バラマキ産卵 カラシン 親が稚魚を食べる

ブラックネオンテトラの繁殖

Hyphessobrycon herbertaxelrodi / Black Neon Tetra

かんたんに言うと

テトラの中では殖やしやすい方。でも1匹90円で、殖やしても売り先はありません。

ブラックネオンテトラ。黒い帯とその上の白〜緑に光るライン、赤く縁取られた目。ネオン・カージナルとは別属で、繁殖はカラシンの中では易しい方。

撮影: Debivort / CC BY-SA 3.0

繁殖のしやすさ

ふつう

実売単価(1匹)

90〜120

通販・店頭の実売。あなたが売るときの競合値でもある

黒い横帯とその上を走る白〜緑に光るライン、そして赤く縁取られた目が特徴の、落ち着いた渋さのあるテトラです。ネオンやカージナルと名前は似ていますが、属が違う別のグループ(ネオン・カージナルは Paracheirodon 属、こちらは Hyphessobrycon 属)で、性質も少し違います。

この魚が興味深いのは、カラシンの中では繁殖が比較的易しいことです。ネオンやカージナルが pH4〜5.5・硬度ほぼ0という極端な水を要求するのに対し、ブラックネオンはpH5.5〜6.5・硬度1〜4(弱酸性の軟水)で産卵します。これなら水道水を少し調整する程度で作れる範囲です。産卵形態は同じバラマキ産卵で、卵と稚魚が光に弱いので減光は必要ですが、カージナルほど神経質な暗黒は要りません。

ところが——採算の結論は、ネオンやカージナルと同じ「黒字は難しい」です。理由は単価です。ブラックネオンは大手通販で50匹4,500円=1匹90円。繁殖が少し楽になったところで、この単価では意味がありません。ヤフオクを見ても出品は業者ばかりで、個人が家庭で殖やして売った痕跡はゼロでした。「難易度が下がっても、単価が安すぎて採算は改善しない」——ブラックネオンは、それをはっきり示す魚です。カラシン4種は、最難関のネオン・カージナルも、殖やせるブラックネオンやプリステラも、結局どれも安すぎて売れません。

繁殖サイクル

親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。

  1. 1
    養成 群れで飼い、ペアを仕上げる 14〜30日

    親魚を繁殖できる状態に持っていく

  2. 2
    ペアリング 弱酸性の軟水を用意する(そこまで極端でなくてよい) 3〜7日

    オスとメスを合わせる

  3. 3
    産卵・交尾 減光した中で産卵させる 1〜3日

    繁殖行動が起きる

  4. 4
    卵の管理 産卵を確認したら親を抜く 1〜2日

    孵化までの管理

  5. 5
    泳ぎ出し 泳ぎ出したら微生物から 3〜5日

    稚魚が泳ぎ始め、餌を食べ出す

  6. 6
    稚魚育成 水質を保って育てる 30〜60日

    出荷サイズまで育てる

  7. 7
    出荷 易しくても、やっぱり売れない 30〜60日

    販売できるサイズに到達

繁殖の手順

1

群れで飼い、ペアを仕上げる

14〜30日

群れで飼い、産卵前は冷凍・生き餌でメスをよく太らせます。メスは腹が丸く体高が出ます。ブラックネオンは水質にうるさくないので、状態を上げるのはネオン・カージナルより楽です。

2

弱酸性の軟水を用意する(そこまで極端でなくてよい)

3〜7日 25℃

ここがネオン・カージナルとの大きな違いです。ブラックネオンの産卵水は pH5.5〜6.5・硬度1〜4 dGH で、弱酸性の軟水程度で足ります。カージナルの pH4・硬度0のような、RO水を使う極端な作り込みは要りません。水道水をピートやブラックウォーターの素材で少し弱酸性・軟水に寄せる程度で産卵に持っていけます。水温は24〜27℃。細かい水草を産卵床に入れます。

コツ 「弱酸性の軟水」で足りるのがブラックネオンの利点です。ネオン・カージナルほど身構えなくてよい。

3

減光した中で産卵させる

1〜3日 25℃

ペアを産卵水槽に入れ、照明を落として薄暗くします。卵と稚魚が光に弱いのはネオン・カージナルと同じですが、カージナルほどの完全暗黒は要らず、暗めの底床・浮草・薄暗い照明での減光で足ります。メスが水草の間に卵をばらまきます。親は卵を食べます。

