バラマキ産卵 カラシン 親が稚魚を食べる

ネオンテトラの繁殖

Paracheirodon innesi / Neon Tetra

かんたんに言うと

繁殖は最難関の部類(超軟水+遮光)なのに1匹60円台。個人が殖やして売る意味はありません。

ネオンテトラ。青く光る帯と、後ろ半分だけの赤。熱帯魚の定番だが、家庭で殖やすのは最難関の部類。

撮影: Sven Kullander / CC BY-SA 4.0

繁殖のしやすさ

難しい

実売単価(1匹)

62〜95

通販・店頭の実売。あなたが売るときの競合値でもある

熱帯魚の代名詞とも言える定番中の定番です。青く光る帯と赤い後半身は、多くの人が一度は目にしている魚です。ところがこの魚、飼うのは簡単でも、家庭で殖やすのは最難関の部類です。そして厄介なことに、単価は最安クラス(大手通販で40匹2,500円=1匹62円)。この2つが重なって、個人が繁殖・販売で利益を出す余地はほとんどありません。

なぜ繁殖が難しいのか。理由は水です。ネオンの産卵には強い弱酸性・超軟水(pH5.5前後、硬度はほぼ0=DH1未満)が要ります。日本の水道水そのままではまず産みません。さらに卵と稚魚が強い光に弱く、産卵水槽を暗く保つ(遮光する)必要があります。親は産んだ卵を食べるので、産卵を確認したら即座に親を抜かなければなりません。孵化した稚魚は極小で、最初はブラインシュリンプすら大きすぎて食べられず、インフゾリア(微生物)から始めます。

これだけの手間をかけて殖やしても、売り先がありません。ヤフオクで「ネオンテトラ 繁殖」の落札を調べると、直近30日でゼロ件でした。市場に出回るネオンは、東南アジア(タイ・シンガポール)の工業規模の養殖個体です。アメリカでは流通の95%以上が養殖で、月に150万〜200万匹が輸入されるとされます。個人が手間をかけて殖やす経済圏が、そもそも存在しないのです。

観賞魚として最高に美しい魚です。ただし、殖やして稼ぐ魚ではありません。

繁殖サイクル

親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。

  1. 1
    養成 親魚を選び、状態を上げる(種の同定も) 14〜30日

    親魚を繁殖できる状態に持っていく

  2. 2
    ペアリング 超軟水・弱酸性の産卵水槽を作る 3〜7日

    オスとメスを合わせる

  3. 3
    産卵・交尾 遮光した中で夜に産卵させる 1〜3日

    繁殖行動が起きる

  4. 4
    卵の管理 産卵を確認したら即、親を抜く 1〜2日

    孵化までの管理

  5. 5
    泳ぎ出し 泳ぎ出したらインフゾリアから 3〜4日

    稚魚が泳ぎ始め、餌を食べ出す

  6. 6
    稚魚育成 ゆっくり育て、少しずつ明るくする 30〜60日

    出荷サイズまで育てる

  7. 7
    出荷 ここまでやっても、売り先が無い 30〜60日

    販売できるサイズに到達

繁殖の手順

1

親魚を選び、状態を上げる(種の同定も)

14〜30日

まず、殖やす魚が本当にネオンか確認します。カージナルと混同していると、必要な繁殖水のpHが違う(ネオン5.5前後、カージナル4前後)ため、水の作り込みを誤ります。上の写真で赤ラインの伸び方を見比べてください。ペアは若く健康な個体を選び、産卵前は冷凍・生き餌を与えてメスをよく太らせます。メスは腹がふっくらして体高が出ます。

上がカージナル(赤が目から尾まで全身)、下がネオン(赤は後ろ半分だけ)。青い帯はどちらも入る。繁殖に必要な水のpHが両種で違う(ネオン5.5前後/カージナル4前後)ので、殖やすなら最初に正しく見分けること。
上がカージナル(赤が目から尾まで全身)、下がネオン(赤は後ろ半分だけ)。青い帯はどちらも入る。繁殖に必要な水のpHが両種で違う(ネオン5.5前後/カージナル4前後)ので、殖やすなら最初に正しく見分けること。

