群れで飼い込み、親を選ぶ
スマトラは8〜10匹以上の群れで飼うのが前提です。少数だと順位争いで攻撃的・臆病になり、状態も上がりません。群れの中から、吻とヒレが赤く発色したオスと、腹がふっくらしたメスを選びます。産卵前の1〜2週間、ブラインシュリンプや冷凍アカムシなどの生餌を中心にしっかり与えて栄養を蓄えさせると、発色が深まり、メスがよく卵を持ちます。水温は25〜27℃を保ちます。
コツ 群れで飼っておくと自然にペアができ、状態の良い個体を選びやすくなります。
Puntigrus tetrazona / Tiger barb
かんたんに言うと
丈夫でよく殖える定番のコイ科ですが、ヒレの長い魚を齧るため混泳を選びます。単価も安く売り先に困る、殖やす意味の乏しい魚です。
繁殖のしやすさ
簡単
1回の産仔数
200〜300匹
初産は少なく、成熟したメスほど多く産む
性成熟まで
42〜70日
約1〜2か月で繁殖できる大きさに
産卵から出荷サイズまで
61〜92日
約2〜3か月
実売単価(1匹)
245〜347円
通販・店頭の実売。あなたが売るときの競合値でもある
スマトラは、黒い4本の帯(種小名 tetrazona は「4本の帯」の意味)が入った、コイ科の定番種です。丈夫で水質にうるさくなく、バラマキ産卵で家庭でも殖やせます。繁殖そのものは難しくありません。にもかかわらず、この魚を語るうえで避けて通れないのが「ヒレ齧り」です。
スマトラは長くヒラヒラした物を齧る習性が強く、グッピー・ベタ・エンゼルフィッシュ・グラミーといったヒレの長い魚と混泳させると、相手のヒレをボロボロにしてしまいます。これは単なる相性の問題ではなく、この魚の本質的な性質です。しかも8〜10匹以上の群れで飼わないと、同種内の順位争いが激化して攻撃性が増し、臆病になって発色も落ちます。少数飼育が生理的なストレスになることは査読研究でも裏付けられています(少数の個体は摂餌が減り、食欲・ストレス関連の遺伝子発現が上がる)。
群れで泳がせれば、黒帯とオスの赤い吻が映える活発な魚です。雌雄の判別もやさしく、オスは小柄で吻とヒレ先が真っ赤に染まり、メスは大きく腹が丸くなります。グリーン(モス)、アルビノ、ゴールデン、バルーンといった改良品種もありますが、これらはすべて同じ種の色彩・体型の変異で、別種ではありません。
販売という観点では厳しい魚です。通販の実売はまとめ買いで1匹245〜307円と最安クラス。しかも「殖やしても売り先がない」の典型で、charmが6匹1,470円で売る相手に個人が価格で勝つのは困難です。加えてヒレ齧りのせいで、買い手の多くが飼っているグッピーや金魚系の水槽には入れられません。「簡単に殖えるのに、殖やす意味がない」を最も分かりやすく示す魚です。詳しくは下の採算の項をご覧ください。
親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。
親魚を繁殖できる状態に持っていく
オスメスを見分けて選別する
オスとメスを合わせる
繁殖行動が起きる
孵化までの管理
卵から出てくる
出荷サイズまで育てる
販売できるサイズに到達
スマトラは8〜10匹以上の群れで飼うのが前提です。少数だと順位争いで攻撃的・臆病になり、状態も上がりません。群れの中から、吻とヒレが赤く発色したオスと、腹がふっくらしたメスを選びます。産卵前の1〜2週間、ブラインシュリンプや冷凍アカムシなどの生餌を中心にしっかり与えて栄養を蓄えさせると、発色が深まり、メスがよく卵を持ちます。水温は25〜27℃を保ちます。
コツ 群れで飼っておくと自然にペアができ、状態の良い個体を選びやすくなります。
スマトラの雌雄判別はやさしい部類です。オスは小柄でスマート、体色が濃く、とくに吻(口先)とヒレの先端が真っ赤に染まります。メスは一回り大きく、腹が丸く膨らみ(抱卵で太る)、発色は控えめです。繁殖には、よく発色したオスと、抱卵で腹の張ったメスを組み合わせます。オス2匹にメス1匹のような比率で産卵水槽に入れると、産卵が成立しやすくなります。
撮影: Anandarajkumar / CC BY-SA 3.0
ウィローモスなどの細かい水草を厚く敷いた産卵水槽を用意します。バラマキ産卵なので専用の産卵床は要りませんが、まかれた卵が水草の隙間に落ちて親から隠れることが、卵を守るうえで決定的に重要です。水草の代わりに、底にネットやビー玉を敷いて卵を落とす方法もあります。水温は範囲の上限寄り(26℃前後)にし、弱酸性の軟水にすると産卵しやすくなります。
状態が整うと、多くは早朝にオスがメスを追い、水草の間に卵をまき散らします。1回の産卵数はメス1尾あたり200〜300粒とされます。卵は水草や底に散らばります。産卵は短時間で終わることが多いので、朝に卵が見えたら産卵が済んだと判断してください。
コツ オスの追尾が激しくメスが弱るようなら、産卵を確認し次第オスを先に戻します。
スマトラの親は、自分の産んだ卵を食べます。バラマキ産卵の魚に共通する最大の注意点です。産卵を確認したら、できるだけ早く親を元の水槽へ戻してください。水草が卵を物理的に隠してくれるので、隠れ家が多いほど食べられる数は減りますが、確実に残したいなら親を分けるのが基本です。
