親魚を選んで栄養強化する
10匹以上の群れで飼っておくと、その中から自然にペアができます。メスは体が大きく体高があり腹がふっくらした個体、オスはスリムな個体を選びます。産卵前の1〜2週間、ブラインシュリンプや冷凍アカムシなどの生餌を中心にしっかり与えて栄養を蓄えさせると、メスがよく卵を持ちます。水温は24〜26℃を保ちます。
コツ プリステラは丈夫で飼育の水質はほとんど選びませんが、繁殖を狙うときだけは次の段階で水質を軟水・弱酸性に寄せます。
Pristella maxillaris / X-ray tetra
かんたんに言うと
カラシンでは珍しく家庭で殖やせる丈夫な入門種。でも1匹100円ほどと安すぎて、殖やしても売り物にならないのはネオンと同じです。
繁殖のしやすさ
ふつう
1回の産仔数
300〜400匹
初産は少なく、成熟したメスほど多く産む
産卵から出荷サイズまで
61〜123日
約2〜4か月
実売単価(1匹)
109〜153円
通販・店頭の実売。あなたが売るときの競合値でもある
プリステラは、半透明の体から名前(X-ray tetra=レントゲン魚)がついた、カラシン科の定番種です。体が透けて銀色の浮き袋が見え、背ビレと尻ビレには黒・白・黄の三色の帯が入ります。カラシンの中では例外的な「優等生」で、このサイトに掲載済みのネオンテトラ・カージナルテトラとは、繁殖という点で正反対の位置に立っています。
ネオンやカージナルは、超軟水と徹底した遮光という高い壁があって、家庭での繁殖をほとんど寄せつけません。ところがプリステラは非常に丈夫で、適応できる水質の幅が桁違いに広いのです(pH6〜8、硬度は最大35°dHまで、しかもカラシンでは珍しく、わずかな汽水にも耐えるとされます)。繁殖に必要な軟水・弱酸性・遮光さえ整えれば、家庭でもバラバラと卵をまいて殖やせる「テトラの入門繁殖種」です。つまり「殖やせる」という一点で、ネオン・カージナルの対極にあります。
しかし、殖やせても商売にはなりません。プリステラの実売単価は、通販のまとめ買いで1匹109〜153円。ネオンやブラックネオンと並ぶカラシン最安クラスです。ゴールデンやパンダといった改良品種でも200〜557円どまり。ヤフオクを見ても、生体の出品はすべて業者の即決で、入札の競り上がりはゼロ。個人ブリーダーの出品も、それを求める需要も見当たりません。
産卵数は300〜400と多いのですが、極小の稚魚に初期餌(インフゾリア)を与え、卵と稚魚を遮光して守る手間をかけて、得られる出口が1匹100円強では、電気代・餌代・水道代すら回収できません。結論はコイ科のチェリーバルブとまったく同じで、殖やせるのに、単価が安すぎて殖やす意味がない。最難関のネオン・カージナルが"作れないから売り物にならない"のに対し、プリステラは"作れるのに売り物にならない"——難易度の両極から、同じ「個人繁殖では黒字が難しい」という結論に行き着きます。詳しくは下の採算の項をご覧ください。
親を用意してから、稚魚が出荷サイズに育つまでの流れ。帯の長さが、その段階にかかる日数の目安です。
親魚を繁殖できる状態に持っていく
オスとメスを合わせる
繁殖行動が起きる
孵化までの管理
卵から出てくる
稚魚が泳ぎ始め、餌を食べ出す
出荷サイズまで育てる
販売できるサイズに到達
10匹以上の群れで飼っておくと、その中から自然にペアができます。メスは体が大きく体高があり腹がふっくらした個体、オスはスリムな個体を選びます。産卵前の1〜2週間、ブラインシュリンプや冷凍アカムシなどの生餌を中心にしっかり与えて栄養を蓄えさせると、メスがよく卵を持ちます。水温は24〜26℃を保ちます。
コツ プリステラは丈夫で飼育の水質はほとんど選びませんが、繁殖を狙うときだけは次の段階で水質を軟水・弱酸性に寄せます。
ここがネオン・カージナルとの違いです。プリステラも軟水・弱酸性(pH5.5〜6.5、GH1〜5)を用意すると産卵しやすくなりますが、ネオンほど極端な超軟水は必要ありません。ウィローモスなどの細葉水草を厚く敷いた産卵水槽を用意し、水温を26〜28℃に上げます。卵と稚魚は光に敏感なので、産卵水槽は薄暗くしておきます。
注意 水道水そのままの中性・硬水では産卵しにくくなります。繁殖のときだけは水質を整えてください。
