モツゴ
Pseudorasbora parva / Stone moroko
かんたんに言うと
クチボソとも呼ばれる、池や水路にすむ全長8cmほどの小魚。小さく上を向いた口とヒゲが無いのが目印。肝吸虫がいるので生で食べてはいけない。
目次
大きさ
6〜10cm
すむ水
淡水
在来種(地域により国内外来)
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
モツゴは、池や沼、そこにつながる水路、川の下流のよどみにすむ、全長8cmほど(大きくて10cm前後)の小さなコイの仲間です。口が小さく、メダカのように少し上を向いていることから「クチボソ」とも呼ばれます。汚れた水や環境の変化に強く、コンクリートで固められた小川やため池、都会の公園の池でもよく見られる、とても身近な魚です。
銀色の体の真ん中に黒い縦の線が通るのが目印ですが、この線は若い魚ほどはっきりしていて、大人では薄かったり、ほとんど見えなかったりします。春から夏の産卵期になると、オスは全身が黒くなって縦の線が消え、口のまわりに白いつぶつぶ(追星)が出ます。オスは石や水草の茎の汚れを取って卵を産ませ、かえるまで卵を守ります。
本来すんでいるのは関東から西の本州・四国・九州で、北海道や東北には人の手で運ばれて広がりました。そこでは近い仲間で絶滅のおそれがあるシナイモツゴを追いやってしまうことが問題になっていて、環境省の外来種リストにも載っています。海外では、ヨーロッパに入り込んで広がり、EU の侵略的外来種に指定されています。
佃煮や甘露煮で食べられてきた魚ですが、肝吸虫という寄生虫の幼虫を持つことがあるので、生や加熱不十分で食べてはいけません。
毒・危険
モツゴに毒があるという記載は、公的・学術的な資料には見当たりません。注意が必要なのは寄生虫(肝吸虫)です。
岡山大学の調査(1965年)では、中国地方のモツゴから肝吸虫の幼虫が見つかっています。韓国の研究では、モツゴは肝吸虫の幼虫を持ちやすく、その地域でどれだけ肝吸虫が広がっているかを測る「指標の魚」になるとされています。肝吸虫は人の肝臓の胆管に寄生する寄生虫で、感染するのは、幼虫を持った淡水魚を生・加熱不十分(塩漬け・酢漬け・燻製を含む)で食べたときです(MSDマニュアル)。
食べるなら必ず中まで十分に火を通してください。岡山の調査ではネコの感染も見つかっているので、生のモツゴをペットに与えるのも避けてください。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
モツゴの見分け方
- 口が小さく、少し上を向いている(下あごが出た受け口)。口ひげが無い。
- 銀色の体の真ん中に、口先から尾のつけ根まで黒い縦の線。若い魚ほどはっきりしていて、大人では薄い・見えない個体もいる。
- 体の横の線(側線)が尾のつけ根まで途切れずに通っている(似ているシナイモツゴ・ウシモツゴは、前のほうの数枚のうろこにしか無い)。
- うろこのふちが暗く、全体が網目模様に見える。産卵期のオスは全身が黒くなり、縦の線が消える。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| シナイモツゴ | 側線が前のほうの3〜5枚のうろこにしか無い(モツゴは尾まで通る)。頭が大きく尾のつけ根が短いのでずんぐり見え、金属光沢が少ない。環境省レッドリストで絶滅危惧IA類。関東では絶滅したとされ、埼玉県は県の在来種から外している。 |
| ウシモツゴ | 側線が途中までしか無い。体の黒い縦の線が無いか薄く、メスでは消える。頭がモツゴより長い。環境省レッドリストで絶滅危惧IA類。 |
| タモロコ | タモロコには口ひげが1対ある(モツゴは無い)。口は水平〜やや下向きで、尾のつけ根に黒い点がある。 |
| ムギツク | ムギツクにも口ひげが1対ある。口先がとがり、全長15cmと大きい。関西ではムギツクを「クチボソ」と呼ぶことがあるので、名前だけでは区別できない。 |
分布と生息環境
本来の分布(自然分布)は、関東地方から西の本州・四国・九州です。国外では中国大陸東部・朝鮮半島・台湾などにすんでいます。
人の手で北海道・東北地方・沖縄県などに運ばれました。コイやフナの放流に混じったり、観賞魚として売られたものが捨てられたりした可能性が指摘されています。自然分布の地域の中にも、中国大陸のモツゴが持ち込まれた可能性があるとされます。
