カワムツ
Nipponocypris temminckii / Dark chub
かんたんに言うと
体の真ん中に太い黒っぽい縦帯、黄色い胸ビレ・腹ビレが目印の川魚。本来は西日本の魚で、関東・北陸以北では国の外来種リストに載っている。
撮影: Ffish.asia / CC BY 4.0
目次
大きさ
10〜20cm
すむ水
淡水
在来種(地域により国内外来)
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
カワムツは、川の上流の下のほうから中流にかけての、淵や流れのゆるやかな瀬にすむコイの仲間です。全長15cm前後、大きいもので20cm近くになります。体の真ん中を太い暗い青色〜黒っぽい縦帯が1本通り、胸ビレと腹ビレが黄色いのが目印です。
5〜8月の産卵期になると、オスはあごの下と腹が赤くなり、頭に白いつぶつぶ(追星)が目立つようになります。よく似たヌマムツとは、2003年まで同じ種として扱われていました。見分けるときは、胸ビレ・腹ビレの前のふちが赤いか(ヌマムツ)、黄色いか(カワムツ)を見ます。
本来すんでいるのは、能登半島と天竜川より西の本州・四国・九州です。琵琶湖のアユの放流に混じるなどして関東や東北へ広がり、入った川ではほかの魚を減らすほど増えることがあります。そのため2026年9月から、関東・北陸以北の本州のカワムツは、環境省の「生態系被害防止外来種リスト」に防除検討外来種として載っています。外来生物法の規制対象ではないので飼うことはできますが、釣った魚や飼っている魚を、別の川や池に放してはいけません。
釣りではオイカワ釣りの外道として掛かることが多い魚です。毒はありませんが、川魚なので生では食べないでください。
毒・危険
カワムツに毒はありません。寄生虫の宿主としてカワムツを名指しした公的な資料は見つかりませんでしたが、川魚(コイの仲間を含む淡水魚)を生で食べることは、横川吸虫や肝吸虫に感染する経路として知られています。生では食べず、中まで十分に火を通してください。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
カワムツの見分け方
- 体の真ん中に太い暗い青色〜黒っぽい縦帯が1本通る。背は褐色、腹は白い。
- 胸ビレ・腹ビレが黄色。ヒレの前のふちも黄色で、赤くならない(赤ければヌマムツを疑う)。
- 背ビレと腹ビレが同じ位置から始まる。口ひげは無い。
- 5〜8月のオスは、あごの下と腹が赤くなり、頭に追星が出る。口元が赤いからといってヌマムツとは限らない。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| ヌマムツ | いちばん似ている魚。胸ビレ・腹ビレの前のふちに朱色の線が出ればヌマムツ、黄色で赤くならなければカワムツ。ヌマムツのほうがうろこが細かい(側線のうろこ53〜63枚)。ヌマムツは平野の用水路や池、カワムツは川の上流〜中流の淵に多い。産卵期のカワムツのオスもあごの下と腹が赤くなるので、口元の赤さでは区別できない。 |
| オイカワ | オイカワには太い縦帯が無く、赤っぽい小さな横の斑が並ぶ。腹ビレは白っぽい。産卵期のオスは体の横が赤と青緑になる。オイカワは開けた浅瀬、カワムツは淵に多い。稚魚どうしは見分けにくい。 |
| ウグイ | ウグイは産卵期にオスもメスも体の横に赤い縦帯が3本出る(カワムツの縦帯は黒っぽい1本で、赤くなるのはオスのあごの下と腹)。ウグイは30cm以上に大きくなる。 |
| アブラハヤ | アブラハヤは背ビレが腹ビレより後ろから始まり、ヒレに色が無い。うろこがとても細かく、体がぬるぬるしている。 |
分布と生息環境
本来の分布(自然分布)は、日本海側では能登半島より西、太平洋側では天竜川より西の本州と、四国・九州です(富山県のものも自然分布とみる研究者もいます)。国外では朝鮮半島にもいます。
人の手で関東地方・新潟県・東北地方に広がりました。関東では1990年ごろには多摩川・利根川などで見つかっており、神奈川県では2000年に相模川で初めて採れたあと、県内のほぼ全域へ広がりました。長野県の天竜川の支流では、底にすむ魚を除いた魚の92.8%をカワムツが占めた例もあります。
広がった経路は、琵琶湖産のアユの稚魚に混じって放流された可能性がもっとも高いとされます。ただし遺伝子を調べると琵琶湖とは別の集団の川もあり、観賞魚や他の魚の放流など、経路は複数あったと考えられています。