ペアが揃うと、オスがメスを追い、水草の間に卵をまき散らします。1回の産卵数は300〜400個とされ、卵は水草や底に散らばります。多産な魚なので、うまくいけば一度に多数の卵が採れます。産卵は早朝に行われることが多いです。
プリステラの親は卵を食べます。産卵を確認したら、すぐに親を元の水槽へ戻してください。そして、卵は光に弱いため、産卵水槽をしっかり遮光します。この「産卵後すぐの隔離」と「遮光」の2つが、プリステラ繁殖の要点です。水草が卵を物理的に隠してくれるので、隠れ家が多いほど食べられる数は減ります。
注意 親を残すと卵が食べられ、遮光を怠ると卵が死にます。どちらもプリステラ繁殖の典型的な失敗です。
水温にもよりますが、産卵から24〜36時間ほど(日本のショップ情報では2〜3日)で孵化します。孵化した稚魚はごく小さく、しばらくは水草や底に貼りついたまま、腹のヨークサック(栄養の袋)を消費します。孵化後3〜4日は餌を必要としません。この間も遮光を続け、そっとしておきます。白く濁った無精卵はカビの元になるので取り除きます。
孵化から3〜4日でヨークサックを消費し終え、稚魚が泳ぎ始めます。ここが最初の関門です。泳ぎ出した稚魚の口はごく小さく、ブラインシュリンプの幼生でも大きすぎて食べられません。インフゾリアや稚魚用の液体飼料といった、より小さな餌を数日間与える必要があります。この初期の餌を用意できないと餓死します。
注意 「泳ぎ出したらブラインシュリンプ」では早すぎます。最初の数日は必ず極小の餌を用意してください。
数日インフゾリアや液体飼料で育てて口が大きくなったら、ブラインシュリンプの幼生に切り替えます。1日2〜3回、少量ずつ与えます。稚魚が1cmを超えるあたりから、遮光を少しずつ弱めて通常の明るさに戻していきます。水質変化に弱いので、水換えは控えめにしてスポイトで底の汚れだけ吸い出します。
コツ 成魚と一緒にすると餌の競争に負けて痩せるので、ある程度の大きさになるまでは分けて育てます。
体が透けて三色のヒレが出てくれば、ショップに並ぶサイズです。ただし、売ることを考えているなら先に採算の項を読んでください。プリステラの普通種はまとめ買いで1匹109〜153円と最安クラスで、ゴールデンやパンダといった改良品種でも200〜557円どまりです。「カラシンにしては殖やせる」ことは、残念ながら採算には直結しません。
撮影: Debivort / CC BY-SA 3.0
注意 殖えすぎた個体を川や池に放流することは絶対にしないでください。
2026年7月18日時点の調査。相場は品種・グレード・時期で変動します。
実売相場(1匹)
109〜557円
通販・店頭の実売価格。あなたが買う値段でもあり、売るときの競合でもある=ここに利ざやは出ない
| 繁殖形態 | バラマキ産卵 — 水草や底床に卵をばらまく。親が卵を食べるため、産卵後すぐに親を隔離できるかが成否を分ける。 |
|---|---|
| 別名 | プリステラ・テトラ、Xレイテトラ、ゴールデンプリステラ、パンダプリステラ、Pristella riddlei |
| 飼育のしやすさ | 簡単 |
| 成魚サイズ | 40〜45mm |
| 寿命 | 3〜4年 |
| 適水温 | 22〜28℃ |
| 繁殖適水温 | 26〜28℃ |
| pH | 6〜7.5 |
| 硬度(GH) | 2〜20 |
| 最低水槽サイズ | 57L以上 |
| 産卵から孵化まで | 1〜3日 |
| 稚魚の初期飼料 | インフゾリアや液体飼料などの極小の餌(孵化後3〜4日はヨークサックで無給餌)。その後ブラインシュリンプ幼生 |
| 親の隔離 | 必要(親が稚魚・卵を食べる) |
| 雌雄の見分け方 | メスはオスより体が大きく、体高があって腹がふっくらする。オスはスリム。半透明なので、抱卵したメスは腹の卵が透けて見えることもある。ただし成熟するまでは判別が難しい。 |
| 原産地 | ベネズエラ、ガイアナ、ブラジル、スリナム |
| 生息環境 | 南米北部(ベネズエラ〜ブラジル北部)の沿岸河川、オリノコ・アマゾン水系。沿岸のわずかな汽水域にも分布するとされる。 |
| 入手先 | 量販店、専門店、通販、オークション |
| 相手 | 相性 | 理由 |
|---|---|---|
| ネオンテトラ | 良い | 同じくらいのサイズで温和な群泳魚。中層で群れ、プリステラと衝突しない。 |
| コリドラス | 良い | 底層で温和。生活層が分かれ、餌の取り合いも起きない。 |