4

産卵を確認したら親を抜く

1〜2日 25℃

親が卵を食べるので、産卵を確認したら親を別水槽へ戻します。水槽は減光を保ちます。孵化までの日数は、他のテトラ同様おおむね1〜2日程度とされます(確たる明示値は取れていません)。

注意 親を残すと卵が食べられます。

5

泳ぎ出したら微生物から

3〜5日 25℃

稚魚が泳ぎ出したら給餌開始です。稚魚は極小で、最初はパラメシウム等の微生物や5〜50μm級の粉餌でないと食べられません。数日後にブラインシュリンプ幼生へ移行します。微生物の培養は産卵前から仕込んでおきます。

注意 初期飼料の微小さはネオン・カージナルと同様です。培養の準備は要ります。

6

水質を保って育てる

30〜60日 25℃

稚魚は水質の変化に弱いので、こまめに少量ずつ換水します。成長とともに光への耐性がつくので照明を戻し、餌も微生物→ブラインと大きくしていきます。ブラックネオンは丈夫なので、水さえ保てば育成はカラシンの中では素直な方です。

7

易しくても、やっぱり売れない

30〜60日

ブラックネオンはカラシンの中では殖やしやすい方です。それでも売り先はありません。1匹90円という単価では、繁殖が少し楽になったところで採算に届かないからです。ヤフオクの出品は業者ばかりで、個人が家庭で殖やして売った例はゼロでした。「難易度が下がっても、単価が安すぎて採算は改善しない」——カラシン4種は、最難関のネオン・カージナルも、殖やせるブラックネオンやプリステラも、結局どれも売れません。

出荷サイズのブラックネオン成魚。黒い帯の上を金色のラインが走る。
出荷サイズのブラックネオン成魚。黒い帯の上を金色のラインが走る。

撮影: М.С. Горбунова(M.S. Gorbunova) / CC BY-SA 4.0

注意 繁殖の易しさは採算を救いません。単価の低さが壁です。

相場と採算

2026年7月18日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。

実売相場(1匹)

90〜120

通販・店頭の実売価格。あなたが買う値段でもあり、売るときの競合でもある=ここに利ざやは出ない

この魚は売って儲かるのか

魚は個人でも許可なく売れます。ただし、売って利益を出すのは簡単ではありません。多くの種は安価な量産個体と競合し、販路・送料・死着といった壁もあります。当サイトはその現実を、腕前ではなく市場の構造の問題として、種ごとに数字で確かめています。くわしくは 繁殖は儲かるのか、自分の条件での試算は採算シミュレーターをどうぞ。

基本データ

ブラックネオンテトラの基本データ
繁殖形態バラマキ産卵 — 水草や底床に卵をばらまく。親が卵を食べるため、産卵後すぐに親を隔離できるかが成否を分ける。
別名ブラックネオン
飼育のしやすさ とても簡単
成魚サイズ30〜35mm
寿命3〜5年
適水温20〜28℃
繁殖適水温24〜27℃
pH5.5〜7.5
最低水槽サイズ45L以上
稚魚の初期飼料パラメシウム等の微生物・5〜50μm級の粉餌から。その後ブラインシュリンプ幼生へ
親の隔離 必要(親が稚魚・卵を食べる)
雌雄の見分け方メスはオスより体高があり腹が丸い。オスは細身。判別はやさしくない。
原産地ブラジル
生息環境上部パラグアイ川水系(ブラジル・マットグロッソ州)の、流れの緩い弱酸性・軟水域。
入手先 量販店、専門店、通販、オークション

混泳相性

相手 相性 理由
他のカラシン(ネオン・ラスボラ等) 良い 同サイズで温和、好む水質も近い。群れで泳がせると映える。
コリドラス 良い 底棲で生活層が分かれる。温和。
ミナミヌマエビ 良い 温和で共存できる。
エンゼルフィッシュ・大型シクリッド 避ける 大きくなると小型テトラを食べる。
ベタ・スマトラ 避ける ヒレをかじられることがある。

よくある失敗

繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。

産卵しない

症状
ペアはいるのに産卵しない。
原因
水質が中性・硬水寄りのまま。ブラックネオンはネオンほど極端でなくても、弱酸性・軟水(pH5.5〜6.5・GH1〜4)でないと産卵しにくい。
対策
水道水をピート等で少し弱酸性・軟水に寄せる。水温24〜27℃。産卵床の水草を入れ、照明を落とす。