注意 親を抜き忘れると、翌日にはほとんどの卵が食べられて残りません。
水温26℃なら、産卵から24〜48時間ほどで孵化します。孵化直後の稚魚はごく小さく、しばらくは水草や底に貼りついたまま腹のヨークサックを消費します。なお、日本の飼育ブログには「孵化まで1週間ほど」と書くものもありますが、英語圏の信頼できる資料では24〜48時間とされており、水温26℃ならこちらが妥当です。白く濁った無精卵はカビの元になるので、目立つものはスポイトで取り除きます。
孵化からさらに1日ほどで稚魚が泳ぎ始めます。泳ぎ出した稚魚の口はごく小さく、ブラインシュリンプの幼生すら大きすぎるので、最初の数日はインフゾリアやグリーンウォーターといった微小な餌を与えます。口が大きくなってきたら、マイクロワームやブラインシュリンプの幼生に切り替えます。1日2〜3回、少量ずつ。水換えは控えめにして水質を安定させます。
注意 泳ぎ出し直後にいきなりブラインシュリンプでは大きすぎて食べられず餓死します。初期の微小餌を必ず用意してください。
体長2cmほどになり、黒帯とオスの赤みが出てくればショップに並ぶサイズです。グリーンやアルビノ、ゴールデンといった改良品種も同じ育て方です。ただし、売ることを考えているなら先に採算の項を読んでください。スマトラはまとめ買いで1匹245〜307円と最安クラスで、しかもヒレ齧りのせいで買い手を選びます。個人が殖やして売る相手は、価格でも需要でも見つけにくいのが実情です。
撮影: Debivort / CC BY-SA 3.0
注意 殖えすぎた個体を川や池に放流することは絶対にしないでください。スマトラは各地で移入定着が確認されています。
2026年7月18日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。
実売相場(1匹)
245〜990円
通販・店頭の実売価格。あなたが買う値段でもあり、売るときの競合でもある=ここに利ざやは出ない
| 繁殖形態 | バラマキ産卵 — 水草や底床に卵をばらまく。親が卵を食べるため、産卵後すぐに親を隔離できるかが成否を分ける。 |
|---|---|
| 別名 | スマトラバルブ、タイガーバルブ、グリーンスマトラ、アルビノスマトラ、ゴールデンスマトラ |
| 飼育のしやすさ | 簡単 |
| 成魚サイズ | 50〜70mm |
| 寿命 | 3〜5年 |
| 適水温 | 22〜26℃ |
| 繁殖適水温 | 25〜27℃ |
| pH | 6〜8 |
| 硬度(GH) | 5〜19 |
| 最低水槽サイズ | 57L以上 |
| 性成熟まで | 42〜70日 |
| 産卵から孵化まで | 1〜2日 |
| 稚魚の初期飼料 | インフゾリアやグリーンウォーターなどの微小な餌。その後マイクロワームやブラインシュリンプ幼生へ |
| 親の隔離 | 必要(親が稚魚・卵を食べる) |
| 雌雄の見分け方 | オスは小柄でスマート、発色が強く、とくに吻(口先)とヒレの先端が真っ赤に染まる。メスは一回り大きく、腹が丸く膨らみ、発色は控えめ。成熟個体なら体型と赤みでひと目で見分けられる、判別のやさしい魚。 |
| 原産地 | インドネシア、マレーシア |
| 生息環境 | スマトラ島(Indragiri・Batang Hari・Musi 水系)とボルネオの、流れの緩やかな森林河川。シンガポール・豪・米などに移入定着。流通個体はほぼ養殖。 |
| 入手先 | 量販店、専門店、通販、オークション |
スマトラの改良品種は「色変わり」がほとんどで、別種ではなく同じ種(Puntigrus tetrazona)の色彩変異です。グリーンスマトラは黒化傾向+構造色で角度により金属緑〜青緑に光る変異、アルビノ(ゴールデン)は色素が抜けて赤目。原種の4本の黒バンドがどう出る/消えるかで見分けます。つまり「新種が増える」のではなく「同じ魚の色バリエが増える」構図です。
黒バンドが全身に広がる黒化+構造色で、角度により金属緑に光る色彩変異。選択交配で固定されています。
相場の目安 1匹 350〜516円
別種ではなく、同じ種の色彩変異です。
色素が抜けて乳白〜淡桃色になり、模様が薄く赤目の変異。
概ねノーマルと同程度の価格です。
より暗い苔緑の発色をするグリーン系の呼び分けです。
確たる単価は確認できませんでした。
品種の相場は流行・個体差・入荷で大きく変動します(調査 2026年7月)。裏の取れない相場は載せていません。
繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。
実は「スマトラ」の同定は、業界の慣習ほど単純ではありません。専門的な資料(Seriously Fish)によれば、市場に流通しているスマトラの多くは、厳密には近縁の Puntigrus anchisporus である可能性が指摘されています。野生の tetrazona 自体はほとんど流通しておらず、養殖個体の正確な種同定は未確定というのが実情です。日本の観賞魚業界では慣習的にすべて「スマトラ=P. tetrazona」として扱われるため、本サイトもその名で掲載していますが、背景にはこうした分類上のあいまいさがあります。