川の上流の下部〜中流の下部の淵や平瀬に多く、岸にツルヨシやヤナギが茂る場所を好む。下流や水田の排水路、池の岸にもいる。開けた浅瀬に多いオイカワとは、すむ場所が少しずれる。
生態(食べもの・産卵)
底の小さな生き物から石についた藻類まで食べる雑食性で、とくに水面に落ちた虫や流れてくる水生昆虫をよく食べます。アマゴのような強い魚がいない川では、大きな個体が淵に陣取って、流れてくる餌を待ちます。同じ場所にすむオイカワとは、攻撃し合ったり餌を取り合ったりすることが研究で確かめられています。
産卵期は5〜8月です。淵や平瀬の岸寄りの、流れのゆるい浅い場所の砂利に産みます。オスがメスに覆いかぶさって体を震わせ、尻ビレで砂をかき上げると同時に産卵し、卵は川底に埋まります。生まれた稚魚は淵の岸辺に群れます。卵の大きさや、卵がかえるまでの日数を示した資料は、今回の調査では見つかりませんでした。
なお、ペアになれなかったオスが卵をよく食べる、という記録があります。「小さな魚を食べる」とする話もありますが、公的な資料や論文では確認できませんでした。
カワムツの釣り
カワムツだけをねらって釣ることは少なく、オイカワ釣りやアマゴ釣りの外道として釣れることが多い魚です。釣れやすいのは春から晩秋で、淵や流れのゆるいトロ場が中心ですが、オイカワより動き回るので瀬や落ち込みでも釣れます。
釣り方やエサはオイカワとほぼ同じで、ウキ釣り・毛ばり釣りのほか、小さなルアーにもよく反応します。エサはミミズ、サシ、アカムシ、練りエサなどです。
関東・北陸以北の本州では外来種リストに載っている魚です。釣ったカワムツを別の川や池に移したり、生きたまま持ち帰って放したりしないでください。カワムツが漁業権の対象になっているかは確認できなかったので、釣る川の漁協の遊漁規則は必ず確かめてください。
家で飼えるか
日本の淡水魚の専門店などで売られており、飼うことはできます。気の強い魚で、高校生の研究では、餌のあとに同じカワムツやオイカワ・ウグイなどを攻撃し、隠れ家を作ると攻撃が減りました。小さな魚と一緒に飼うときは注意してください。
水温や水槽の大きさ・水流・飛び出しなど、家庭で飼うときの具体的な目安を示した公的な資料は、今回の調査では見つかりませんでした。水槽で殖やした信頼できる記録も見つかっていません。
関東・北陸以北の本州では外来種リストの対象です。飼えなくなっても、川や池に放すことは絶対にしないでください。
法律・ルール
2026年9月11日から、関東地方・北陸地方以北の本州のカワムツは、環境省の「生態系被害防止外来種リスト(第2版)」に、国内由来の外来種の「防除検討外来種」として載っています。 選ばれた理由は、一度定着するとほかの魚を減らし、川の魚の顔ぶれを大きく変えるおそれがあるためで、オイカワとの雑種も確認されています。リストでは「逃がさないこと・放流しないこと」が求められています。
一方で、カワムツは日本の在来の魚なので、外来生物法(国外から来た生き物が対象)の規制はかかりません。飼うことや売り買いは禁止されていませんが、野外に放す・別の川へ移すことは絶対にしないでください。
環境省のレッドリストには載っていません。自然分布の東の端にあたる静岡県では、県西部のカワムツが「要注目種」とされています。
基本データ
| 分類 | コイ科(Cyprinidae) |
|---|---|
| すむ水 | 淡水 |
| 別名 | Candidia temminckii、Zacco temminckii |
| 大きさ | 100〜200mm |
知っておきたいこと
学名は長く Zacco temminckii とされ、2008年に新しい属 Nipponocypris が立てられました。国際的なデータベースは今も Nipponocypris temminckii ですが、環境省の外来種リストや静岡県・京都府などの資料は Candidia temminckii と書いています。分類の考え方によっては、コイ科ではなくクセノキプリス科(Xenocyprididae)に置かれることもあります。
カワムツとヌマムツは、かつて「カワムツA型(湖や池のもの)」「カワムツB型(川のもの)」と呼び分けられていました。2003年に別の種として整理され、A型がヌマムツ、B型がカワムツになりました。そのため、2003年より前の図鑑や記録の「カワムツ」には、ヌマムツが混じっていることがあります。埼玉県の都幾川・越辺川の古い記録では、型が書かれた「カワムツ」はすべてA型(今のヌマムツ)でした。
よくある質問
カワムツとヌマムツの違いは何ですか?
