マハゼ
Acanthogobius flavimanus / Yellowfin goby
かんたんに言うと
河口や内湾の砂泥底にすむ、ハゼ釣りの代表。尾ビレに矢羽のような模様があり、上あごが前に出る。多くは1年で一生を終える。
撮影: Totti / CC BY-SA 4.0
目次
大きさ
15〜30cm
すむ水
汽水・海水
在来種
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
マハゼは、北海道から九州(南は種子島・屋久島まで)の沿岸の、河口や内湾の汽水域の砂泥底にすむハゼです。単に「ハゼ」と呼ばれることも多く、秋のハゼ釣りの主役です。ときには川を上って淡水域にも入ります。
ふつうは全長15cm前後で、大きいものは25〜30cmになります。背は灰色がかった赤茶色に黒い点が並び、尾ビレに矢羽のような模様があり、腹側は光沢のある白です。ハゼの仲間の中ではスマートな体つきです。
ハゼの仲間に共通するのは、背ビレが2つあり、左右の腹ビレがくっついて吸盤のようになっていることです(国土技術政策総合研究所)。マハゼ釣りでは、チチブ・ウキゴリ・ビリンゴ・ウロハゼなど別のハゼも一緒に釣れます。
寿命は短く、東京湾などでは多くが1年で成熟・産卵して一生を終えます(一部は2年)。北海道の函館湾では1〜3年と推定されていて、地域で違います。
毒・危険
マハゼ自体は、毒のある魚としては扱われていません(FishBase は「人に無害」)。
ただし、ハゼの仲間には猛毒のツムギハゼがいます。フグと同じ毒(テトロドトキシン)を持ち、煮ても焼いても毒は消えず、特効薬がありません。奄美大島より南の魚とされていましたが、2004年以降は和歌山県南部でも見つかっていて、和歌山県は「ツムギハゼや、ツムギハゼと判断のつかないハゼは食べない」よう呼びかけています。「ハゼなら安全」とは言えません。
また、医師向けの専門誌や海外の総説は、汽水域のハゼ類が有害異形吸虫などの寄生虫の宿主になることがあり、生や加熱不足で食べると感染するとしています。マハゼを名指しした国や自治体の注意喚起は見つかりませんでしたが、汽水域のハゼは生では食べないほうが安全です。食べたあとに体調が悪くなったら医療機関へ。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
マハゼの見分け方
- 背ビレが2つ、左右の腹ビレがくっついて吸盤のようになっている(ハゼの仲間に共通)。
- 尾ビレに矢羽のような模様。背ビレと尾ビレに点線のような模様がある(背ビレの下側には無い)。
- 上あごが下あごより前に出る。体の横に黒い斑点、腹側は光沢のある白(長崎県)。
- ハゼの中ではスマートな体形で、頭が大きい。ふつうは全長15cm前後。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| ウロハゼ | ウロハゼはうろこが大きく、下あごが前に出て、腹側が灰色。マハゼはうろこが小さく、上あごが前に出て、腹側は光沢のある白(長崎県)。南日本ではマハゼと同じ場所にいる。 |
| アシシロハゼ | マハゼと同じ属。大人でも全長6〜10cmほどと小さく、砂や小石の底を好み、石の下に卵を産む(マハゼは砂泥の巣穴)。2種を直接比べた公的資料は見つからなかった。 |
| ヌマチチブ | 胸ビレのつけ根にオレンジ色の線があり、頬に白い斑点、黒いしま模様(長崎県)。大人で5〜15cm。ハゼ釣りでよく掛かり「ダボハゼ」と呼ばれる。 |
| ツムギハゼ | フグと同じ毒(テトロドトキシン)を持つハゼ。2004年以降は和歌山県南部でも見つかっている。和歌山県は「ツムギハゼや、ツムギハゼと判断のつかないハゼは食べない」よう呼びかけている。 |
分布と生息環境
北海道から九州(南は種子島・屋久島まで)の沿岸にすみます(北端・南端は資料でやや違います)。国外ではロシアの沿海地方、朝鮮半島、中国の渤海・黄海・東シナ海に自然分布します。
アメリカ(カリフォルニア州)とオーストラリア(ニューサウスウェールズ州・ビクトリア州)では外来種として定着しています。
内湾・河口の汽水域の砂泥底。ときに川を上り淡水域にも入る。東京湾では沿岸から水深15mくらいまで。夏は浅場(0〜3m)・河口・運河、冬は深場(8〜15m前後)。