撮影: úlfhams_víkingur / CC BY 2.0

2

超軟水・弱酸性の産卵水槽を作る

3〜7日 24℃

ここが最大の関門です。産卵には pH5.5前後・硬度ほぼ0(DH1未満)の超軟水が要ります。日本の水道水そのままではまず産卵しません。RO水(純水)にピートやブラックウォーターの素材を加えてタンニンを効かせ、弱酸性・超軟水を作ります。水温は23〜25℃。産卵床として細かい水草(ウィローモス等)を入れておきます。

注意 水道水の硬度・pHのままでは産卵しません。ここを作れるかで成否がほぼ決まります。

3

遮光した中で夜に産卵させる

1〜3日 24℃

ペアを産卵水槽に入れ、水槽を布などで覆って暗くします。ネオンの卵と稚魚は光に弱く、明るいと孵化率が落ちるためです。産卵は主に早朝〜夜間に起こり、メスが水草の間に卵をばらまきます。親は卵を保護せず、むしろ食べます。

コツ 暗さは繁殖の必須条件です。明るい水槽ではうまくいきません。

4

産卵を確認したら即、親を抜く

1〜2日 24℃

ネオンは自分の産んだ卵を食べます。産卵を確認したら、ただちに親を別水槽へ戻してください。卵は光に弱いので、水槽は暗く保ったままにします。孵化までは24〜36時間です。

注意 親を残すと卵がほとんど食べられます。産卵直後の隔離が鉄則です。

5

泳ぎ出したらインフゾリアから

3〜4日 24℃

孵化後3〜4日で稚魚が泳ぎ出します。ここが第二の関門です。ネオンの稚魚は極小で、ブラインシュリンプの幼生ですら大きすぎて食べられません。最初はインフゾリア(ゾウリムシなどの微生物)を与え、数日たって大きくなってからマイクロワームやブラインへ移行します。インフゾリアは培養に時間がかかるので、産卵させる前から仕込んでおきます。稚魚はしばらく光に弱いままなので、照明は控えめにします。

注意 初期飼料の準備なしに始めると、稚魚は必ず餓死します。

6

ゆっくり育て、少しずつ明るくする

30〜60日 24℃

成長は遅めです。水質の急変に弱いので、こまめに少量ずつ換水します。稚魚が育つにつれて光への耐性がつくので、照明を少しずつ通常へ戻します。餌をインフゾリア→マイクロワーム→ブラインと段階的に大きくしていきます。

7

ここまでやっても、売り先が無い

30〜60日

超軟水を作り、遮光し、インフゾリアを湧かし、ここまで手をかけて育てても、売り先がありません。ネオンは大手通販で1匹62円。ヤフオクで「ネオンテトラ 繁殖」の落札は直近30日で0件、市場は東南アジアの工業養殖に占められています。最も難しい繁殖の一つを、最も安い魚でやることになる——それがネオンの採算です。観賞と繁殖の観察を楽しむ魚だと考えてください。

注意 「最難関×最安」。手間と単価が完全に逆立ちしています。

相場と採算

2026年7月18日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。

実売相場(1匹)

62〜95

通販・店頭の実売価格。あなたが買う値段でもあり、売るときの競合でもある=ここに利ざやは出ない

この魚は売って儲かるのか

魚は個人でも許可なく売れます。ただし、売って利益を出すのは簡単ではありません。多くの種は安価な量産個体と競合し、販路・送料・死着といった壁もあります。当サイトはその現実を、腕前ではなく市場の構造の問題として、種ごとに数字で確かめています。くわしくは 繁殖は儲かるのか、自分の条件での試算は採算シミュレーターをどうぞ。