カワムツとオイカワの違いは何ですか?
カワムツは外来種ですか?
カワムツはどこまで大きくなりますか?
カワムツは食べられますか?
カワムツは家で飼えますか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】Nipponocypris temminckii は FishBase、英語版 Wikipedia(Chen・Wu・Hsu 2008 が新属を設立)。Candidia temminckii は環境省「生態系被害防止外来種リスト(第2版)」魚類(2026-09-11)、静岡県レッドリスト2019、京都府自然環境目録、岡山県野生生物目録2019。ヌマムツとの分離は Hosoya ほか(2003)Ichthyological Research 50、経緯は埼玉県立川の博物館紀要19(斉藤 2019)と岐阜県のヌマムツの解説。
【大きさ】全長約15cm(国立環境研究所 侵入生物データベース、農林水産省)、全長約20cm(静岡県レッドリスト)で資料に幅があるため、15cm前後〜20cm近くと書いた。FishBase の最大は17.4cm。寿命と成熟年齢は一次資料が見つからず載せていない。
【見分け方】縦帯・ヒレの色・ヒレの前縁・婚姻色は静岡県レッドリスト、神奈川県水産技術センター、農林水産省「田んぼの生きもの調査」同定資料、WWFジャパン「九州北部の淡水魚 同定マニュアル」。側線鱗数は静岡県43〜51・神奈川県46〜55、尻ビレの条数は静岡県と神奈川県・京都府で食い違うため、条数は載せていない。
【分布・広がり】片野ほか(2014)魚類学雑誌61(2)「国内外来魚カワムツの分布拡大」、環境省リスト、国立環境研究所、神奈川県。国外分布は資料で食い違うため朝鮮半島だけを書いた。
【生態・産卵】静岡県レッドリスト、国立環境研究所、国土交通省四国地方整備局の魚類図鑑、FishBase(サテライト雄の卵食い)。オイカワとの攻撃・競争は片野ほか(2014)が引く Katano(1994)。卵の大きさ・ふ化日数は見つからなかった。「小魚を食べる」は高校生の報告にしか見当たらず、本文では確認できなかったと書いた。
【釣り】DAIWA 魚の図鑑、Honda 釣り倶楽部。漁業権魚種かどうかは告示・遊漁規則が見つからなかった。
【寄生虫】食品安全委員会の横川吸虫ほかのハザード概要シートにカワムツの名前は無い。淡水魚の生食が感染経路である点のみ記載。
【法律】環境省リスト(第2版)と、追加の経緯は農林水産省報道発表(2026-09-11)添付資料2(パブリックコメントの結果)。外来生物法の対象外は環境省のリストのパンフレットと国立環境研究所。静岡県の要注目種は静岡県レッドリスト2019。
【飼育】専門店(サトウクラフト)での販売を確認。攻撃行動は兵庫県立宝塚北高校生物部の研究(ひとはく「共生のひろば」19号)。家庭飼育の具体的な目安は公的資料が見つからなかった。
川魚のほかの種
淡水・汽水・海水
ウグイ
Pseudaspius hakonensis
川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。
淡水
オイカワ
Opsariichthys platypus
川の中流から下流でいちばん普通に見られる魚のひとつ。夏の産卵期、オスは赤と青緑の婚姻色になり尻ビレが大きく伸びる。関東ではヤマベと呼ぶ。
淡水
モツゴ
Pseudorasbora parva
クチボソとも呼ばれる、池や水路にすむ全長8cmほどの小魚。小さく上を向いた口とヒゲが無いのが目印。肝吸虫がいるので生で食べてはいけない。
淡水
ドジョウ
Misgurnus anguillicaudatus
田んぼや水路の泥底にすむ、口ひげ10本の細長い魚。空気を吸って腸で呼吸する。準絶滅危惧で、外国産ドジョウも各地に広がっている。