グリーンスマトラの緑色は色素ではなく、黒色素が全身に広がった高メラニン型に光が干渉して生じる構造色(チンダル効果)です。青い色素を持たない魚が青緑に見えるのと同じ原理で、光の当たり方で色みが変わります。
【価格】2026-07-18 に Yahoo!ショッピングおよび Amazon の charm(チャーム)出品で確認(SOLD OUT除外)。通常スマトラ6匹1,470円=1匹245円・3匹980円=327円、グリーン6匹1,780円=297円、ゴールデン/アルビノ6匹1,840円=307円、バルーン3匹2,970円=990円・5匹4,240円=848円。Amazon の charm「グリーン3匹」は1,063円=354円/匹。実店舗相場は1匹250〜350円。まとめ買い6匹で245〜307円/匹まで下がる(通販は送料550円前後別)。確度は「中」=charm 本体サイト(shopping-charm.jp)は調査時ブラウザツールの障害で直接開けず、Yahoo!ショッピング・Amazon の charm 出品で代替した。次回ブラウザ復旧時に本体一覧で再確認したい。繁殖用の「ペア指定」商品は無く(群れ売り前提)、ペア価格は不明。メルカリは生体禁止。ヤフオクは「スマトラ 熱帯魚」で出品はあるが多くは業者・転売の品種セットで、個人ブリーダーの活発な稚魚市場は確認できず。個別落札単価と競り上がりの有無はブラウザ障害で未確認=この点は裏付け不十分。
【学名・同定】Puntigrus tetrazona (Bleeker, 1855)(Eschmeyer's Catalog of Fishes spid=51825、旧属 Capoeta/Barbus/Puntius/Systomus)。ただし Seriously Fish は「市場流通のスマトラの多くは実際には近縁の Puntigrus anchisporus の可能性があり、野生 tetrazona はほとんど流通しない」と指摘する。日本の業界は慣習的に全て P. tetrazona で扱うため本サイトもその名を採るが、養殖流通個体の厳密な同定は未確定。
【繁殖数値の食い違い】産卵〜孵化は英語の信頼ソース(Seriously Fish・FishBase系)が24〜48時間(26℃)。一方、日本の飼育ブログ複数は「1週間前後で孵化」と書くが、26℃なら24〜48時間が生理的に妥当で、日本ブログの数字は誤りか他種との混同の可能性が高い。本サイトは欧文一次寄りの1〜2日を採用した。1回の産卵数200〜300粒は確度中。
【裏付けが取れなかった項目】性成熟は約6〜7週齢(2〜3cm)だが、出荷サイズ(約2cm)までの日数を直接示した一次情報はなく、60〜90日は推定した目安であり出典のある数値ではない。産卵間隔・家庭での稚魚生存率は信頼できる定量データが無く、載せていない。
【群れ・ヒレ齧りの根拠】少数飼育がストレスになることは査読研究の裏付けがある:King J & Volkoff H (2025) Comparative Biochemistry and Physiology Part A「Group size influences feeding behavior in tiger barb」(PubMed 40752566)。1・2・4・8匹群の比較で、単独・ペア個体は摂餌開始が遅く量が減り、食欲・ストレス関連遺伝子の発現が有意に上昇した。推奨は最低6匹、Seriously Fish は8〜10匹以上。
【主な情報源】Eschmeyer's Catalog of Fishes、FishBase、Seriously Fish、Wikipedia(Tiger barb)、King & Volkoff 2025(PubMed 40752566)、smartaquariumguide、aquarium-favorite、woriver、Yahoo!ショッピング・Amazon の charm 出品。
親の入手から稚魚(針子)の育成まで、種をまたいで共通するコツがあります。繁殖に挑むならあわせてどうぞ。
バラマキ産卵
Tanichthys albonubes
丈夫で殖やしやすい卵生魚です。ただし通販では1匹30円の「生餌」として売られています。
バラマキ産卵
Danio rerio
1回に200〜300個も産む多産な卵生魚です。数は採れますが、品種差が2倍しかなく値が付きません。
バラマキ産卵
Puntius titteya
家庭で殖やせる数少ないバルブ。丈夫でバラマキ産卵し稚魚も育てやすいのに、単価が安く出口が無く採算は合いません。
産着卵
Trigonostigma heteromorpha
葉の裏に卵を産み付ける珍しい繁殖をします。ただし家庭での繁殖例はほとんど報告がありません。