基本データ

ネオンテトラの基本データ
繁殖形態バラマキ産卵 — 水草や底床に卵をばらまく。親が卵を食べるため、産卵後すぐに親を隔離できるかが成否を分ける。
別名ネオン、ダイヤモンドネオン、アルビノネオン
飼育のしやすさ 簡単
成魚サイズ22〜30mm
寿命2〜3年
適水温20〜26℃
繁殖適水温23〜25℃
pH5.5〜7.5
最低水槽サイズ45L以上
産卵から孵化まで 1〜2日
稚魚の初期飼料インフゾリア(微生物)から。数日後にマイクロワーム→ブラインシュリンプ幼生へ。稚魚が極小で最初からブラインは食べられない
親の隔離 必要(親が稚魚・卵を食べる)
雌雄の見分け方メスはオスより体高があり腹がふっくらする。オスは細身で、青いラインがまっすぐ。抱卵したメスは腹の膨らみで見分けるが、判別はやさしくない。
原産地ブラジル、ペルー、コロンビア
生息環境西ブラジル・東ペルー・南東コロンビアの、流れの緩い上流域。落ち葉のタンニンで色づいた弱酸性・軟水のブラックウォーター/クリアウォーター。
入手先 量販店、専門店、通販、オークション

混泳相性

相手 相性 理由
他のカラシン(ラスボラ等) 良い 同サイズで温和、好む水質も近い。群れで泳がせると落ち着く。
コリドラス 良い 底棲で生活層が分かれる。温和で弱酸性を好む点も合う。
ミナミヌマエビ 良い 温和で共存できる。ただしネオンの稚魚と競合はしない。
エンゼルフィッシュ・大型シクリッド 避ける 成長したエンゼルはネオンを食べる(自然界の捕食関係)。
ベタ・スマトラ 避ける ヒレや体をかじられる。ネオンは温和で反撃しない。

よくある失敗

繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。

産卵しない よく起きる

症状
ペアはいるのに、いつまでも産卵しない。
原因
水質が合っていない。ネオンは pH5.5前後・硬度ほぼ0の超軟水でないと産卵しない。水道水のままでは硬度・pHが高すぎる。
対策
RO水にピート等でタンニンを効かせ、弱酸性・超軟水を作る。水温23〜25℃。水槽を暗くする。

卵がカビて孵化しない よく起きる

症状
産卵はしたのに、卵が白濁して孵化しない。
原因
明るすぎる(卵は光に弱い)、または無精卵・水カビ。親に食べられている場合も。
対策
産卵水槽を布で覆って遮光する。産卵確認後すぐ親を抜く。硬度・pHを繁殖条件に合わせる。

稚魚が数日で餓死する よく起きる

症状
泳ぎ出した稚魚が数日で消える。
原因
稚魚が極小で、ブラインシュリンプ幼生では大きすぎて食べられない。
対策
最初はインフゾリア(微生物)を与える。産卵前から培養を仕込む。数日後にマイクロワーム→ブラインへ。

知っておきたいこと

よく似たカージナルテトラとの見分けは、赤いラインの入り方です。カージナルは赤が目から尾まで全身に伸び、ネオンは赤が体の後ろ半分だけです(青いラインはどちらも入ります)。「赤が腹まで=カージナル、赤が後ろだけ=ネオン」と覚えてください。繁殖を狙うなら、この見分けは重要です。両種で必要な繁殖水のpHが違うからです(ネオンはpH5.5前後、カージナルはpH4前後とさらに厳しい)。

なお「グリーンネオンテトラ」はネオンの品種ではなく、別種(Paracheirodon simulans)です。通販で一緒に出てきますが混同しないでください。ネオンの改良品種は、青ラインが短く銀色に光るダイヤモンドネオン(ゴールデン/プラチナネオンとも)や、アルビノネオンなどです。

学名は Paracheirodon innesi。近年の系統再編(Melo ら 2024)で、ネオン・カージナルの属(Paracheirodon)は旧カラシン科(Characidae)から新しい科(Acestrorhamphidae)へ移されました。ただし流通名も多くの資料もまだ「カラシン」のままです。