生態(食べもの・産卵)
東京湾では、冬から早春に深場(水深8〜15m前後)で生まれた仔魚が海を漂い、全長約2cmで河口や泥干潟に着底します。夏は浅場・河口・運河で育ち(7〜8月で7〜10cm)、秋に成熟しながら深場へ移り、冬に深場で産卵します(国土技術政策総合研究所)。ただし耳石を調べると、この「定説どおり」の動きをしない個体もいました。
子どものころは動物プランクトン、育つとゴカイの仲間・カニ・エビ・小魚・小さな二枚貝などを食べます。若いマハゼはスズキ・カレイ・サギなどに食べられます。
繁殖:オスが砂泥底にY字型(トンネル状)の巣穴を掘り、メスが巣穴の壁に卵を産み、オスがふ化まで卵を守ります。東京湾では水深7〜8mあたりで2月ごろから、深さ1mほどの巣穴で産卵した例が記録されています。卵は約1か月でふ化します。産卵期は資料によって1〜3月・11〜3月・1〜5月などと幅があり、北海道の函館湾では4〜6月と遅く、冬から春の間で地域によって違います。産卵したあとは多くが一生を終えます。
マハゼの釣り
釣れる時期は7月ごろから翌1月ごろ、最盛期は9〜11月です(Honda 釣り倶楽部)。夏は5〜7cmほどの小さな「デキハゼ」が中心で、秋の彼岸ごろには10cm前後に育ち、水温が下がると深場へ移っていきます。
場所は河口付近、運河や水路、港や船だまり、川の下流部。のべ竿のミャク釣り、エサを底に這わせるウキ釣り、リール竿のちょい投げが手軽で、小型のルアーでも釣れます。エサはアオイソメなどのゴカイの仲間がよく使われます。秋が深まって深場へ移ると、投げ釣りや船で狙います。
ハゼは針を飲み込みやすいので、小さなハゼを逃がすつもりなら針外しを用意しておきましょう。国土技術政策総合研究所は調査への協力の呼びかけで、平均より小さなハゼは逃がす・ライフジャケットを着る・雷が鳴ったらすぐ水辺を離れる・釣りや立ち入りが禁止された場所でないか確かめることを挙げています。
家で飼えるか
水族館では展示されている魚ですが、家庭で飼うための公的・専門の資料は今回の調査では見つかりませんでした。アメリカの野外では淡水から塩分の濃い場所まで、水温約8〜32℃の記録がありますが、これは野外の記録で、飼うときの適した値ではありません。大きくなると小さな魚を積極的に食べるとする海外の資料があります。
深い砂泥の巣穴で産卵する魚で、家庭で殖やした資料も見つかっていません。
法律・ルール
環境省のレッドリスト(汽水・淡水魚類2020、海洋生物2017)には載っていません(同じ属のハゼクチ・ミナミアシシロハゼは掲載あり)。国際自然保護連合の評価は「低懸念」(2020年)です。生態系被害防止外来種リストにも載っていません。
マハゼの大きさの制限などを決めた都道府県の規則は、今回の調査では見つかりませんでしたが、「無い」ことまでは確認できていません。釣る場所ごとの決まり(立ち入り禁止・漁協の定め)を確認してください。
海外では外来種で、オーストラリアのニューサウスウェールズ州は販売や生きたままの所持を禁止しているとされます(州政府の資料。本体のページは確認できず、要約での確認)。
基本データ
| 分類 | ハゼ科(Gobiidae) |
|---|---|
| すむ水 | 汽水・海水 |
| 大きさ | 150〜300mm |
知っておきたいこと
「江戸前のハゼ」として親しまれてきましたが、東京都の海でのマハゼの漁獲量は1960年以前の年100〜500tから1961年を境に激減し、2002年以降は10t以下、2007年は0tでした(水産総合研究センター 東京湾研究会の提言, 2013)。原因として、育つ場所と産卵場になる浅場・干潟の埋め立て、大雨のときの河口のかく乱、夏の海底の酸素不足が想定されています。ただし東京都の稚魚調査では今もマハゼの稚魚が各地点で多く採れていて、「いなくなった」わけではありません。国土技術政策総合研究所などは、釣り人の報告を集める「マハゼの棲み処調査」を続けています。
日本ではおなじみの魚ですが、アメリカのカリフォルニア州(1963年に初記録)やオーストラリアには、船のバラスト水などで運ばれたとみられ、外来種として定着しています。
釣り人は、夏の小さなマハゼを「デキハゼ」、成熟が遅れて冬を越した2年目の大きな個体を「ヒネハゼ」(関東)と呼びます。
よくある質問
ハゼの種類はどれくらいいますか?