| ラスボラ・ヘテロモルファ | 良い | 温和な小型の群泳魚で、好む水質も近い。相性が良い。 |
| ミナミヌマエビ | 良い | プリステラは温和で、成体のエビを襲わない。ただし口に入る稚エビは食べられることがある。 |
| スマトラ | 注意 | スマトラはヒレを齧る習性があり、プリステラが齧られることがある。混ぜるならスマトラを十分な群れにして注意する。 |
繁殖そのものより、ここでつまずく人のほうが多いです。
Pristella 属は、この種ただ1種だけからなる単型属です。かつて Pristella riddlei という名でも呼ばれましたが、これは現在では無効な別名(シノニム)として整理されています。
カラシンの仲間はふつう純淡水の魚ですが、プリステラは南米の沿岸に分布し、わずかに塩分を含む汽水域にも生息するとされる、少し変わった経歴の持ち主です。ただし、この汽水耐性について書かれた資料は飼育サイトが中心で、一次文献での裏づけは取れていません。本サイトでは「弱い汽水にも耐えるとされる」という控えめな書き方にとどめています。
【価格】2026-07-18 に charm(チャーム)の実売検索結果で確認(在庫あり・SOLD OUT除外・確度高)。通常プリステラ30匹3,280円=1匹109円、12匹1,380円=115円、6匹920円=153円=カラシン最安圏(ネオン・ブラックネオンと同水準)。改良品種はゴールデン6匹1,200円=200円・3匹920円=307円、パンダ3匹1,670円=557円・12匹6,270円=523円。バルーン・レッド・フォークテールは売り切れ。繁殖用ペア売りは無く(カラシンは群れ売り)、ペア価格は不明。ヤフオク落札(180日25件)は、表示の「平均2,181円」がアニメ「リゼロ」の都市名グッズ(プリステラの宴)やフィギュアで汚染されており生体相場ではない。生体の実落札はMサイズ10匹850円=1匹85円(業者「不二熱帯魚」が9回連続同額落札)、ゴールデン10匹1,400円、単品ゴールデン1匹80円等で、すべて業者の即決・単一入札=競り上がりゼロ(開始価格=落札価格)。個人ブリーダーの出品も入札競争も観測されず、個人繁殖の販路・需要が実質存在しない直接証拠。
【学名】Pristella maxillaris (Ulrey, 1894)。Pristella 属は単型属(本種が唯一)。旧名 Pristella riddlei は無効シノニム。Catalog of Fishes 種ページは調査時404、WoRMS は淡水対象外で直接引けず、FishBase(CoF典拠)と Seriously Fish の一致で確定した。
【繁殖数値の食い違い】産卵〜孵化は Seriously Fish が24〜36時間、日本の飼育サイトが2〜3日で、1〜3日と幅を取った。1回の産卵数300〜400は確度中〜高。
【裏付けが取れなかった項目】性成熟の月齢は本種固有の一次データが無く null。出荷サイズまでの日数は直接の出典が無く、60〜120日は小型カラシンの成長からの推定であり出典のある数値ではない。家庭での稚魚生存率も裏付けが無く null。汽水耐性は複数の飼育サイトが述べるが一次文献で確認できず、具体的な比重の数値(1.0002/1.003 など)は孫引きのため本文では断定を避け「弱い汽水にも耐えるとされる」とした。寿命36〜48か月は日本の飼育サイト由来で確度中。
【主な情報源】FishBase、Seriously Fish、東京アクアガーデン、aqua-fish.net、PangoVet、A-Z Animals、charm(検索結果)、ヤフオク落札相場。
親の入手から稚魚(針子)の育成まで、種をまたいで共通するコツがあります。繁殖に挑むならあわせてどうぞ。
バラマキ産卵
Hyphessobrycon herbertaxelrodi
テトラの中では殖やしやすい方。でも1匹90円で、殖やしても売り先はありません。
バラマキ産卵
Paracheirodon innesi
繁殖は最難関の部類(超軟水+遮光)なのに1匹60円台。個人が殖やして売る意味はありません。
バラマキ産卵
Paracheirodon axelrodi
家庭繁殖で最も難しい魚のひとつ。だから今も大半が野生採集です。1匹100円で個人の出る幕はありません。