よくある質問

ネオンとカージナルはどう見分けますか?
赤いラインの入り方が決め手です。カージナルは赤が目から尾まで全身に伸びます。ネオンは赤が体の後ろ半分だけで、腹の前方は赤くありません。青いラインはどちらにも入ります。「赤が腹まで=カージナル、赤が後ろだけ=ネオン」と覚えてください。繁殖を狙うなら重要で、両種で必要な繁殖水のpHが違います(ネオン5.5前後、カージナル4前後)。なお「グリーンネオン」はネオンの品種ではなく別種です。
ネオンの繁殖はなぜ難しいのですか?
主に水と光です。産卵には pH5.5前後・硬度ほぼ0(DH1未満)の超軟水が要り、日本の水道水そのままではまず産みません。RO水にピートなどでタンニンを効かせて作り込みます。さらに卵と稚魚が強い光に弱いため、産卵水槽を暗く保つ必要があります。加えて親が卵を食べるので即隔離、稚魚は極小でインフゾリアから育てる——と、関門がいくつも重なります。飼うのは簡単な魚ですが、殖やすのは別物です。
殖やせば売れますか?
まず売れません。ネオンは大手通販で1匹62円という最安クラスで、ヤフオクを調べても「ネオンテトラ 繁殖」の落札は直近30日で0件でした。市場に出回るネオンは東南アジアの工業規模の養殖個体で、個人が手間をかけて殖やしたものが割り込む余地はほとんどありません。最も難しい繁殖の一つを、最も安い魚でやることになるため、採算はまったく合いません。
数値の根拠と情報源

【価格】2026-07-18 charm 実売。通常個体 40匹2,500円=1匹62.5円、20匹1,300円=65円、10匹950円=95円。Lサイズ3匹980円=327円(小口は割高)。改良品種のホワイトダイヤモンドネオン4匹1,610円=402円、アルビノネオン10匹2,800円=280円は少数派で、通常の相場(62〜95円)には含めず注記。

【個人販売の実態】ヤフオク(オークフリー、直近30日)で「ネオンテトラ 繁殖」の落札は0件。市場のネオンは東南アジア(タイ・シンガポール)の工業養殖。米国流通の95%超が養殖、野生採集は5%未満で、米国だけで月150万〜200万匹が輸入される(Wikipedia)。個人が家庭で殖やして売る経済圏がそもそも無い。

【なぜ繁殖が難しいか】①水質: 産卵に pH5.5前後・硬度ほぼ0(DH1未満)の超軟水(Seriously Fish/Wikipedia、確度中〜高)。②遮光: 卵と稚魚が光に弱く、産卵水槽を暗く保つ必要(Seriously Fish、確度高)。③親の卵食い→産卵確認後すぐ親を隔離。④初期飼料が極小: 孵化直後はインフゾリア級が必須で、ブラインは数日後から(確度高)。

【繁殖の数値】バラマキ産卵、親の保護なし。産卵は主に夜間。孵化24〜36時間、泳ぎ出しは孵化後3〜4日(Seriously Fish、確度中〜高)。1回の産卵数の信頼できる明示値は取れず=未記載。出荷サイズまでの日数も不明。

【見分け】カージナル=赤が全身、ネオン=赤が後ろ半分(Fishly ほか、確度高)。グリーンネオンは別種 Paracheirodon simulans。

【学名・分類】Paracheirodon innesi (Myers, 1936)。Melo et al. 2024 の系統再編でネオン・カージナルの Paracheirodon 属は旧 Characidae から新科 Acestrorhamphidae へ(確度中、流通・多くの資料は旧科のまま)。

【裏が取れなかった項目】1回の正確な産卵数、稚魚の一般的生存率、出荷サイズまでの日数、繁殖水温の最適値。野生での寿命(最長10年の記述もあるが飼育下は2〜3年)。

【主な情報源】charm(販売ページ)、オークフリー(ヤフオク落札)、FishBase、Seriously Fish、Wikipedia、Fishly(見分け)。

繁殖の育て方ガイド

親の入手から稚魚(針子)の育成まで、種をまたいで共通するコツがあります。繁殖に挑むならあわせてどうぞ。