マハゼとウロハゼの違いは?
ハゼ釣りの時期はいつですか?
マハゼは何年生きますか?
ハゼに毒はありますか?
江戸前のハゼはなぜ減ったのですか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】FishBase、日本大百科全書(道津喜衛)・図鑑NEO(コトバンク)、国交省 関東地方整備局「利根川の生物シート」。デキハゼ・ヒネハゼは Honda 釣り倶楽部・DAIWA(専門メディア)。
【大きさ・寿命】最大25〜30cm は FishBase・日本大百科全書・図鑑NEO・Honda。寿命は吉田ほか(国土技術政策総合研究所, 国交省 平成24年度技術研究会)、国交省 京浜港湾事務所「横浜の渚の生きもの」(神奈川県水産技術センター職員のコメント)、星野ほか(1993, 北大水産彙報, 函館湾)。
【見分け方】ハゼの共通点は国総研「干潟シリーズ① ハゼってどんなくらしをしてるのかな?」(2008)。マハゼの模様・体形は国総研「マハゼの棲み処調査」案内(2013・2015)。ウロハゼとの見分け方は長崎県環境保健研究センター「大村湾生きもの探しガイドブック」(2024)。アシシロハゼは国交省「利根川の生物シート」と道津喜衛(長崎大学水産学部研究報告)。マハゼとアシシロハゼ・チチブ類を直接比べた公的資料は見つからなかった。
【生態・繁殖】東京湾の生活史と季節の移動は国総研(2008)と吉田ほか、巣穴と卵の保護は日本大百科全書・国交省・Honda、東京湾の巣穴の深さは東京湾研究会提言(2013, 水産総合研究センター)。産卵期は資料ごとに違うため幅で書いた。ふ化まで約1か月は DAIWA(米国の資料でも13℃で約28日)。
【釣り】Honda 釣り倶楽部(釣魚図鑑・太公望通信・2015年コラム)、DAIWA、国総研の調査案内(逃がす・ライフジャケット等の注意)。
【危険】FishBase(Harmless)、和歌山県「ツムギハゼによる食中毒に注意」、日本医事新報の解説(要約での確認)、Chai & Jung(2017, Food and Waterborne Parasitology)。
【法律・資源】環境省レッドリスト2020(汽水・淡水魚類)・海洋生物レッドリスト2017・生態系被害防止外来種リスト、FishBase(IUCN)。東京湾の漁獲量と減少の想定要因は東京湾研究会提言、稚魚が今もいることは東京都環境局「水生生物調査結果報告書」。海外の外来種としての経緯は USGS NAS・スミソニアン NEMESIS・オーストラリア博物館。
海の魚のほかの種
海水
ゴンズイ
Plotosus japonicus
黄色い縦帯とヒゲ8本が目印の海のナマズの仲間。背ビレと胸ビレのトゲに毒があり、死んでいても刺される。夜釣りで釣れたら素手で触らない。
海水
アイゴ
Siganus fuscescens
磯や堤防で釣れる、白い斑点の平たい海の魚。背ビレ・腹ビレ・尻ビレのトゲに毒があり、死んでも刺される。西日本ではバリと呼ぶ。
海水
ハオコゼ
Paracentropogon rubripinnis
浅い藻場や岩場にいる全長10cmほどの小さなオコゼ。背ビレのトゲに毒があり、刺されると数時間〜数日痛む。死んでも毒は残るので素手で触らない。
海水
シロギス
Sillago japonica
砂浜や内湾の浅い砂地にすむ細長い銀色の魚で、投げ釣りの代表的な対象。毒は無い。よく似たアオギスは絶滅危惧種で、色では見分けられない。