環境省の外来種リスト(2026年9月の第2版)では、問題になっている地域として北海道・東北地方・関東地方・長野・沖縄が挙げられています。関東は自然分布の地域にも含まれるため、関東のモツゴがもともとの在来のものか、ほかから持ち込まれたものかは、場所ごとに違う可能性があります。
湖、池や沼、そこにつながる細い水路、川の下流。泥の底のよどみに多い。汚れた水や環境の変化に強く、コンクリート護岸の小川やため池、都市の公園の池にもすむ。
生態(食べもの・産卵)
何でも食べる雑食性で、底にすむ小さな生き物や石についた藻類、動物プランクトンを食べ、大人はとくにユスリカの幼虫をよく食べます。孵化から1年ほどで全長5cmほどになって大人になり、寿命は5年ほどとされます。
産卵期は地域によって違い、おおむね4〜7月(茨城県では4〜8月)です。曇りや小雨の日の早朝に産卵することが多いとされます。オスが石や杭、ヨシなどの水草の茎についたコケや泥を取り除いて、メスを導いて卵を産ませ、かえるまで卵を守ります。オスは複数のメスの卵を同じ場所で守るので、成長の段階が違う卵が並ぶこともあります。
卵がかえるまでの日数は、日本のモツゴの資料では見つかりませんでした。中国のモツゴを使った実験では、水温24℃で約4.5日でした。
モツゴの釣り
ほぼ一年を通して、川の下流や池、沼、水路でねらえます。アカムシや練りエサを使ったウキ釣り・ミャク釣りが基本で、タナゴ釣りと同じ繊細な仕掛けがよく合い、タナゴ釣りの外道としてもよく掛かります。エサを取るのがとてもうまく、小さなアタリを取るのがコツです。
公園の池などでは、釣りが禁止されている場所や、ルールが決まっている場所があります。釣る前に、その場所の管理者の決まりを確認してください。一部の地域ではモツゴが漁業権の対象になっています(千葉県の印旛沼など)。
家で飼えるか
外来生物法の規制はなく、家で飼うことができます。汚れた水や環境の変化に強い丈夫な魚です。ただし水温・水槽の大きさ・エアレーションなど、家庭で飼うときの具体的な目安を示した公的な資料は、今回の調査では見つかりませんでした。
混泳には注意が必要です。海外の研究では、コイやテンチと同じ池・水槽で飼ったところ、モツゴが体をかじって傷をつけました。オスは繁殖期になわばりを作って卵を守ります。
家庭の水槽で殖やした記録は、出典のあるものが見つかりませんでした。参考までに、千葉県の印旛沼の調査では、竹や塩ビ管にも卵が産みつけられていました。飼えなくなっても、川や池に放すことは絶対にしないでください。
法律・ルール
モツゴは日本の在来の魚で、外来生物法(国外から来た生き物が対象)の規制はかかりません。ただし2026年9月から、環境省の「生態系被害防止外来種リスト(第2版)」に、北海道・東北地方などのモツゴが国内由来の外来種(防除検討外来種)として載っています。理由は、近い仲間のシナイモツゴがすむ池に入ると、繁殖を邪魔して置き換わってしまうためです。リストでは「逃がさないこと・放流しないこと」が求められています。
近い仲間のシナイモツゴとウシモツゴは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(もっとも絶滅のおそれが高いランク)です。モツゴ自体は環境省のレッドリストには載っていませんが、高知県では減少していて絶滅危惧Ⅰ類とされています。
一部の地域では漁業権の対象魚種です。釣った魚や飼っていた魚を、別の川や池に放さないでください。
基本データ
| 分類 | コイ科(Cyprinidae) |
|---|---|
| すむ水 | 淡水 |
| 別名 | クチボソ |
| 大きさ | 60〜100mm |
知っておきたいこと
「クチボソ」はモツゴの別名ですが、関西ではムギツクという別の魚を「クチボソ」と呼ぶことがあります。また、産卵期のオスが全身黒くなり、口のまわりに白い追星が出る姿から「イシモロコ」とも呼ばれます。
釣りでは「ウキは動くのに釣れない」ときはモツゴのしわざかもしれない、と言われるほど、エサをかすめ取るのがうまい魚です。
千葉県の印旛沼では、モツゴに漁業権が設定されていて、漁協が産卵床を沈めて数を増やしています。獲れたモツゴは「ざこの佃煮」などに加工されます。
よくある質問
クチボソとモツゴは同じ魚ですか?