卵が孵化しない

症状
産卵はしたのに孵化しない、または卵がカビる。
原因
明るすぎる(卵は光に弱い)、無精卵、または親に食べられている。
対策
照明を落として減光する。産卵確認後すぐ親を抜く。オスの数を確保して受精率を上げる。

稚魚が餓死する よく起きる

症状
泳ぎ出した稚魚が数日で消える。
原因
稚魚が極小で、ブラインシュリンプ幼生では大きすぎる。
対策
最初はパラメシウム等の微生物・微小な粉餌を与える。産卵前から培養を仕込む。

知っておきたいこと

名前に「ネオン」と付きますが、ネオンテトラ(Paracheirodon innesi)やカージナルテトラの近縁ではありません。ブラックネオンは Hyphessobrycon 属で、ブラジルの上部パラグアイ川水系(マットグロッソ)が原産です。ネオン・カージナルとは別のグループなので、繁殖に必要な水質もこちらの方が緩やかです。

学名は Hyphessobrycon herbertaxelrodi。種小名も英名(axelrodi)も、観賞魚学者ハーバート・アクセルロッドにちなみます。カージナルテトラ(axelrodi)と同じ人物の名前です。目立った固定改良品種は確認できませんでした。

よくある質問

ネオンテトラの仲間ですか?
名前は似ていますが、別のグループです。ネオンテトラとカージナルテトラは Paracheirodon 属、ブラックネオンは Hyphessobrycon 属で、属が違います。そのため繁殖に必要な水質もこちらの方が緩やかで、ネオン・カージナルほど極端な軟水・酸性を作り込まなくても産卵します。
カラシンの中では繁殖しやすいのですか?
はい、ネオン・カージナルと並べると最も易しい部類です。要求水質が pH5.5〜6.5・硬度1〜4 dGH と緩く、弱酸性の軟水程度で足ります。ネオン(pH5.5・DH1未満)やカージナル(pH4・硬度0でRO水必須)のような極端な作り込みは要りません。卵・稚魚が光に弱いので減光は必要ですが、カージナルのような完全暗黒までは求められません。
繁殖が易しいなら、殖やして売れますか?
それでも売れません。ブラックネオンは1匹90円という安さで、繁殖が少し楽になったところで、この単価では採算に届かないからです。ヤフオクの出品は業者ばかりで、個人が家庭で殖やして売った例はありませんでした。カラシン4種は、最難関のカージナルも、殖やせるブラックネオンやプリステラも、結局どれも「安すぎて個人には売れない」という同じ結論になります。
数値の根拠と情報源

【価格】2026-07-18 charm 実売。50匹4,500円=1匹90円、30匹2,800円=93円、10匹1,200円=120円。

【個人販売の実態】ヤフオク(オークフリー、直近30日)でブラックネオンの落札は数件あるが、20匹1,350円=67.5円などすべて業者の即決。個人の家庭繁殖出品は確認できず。ヤフオク実売はむしろ charm より安い。繁殖が少し楽でも、単価が安すぎて個人が売る動機が生まれない。

【繁殖=3種で最も易しい】要求水質が pH5.5〜6.5・硬度1〜4 dGH と緩く、弱酸性の軟水程度で産卵する(Seriously Fish ほか、確度中)。ネオン(pH5.5・DH1未満)・カージナル(pH4・GH0)のような極端な作り込みは不要。バラマキ産卵・親の保護なし・卵食いあり。卵と稚魚は光に弱いので減光(暗めの底床・薄暗い照明・浮草)は必要だが、カージナルほどの完全暗黒は要らない。初期飼料は微小でパラメシウム級から。

【裏が取れなかった項目】孵化・泳ぎ出しまでの日数の明示値、1回の産卵数、稚魚の生存率、出荷サイズまでの日数、繁殖水温の最適値、固定改良品種の有無。これらは信頼できる数値が取れず未記載とした(他のテトラ同様おおむね1〜2日で孵化とされるが断定しない)。

【学名・分類】Hyphessobrycon herbertaxelrodi Géry, 1961。種小名は観賞魚学者ハーバート・アクセルロッドにちなむ(カージナル axelrodi と同人物)。ネオン・カージナルの Paracheirodon 属とは別属。Hyphessobrycon の最新の科の帰属は資料により揺れる(Characidae のままとする資料が多い)。

【主な情報源】charm(販売ページ)、オークフリー(ヤフオク落札)、FishBase、Seriously Fish、Wikipedia。

繁殖の育て方ガイド

親の入手から稚魚(針子)の育成まで、種をまたいで共通するコツがあります。繁殖に挑むならあわせてどうぞ。