規則や漁業権で制限されている場合があります。
基本データ
| 分類 | ゴンズイ科(Plotosidae) |
|---|---|
| すむ水 | 海水 |
| 別名 | ウミギギ、ググ |
| 大きさ | 100〜220mm |
知っておきたいこと
日本のゴンズイは長いあいだ、インド洋から西太平洋に広くすむ Plotosus lineatus と同じ種とされてきました。2008年に国立科学博物館の研究者がくわしく調べ直し、日本のものを新しい種 Plotosus japonicus として記載しました。もとの P. lineatus のほうは、今は「ミナミゴンズイ」と呼ばれ、北は琉球列島まで分布します。2種はヒレの筋の数やえらの突起の数、背骨の数を数えないと見分けられず、見た目ではほぼ区別できません。本州〜九州で見るのはゴンズイ、沖縄ではどちらの可能性もあります。
ゴンズイ玉の群れは、仲間の体から出る物質のにおいを手がかりに保たれていると考えられています。
なお、近縁のミナミゴンズイは地中海に入り込んで広がり、2019年にEUの「侵略的外来種リスト」に加えられました。
よくある質問
ゴンズイに刺されたらどうすればいいですか?
死んだゴンズイでも刺されますか?
ゴンズイの毒はどこにありますか?
ゴンズイ玉とは何ですか?
ゴンズイはナマズの仲間ですか?
海で泳いでいるとゴンズイに刺されますか?
ゴンズイの身に毒はありますか?
ゴンズイとミナミゴンズイの違いは何ですか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】Yoshino・Kishimoto(2008)「Plotosus japonicus, a New Eeltail Catfish from Japan」国立科学博物館研究報告A類 Suppl.2(本文を確認)。ミナミゴンズイとの区別点・分布も同論文。地方名(ウミギギ・ググ)はコトバンク(日本大百科全書・世界大百科事典・マイペディア)。ゴンズイ固有の英名は FishBase に登録が無く、載せていない。
【大きさ】記載論文の標本は標準体長183〜217.5mm。一般向け資料は全長20cm前後で重なる。「全長30cm」とする古い百科事典・新聞記事はミナミゴンズイとの混同の可能性があるため使っていない。寿命は資料を入手できず載せていない。
【見分け方・生態】ヒゲ4対・縦帯・ヒレの形は記載論文、ゴンズイ玉は京都府海洋センター・葉山町・鳥取県ほか。群れのにおいは京都府海洋センター、Matsumura ほか(2004)Zoological Science 21。産卵・卵・仔魚は森内・道津(1973)長崎大学水産学部研究報告36(記載論文がこの文献をゴンズイとして扱っている)。富山湾の記録は魚津水族館の年報(2009)と採集記録(2020)。
【毒と応急手当て】毒のトゲの位置・症状・死後の毒は環境省 せとうちネット「危険な生き物 ゴンズイ」、葉山町「海の危険な生物」、京都府「丹後の海の危険な生き物」、鳥取県「海の危険な生き物」。応急手当ては環境省・葉山町、お湯の温度は JAMSTEC 国際海洋環境情報センター(GODAC)「海の危険生物」(毒のトゲを持つ魚全般。時間の記載は無い)。ゴンズイに限った温度・時間の公的記載は見つからなかったため時間は書いていない。「お湯で毒が分解される」は裏付けが無く書いていない。身に毒があるという公的記載は見つからず、厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」にもゴンズイは無い。
【釣り】環境省(糸を切って捨てる)、京都府(魚バサミ)、Honda 釣り倶楽部「太公望通信」危険な魚(神奈川県水産技術センター 工藤孝浩氏監修)、Honda 釣魚図鑑(季節)。
【法律】環境省 海洋生物レッドリスト(2017)・レッドリスト2020(全文検索で掲載なし)。ミナミゴンズイの EU 侵略的外来種指定は Commission Implementing Regulation (EU) 2019/1262。
海の魚のほかの種
海水
アイゴ
Siganus fuscescens
磯や堤防で釣れる、白い斑点の平たい海の魚。背ビレ・腹ビレ・尻ビレのトゲに毒があり、死んでも刺される。西日本ではバリと呼ぶ。
海水
ハオコゼ
Paracentropogon rubripinnis
浅い藻場や岩場にいる全長10cmほどの小さなオコゼ。背ビレのトゲに毒があり、刺されると数時間〜数日痛む。死んでも毒は残るので素手で触らない。
海水
シロギス
Sillago japonica
砂浜や内湾の浅い砂地にすむ細長い銀色の魚で、投げ釣りの代表的な対象。毒は無い。よく似たアオギスは絶滅危惧種で、色では見分けられない。
海水・汽水
クロダイ
Acanthopagrus schlegelii
関西でチヌと呼ばれる黒っぽいタイの仲間。河口から磯まですみ、オスからメスに性転換する。30歳近くまで生き、近年はノリやアサリの食害が問題に。