ドジョウ
Misgurnus anguillicaudatus / Oriental weatherfish
かんたんに言うと
田んぼや水路の泥底にすむ、口ひげ10本の細長い魚。空気を吸って腸で呼吸する。準絶滅危惧で、外国産ドジョウも各地に広がっている。
撮影: Ffish.asia / CC0
目次
大きさ
10〜15cm
すむ水
淡水
在来種
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
ドジョウは、田んぼ・湿地・そのまわりの小川や農業水路の、流れの少ない泥の底にすむ魚です。細長い円筒形の体で、口のまわりにひげが5対(10本)あります。全長は10〜15cmくらいで、メスのほうが大きくなります。
水面に上がってきて空気を飲み込み、腸で酸素を取り込んで、残りの空気をおしりから出すという変わった呼吸をします。そのため、水温が高く酸素の少ない田んぼの水でも暮らせます。逆に、水面に出られないと溺れてしまいます(長野県水産試験場)。
いまの「ドジョウ」は1種ではありません。環境省は2018年に、北日本のキタドジョウ、奄美群島のシノビドジョウ、台湾・与那国島のヒョウモンドジョウを分けて評価し、残りをこの「ドジョウ」として準絶滅危惧にしました。さらに日本のドジョウには、日本在来の系統と中国大陸の系統があり、食用や釣り餌として持ち込まれた外国産ドジョウが各地に広がっています。
水田の整備で田んぼと水路が分断されて産卵できる田が減り、住む場所は減っています。
毒・危険
ドジョウを生で食べてはいけません。 1980年ごろから、中国などから輸入されたドジョウを生で食べる「踊り食い」で、剛棘顎口虫(ごうきょくがっこうちゅう)という寄生虫に100人以上が感染しました。国産のドジョウでも、生食で日本顎口虫に感染した例が報告されています(食品安全委員会)。
顎口虫の幼虫は皮膚の下を移動して、線のようなはれやかゆみを起こし、まれに目や脳・神経に入って失明やまひを起こすことがあります。予防は十分に加熱することです。酢では死なず、家庭の冷凍庫くらいの温度(−9〜−4℃)では9〜12日生き残るとされます(仙台市・食品安全委員会)。生や加熱の足りない淡水魚を食べたあとに、皮膚に線のようなはれなどが出たら医療機関へ。
触っただけで感染するという資料はありません(口から食べて感染する寄生虫です)。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
ドジョウの見分け方
- 細長い円筒形の体で、口ひげが5対(10本)。体は一様な褐色〜暗い褐色で腹は明るいが、色の変異は大きい。
- 尾ビレのつけ根の上に小さな黒い斑があることが多い。オスは胸ビレのつけ根に骨の板が発達する。
- カラドジョウ(外来種)もひげは10本で、数では区別できない。カラドジョウはひげが長く、体高が高い。目安として、ひげの長さが体長の5%以下ならドジョウ、10%以上ならカラドジョウ(小出水ほか 2012。予備的な目安で、確実にはDNAで調べる)。
- 在来系統と大陸系統は、ヒレの位置の比や背ビレのすじの数に違いがあるが範囲が重なり、見た目だけで確実に分けるのは難しい。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| カラドジョウ | 中国・朝鮮半島原産の外来種。ひげは同じ10本だがひげが長く、体高が高い(ひげが体長の10%以上ならカラドジョウの目安)。ドジョウとの雑種も子を残せる。2026年に防除検討外来種。 |
| シマドジョウ | 別の属のドジョウ科の魚で、口ひげが3対(6本)(茨城県の資料)。 |
| ホトケドジョウ | 口ひげが4対(8本)で、ドジョウより小さい(静岡県・山梨県の資料)。 |
| キタドジョウ | 2018年にドジョウから分けて評価された北日本(北海道・本州東部の一部)の魚。体が大きめで(体長12〜21cm)、目が小さめ。学名は検討中。 |
分布と生息環境
日本列島のほぼ全土に広く分布しますが、北海道全域と南西諸島の一部のものは、国内外から持ち込まれたものと考えられています(環境省)。国外ではアムール川水系から中国、朝鮮半島、台湾、ベトナム北部などにいます。
日本の中でも在来系統と大陸系統が混ざっています。2026年9月の環境省の外来種リストは、関東北部や大阪平野などでは、ドジョウの多くが外国産ドジョウか、在来との交雑集団に置き換わっているとしています。
水田・湿地・そのまわりの小川や農業水路。流れより止水、砂より泥を好む。主に低地だが、昔ながらの水田が近くにあれば上流にもいる。
生態(食べもの・産卵)
雑食で、泥の上を這いながら、底にいる小さな虫や甲殻類、付着した藻類などを食べます。
繁殖:田んぼに水を入れて代かきをする初夏(おおむね6〜7月)に、水路から田んぼに入り、夜にオスがメスに巻きつくようにして産卵します。卵は泥の上にばらまかれ、メスは1シーズンに何回も産みます(国立環境研究所)。田んぼは稚魚が育つ場所でもありますが、夏の中干しのあとは稚魚が田んぼで育たなくなります(栃木県水産試験場)。
冬:秋の稲刈りで田んぼの水が抜かれると水路などへ移り、泥に潜って冬を越します(北海道)。
飼われていると数年生きますが、野外では田んぼの水を抜くときに大量に死ぬこともあり、寿命は短いとされます(国立環境研究所)。何年生きるかを示した資料は見つかりませんでした。
家で飼えるか
ドジョウを家庭で飼うための公的な手引きは、今回の調査では見つかりませんでした。資料から言えるのは次の3つだけです。