モツゴとシナイモツゴの違いは何ですか?
モツゴとタモロコの違いは何ですか?
モツゴは食べられますか?
モツゴに毒はありますか?
モツゴは外来種ですか?
モツゴはいつ卵を産みますか?
モツゴは家で飼えますか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】国立環境研究所 侵入生物データベース、国立科学博物館 魚類データベース、茨城県内水面水産試験場「いばらき魚顔帳 モツゴ」(2011。県サイト障害のため Internet Archive の保存版で確認)、長野県水産試験場「信州の魚たち」。FishBase はカマツカ科(Gobionidae)に置く。関西でムギツクをクチボソと呼ぶ点は Honda 釣魚図鑑のみ。
【大きさ・寿命】全長約8cm(国立環境研究所・国立科学博物館・茨城県)、最大10cmほど(菅野・金岩 2016 東京農業大学農学集報61(1))。FishBase の最大は12.5cm。寿命5年は FishBase と同論文の引用で一致するが、どちらも日本の野外個体の実測ではない。
【見分け方】側線・縦の線・口・婚姻色は国立環境研究所、国立科学博物館、茨城県、長野県。シナイモツゴ・ウシモツゴとの違いは国立環境研究所・国立科学博物館・大阪府立環境農林水産総合研究所の図鑑、タモロコとの違いは「いばらき魚顔帳 タモロコ」。繁殖期以外の雌雄の見分け方は資料が見つからず書いていない。
【分布・外来種としての問題】国立環境研究所、環境省「生態系被害防止外来種リスト(第2版)」魚類(2026-09-11)。シナイモツゴとの置き換わりは古賀(2005)北海道大学博士論文要旨。交雑個体の繁殖能は資料で食い違う(環境省リストは繁殖能なし、同論文は北海道・東北でF2以降の雑種を報告)ため本文では触れていない。EU の指定は実施規則 (EU) 2016/1141。コイ・テンチをかじった研究は Oberle ほか(2019)Acta Ichthyologica et Piscatoria 49(2)(抄録で確認)。
【生態・産卵】国立環境研究所、長野県、茨城県、コトバンク(世界大百科事典)。ふ化日数は Zhu ほか(2018)Zoologia 35(中国産の個体、水温24℃)。印旛沼の産卵床は千葉県の試験研究成果普及情報(2017〜2022年度)。
【寄生虫】稲臣ほか(1965)岡山医学会雑誌77(7)「肝吸虫の研究2」(抄録の感染率は数が合わないため載せていない)、Kim ほか(2008)Korean J Parasitol 46(4)、コトバンク(日本大百科全書)、MSDマニュアル プロフェッショナル版「肝吸虫症」。肝吸虫について調理器具を介した感染を書いた公的資料は見つからなかった。毒については「毒があるという記載は見当たらない」とした。
【法律】環境省リスト第2版・第1版、環境省レッドリスト2020(シナイモツゴ・ウシモツゴ CR。汽水・淡水魚類の第5次リストは未公表)、高知県レッドリスト2017改訂版、埼玉県レッドデータブック2018(モツゴの掲載なし。シナイモツゴは県の在来種から削除)。印旛沼の漁業権は千葉県。
【飼育】家庭飼育の具体的な目安は公的資料が見つからなかった。販売価格も確認できず載せていない。
川魚のほかの種
淡水・汽水・海水
ウグイ
Pseudaspius hakonensis
川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。
淡水
オイカワ
Opsariichthys platypus
川の中流から下流でいちばん普通に見られる魚のひとつ。夏の産卵期、オスは赤と青緑の婚姻色になり尻ビレが大きく伸びる。関東ではヤマベと呼ぶ。
淡水
カワムツ
Nipponocypris temminckii
体の真ん中に太い黒っぽい縦帯、黄色い胸ビレ・腹ビレが目印の川魚。本来は西日本の魚で、関東・北陸以北では国の外来種リストに載っている。
淡水
ドジョウ
Misgurnus anguillicaudatus
田んぼや水路の泥底にすむ、口ひげ10本の細長い魚。空気を吸って腸で呼吸する。準絶滅危惧で、外国産ドジョウも各地に広がっている。