水面との間に空気の層を残す:空気を吸って呼吸する魚で、水面に出られないと溺れます(長野県水産試験場)。底に砂や泥を敷く:泥の底を好み、潜って暮らします。栃木県水産試験場の稚魚の飼育試験では、ストレスを減らすために水槽の底に砂を敷き、水深15cmで飼っていました。詰め込みすぎない:同じ試験で、密度を高くした区は白点病の寄生虫でほぼ全滅しました。
水温・水槽の大きさ・混泳・飛び出しについて、ドジョウで確かめた公的資料は見つかりませんでした。家庭の水槽で殖やせるかを示した資料もありません(養殖ではホルモン注射を使って採卵しています)。
飼えなくなっても、川や田んぼに放さないでください。店や釣り餌のドジョウには外国産ドジョウやカラドジョウが混じっていることがあり、在来のドジョウと交雑します(環境省)。
法律・ルール
環境省レッドリスト:準絶滅危惧(2018年に「情報不足」から変更、2020年版でも同じ)。理由は、水田地帯を中心にすむ場所が減っていること、外来種との競合、そして同じ種の外国系統との交雑です。キタドジョウ・シノビドジョウ・ヒョウモンドジョウは「情報不足」です。都道府県のレッドリストでの扱いは県によって違います。
外来種リスト:2026年9月11日に公表された環境省の生態系被害防止外来種リスト第2版で、外国産ドジョウとカラドジョウ(中国・朝鮮半島原産。ドジョウとの雑種も子を残せる)が「防除検討外来種」になりました。奄美群島より南に持ち込まれたドジョウや、食用・釣り餌用のドジョウに混じって入ったヒメドジョウも載っています。どれも外来生物法の特定外来生物ではないので、飼うことや売ることは法律では禁止されていませんが、リストは「逸出に十分注意し、放流しないこと」としています。
採るとき:一部の地域ではドジョウが漁業権の対象の魚になっています(環境省)。採る場所の漁協や県のルールを確認してください。
ネットで売るとき:Yahoo!オークションは、環境省レッドリストの絶滅危惧種・準絶滅危惧種の出品を禁止しているので、ドジョウも対象です。メルカリとYahoo!フリマは生き物の出品自体が禁止です。
基本データ
| 分類 | ドジョウ科(Cobitidae) |
|---|---|
| すむ水 | 淡水 |
| 大きさ | 100〜150mm |
知っておきたいこと
英名の weatherfish(天気の魚)は、ヨーロッパの近縁種が気圧の変化で活発になるという言い伝えから来ているとされます。日本でも「天気が悪くなるとドジョウが騒ぐ」と言われますが、確かめた研究は見つかりませんでした。水面に上がってくるのは、まず空気を吸うためです。
ドジョウは古くから食用として人の手で各地へ運ばれてきたため、もともとどこにすんでいたのか(自然分布)がよく分かっていない魚です。北海道全域と南西諸島の一部のドジョウは、国内外から持ち込まれたものと考えられています(環境省)。
春から夏に川や水路から田んぼへ上る「上りドジョウ」、秋に田から戻る「下りドジョウ」という呼び名があります(長野県水産試験場)。北海道の排水路の調査では、雨の日に田んぼへ上る数が多くなっていました。
よくある質問
ドジョウのひげは何本ありますか?
ドジョウはなぜ水面に上がってくるのですか?
ドジョウは天気を予報できるって本当?
ドジョウは絶滅危惧種ですか?
ドジョウの飼い方は?
お店のドジョウは日本のドジョウですか?
ドジョウを生で食べても大丈夫ですか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】Eschmeyer's Catalog of Fishes、環境省レッドリスト2018補遺(4種への整理、日本産と大陸由来の系統の違い)・2020。シノビドジョウの学名は Catalog of Fishes(2022年記載)。キタドジョウ・ヒョウモンドジョウは日本の資料では学名未決定。
【見分け方】ひげの数・体色・尾ビレのつけ根の黒斑は環境省レッドリスト2018補遺と長野県水産試験場。カラドジョウとの違いは小出水ほか(2012, DNAで判別した個体の計測)。在来系統と大陸系統の違いは松井・中島(2020)の引用。
【生態・呼吸・繁殖】国立環境研究所 侵入生物データベース(すみか・食性・産卵・寿命)、長野県水産試験場(腸呼吸・上りドジョウ)、腸呼吸の仕組みは学術論文(McMahon & Burggren 1987 の引用)、北海道立水産試験場(田んぼへの遡上・越冬)、栃木県水産試験場(中干し・飼育試験)、石川県(ホルモン注射による採卵)。天気で騒ぐという説を確かめた研究は見つからなかった。
【寄生虫】食品安全委員会「顎口虫」のハザード概要、仙台市。
【法律・販売】環境省 生態系被害防止外来種リスト第2版(2026年9月11日)、環境省レッドリスト、Yahoo!オークション ガイドライン細則、メルカリの禁止出品物。
川魚のほかの種
淡水・汽水・海水
ウグイ
Pseudaspius hakonensis
川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。
淡水
オイカワ
Opsariichthys platypus
川の中流から下流でいちばん普通に見られる魚のひとつ。夏の産卵期、オスは赤と青緑の婚姻色になり尻ビレが大きく伸びる。関東ではヤマベと呼ぶ。
淡水
カワムツ
Nipponocypris temminckii
体の真ん中に太い黒っぽい縦帯、黄色い胸ビレ・腹ビレが目印の川魚。本来は西日本の魚で、関東・北陸以北では国の外来種リストに載っている。
淡水
モツゴ
Pseudorasbora parva
クチボソとも呼ばれる、池や水路にすむ全長8cmほどの小魚。小さく上を向いた口とヒゲが無いのが目印。肝吸虫がいるので生で食べてはいけない。