淡水・汽水・海水 在来種 取り扱い注意 川魚

ウグイ

Pseudaspius hakonensis / Japanese dace

かんたんに言うと

川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。

産卵期の婚姻色が出たウグイ。体の横に赤い縦帯があらわれ、帯の間と背中が黒くなる。

撮影: 小宮山広明 / CC0

目次

大きさ

20〜50cm

すむ水

淡水・汽水・海水

在来種

毒・危険

取り扱い注意

下の「毒・危険」を確認

ウグイは、北海道から九州まで、沖縄などの琉球列島を除く日本のほぼ全域にすむコイの仲間です。川の上流から下流、湖、さらに海の沿岸までと、日本の淡水魚の中でもとくに広い範囲で見られます。地方によって「ハヤ」「アカハラ」などと呼ばれてきました(ただし「ハヤ」はオイカワやカワムツなどもまとめて呼ぶ言葉です)。

大きさは、よく見かけるもので20〜30cmほど、大きいものは全長50cmほどになります。ふだんは背が黒っぽく腹が銀白色の、すらりとした目立たない魚ですが、春から初夏の産卵期にはオスもメスも体の横に赤い縦帯が3本あらわれ、帯の間と背中が黒くなります。この婚姻色が、ウグイを見分けるいちばんの手がかりです。

ウグイには、一生を川で過ごすものと、海に下って沿岸や内湾で育つものがいます。また、ほかの魚がすめない強い酸性の湖にもすめることで知られ、青森県・恐山の宇曽利山湖(pH3.4〜3.8)にすむ骨のある魚はウグイだけです。

釣りの対象としてはほぼ一年中ねらえ、多くの川で漁業権の対象魚種になっています。古くから食べられてきた魚ですが、人に感染する寄生虫(横川吸虫など)の宿主になることが公的な報告書に書かれているため、生では食べないでください。

毒・危険

ウグイに毒はありません。注意が必要なのは寄生虫です。食品安全委員会の調査報告書では、ウグイはアユ・シラウオと並んで横川吸虫(人の腸に寄生する寄生虫)の幼虫を持つ魚に挙げられており、予防法として「生で食べないこと」が示されています。

研究者がまとめたウグイの寄生虫の記録には、ほかに肝吸虫・日本顎口虫・アニサキスの幼虫も含まれています。同じ報告書には、マイナス3℃で処理しても24時間後に横川吸虫の幼虫の多くが生きていたという記録もあり、家庭の冷凍で安全になるとは言えません。食べるなら生食は避け、中までしっかり火を通してください(安全な加熱温度・時間を示した公的資料は、今回の調査では見つかりませんでした)。

刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。

ウグイの見分け方

  1. 体は細長く、頭がとがる。ふだんは背が黒っぽく、腹は銀白色。
  2. 春〜初夏の産卵期には、オスもメスも体の横に赤い縦帯が3本あらわれ、背中と帯の間が黒くなる。頭や背中に小さなつぶつぶ(追星)も出る。
  3. 確実に見分けるなら、尻ビレのふちが内側にへこむ・背ビレより前のうろこが29〜36枚・うきぶくろの後ろの端がとがる、の3点(研究者が作った検索表による)。
  4. 産卵期以外で婚姻色が出ていないと、同じ仲間のマルタやエゾウグイと見分けるのは専門家でも難しい。

似ている魚との違い

似ている魚 どこで見分けるか
マルタ 同じ仲間。婚姻色はマルタが黒い幅広の帯の下に赤い帯が1本(ウグイは赤3本)。マルタはすべて海に下り、35〜45cmと大きい。確実には頭の感覚管(マルタはえらぶたの下の管と目の下の管がつながる)で区別する。
エゾウグイ 同じ仲間で、東北・北海道の一生淡水にすむ魚。婚姻色は黒褐色の幅広い帯1本で、下あごからえらぶたにかけて赤くなる。尻ビレのふちはほぼまっすぐ(ウグイはへこむ)、背ビレより前のうろこが40〜49枚(ウグイは29〜36枚)。
ウケクチウグイ 同じ仲間。名前のとおり下あごが上あごより前に出る受け口。信濃川・最上川・阿賀野川など限られた水系にだけすむ。
オイカワ オイカワは尻ビレが大きく(とくに産卵期のオスで長い)、体の横の線(側線)が腹側へ下がる。婚姻色は青緑と赤で、ウグイの「赤3本+黒」とはまったく違う。
カワムツ カワムツは体の横に太い暗い青色の縦帯が1本通り、胸ビレ・腹ビレが黄色っぽい。産卵期のオスは腹が赤くなる。
アブラハヤ アブラハヤはうろこがとても細かく、体表のぬめりが強い。体の横の中央に暗い線が通る。大人でも7〜13cmほどと小さい。

分布と生息環境

北海道・本州・四国・九州に分布し、沖縄などの琉球列島にはいません。国外ではサハリン・朝鮮半島・南千島などにもいます。

ウグイには、一生を川や湖で過ごす淡水型と、海に下って沿岸で育ち、産卵のために川を上る降海型がいます。北海道の資料では、降海型は30〜35cm、淡水型は20〜25cmほどと、降海型のほうが大きくなります。

在来の魚ですが、神奈川県の資料によると、多摩川には在来の群れと、人が持ち込んだ群れの両方がいることが分かっています。

川の上流から下流まで広くすみ、とくに大きく深い淵に多い。湖では開けた水面の上層〜中層、海では沿岸や内湾にいる。水質の悪い都市河川や、強い酸性の湖・川でも見られる。

生態(食べもの・産卵)

何でも食べる雑食性で、水生昆虫や石についた藻類、底の小さな生き物などを食べ、魚の死骸に群がることもあります。群れで暮らし、サケ・マスのふ化場では卵や稚魚を食べる魚として嫌われることもあります。

産卵期は地域によって大きく違い、おおむね3〜7月です(埼玉県の荒川では4月下旬〜5月上旬、北海道では5〜7月)。水温が11〜13℃に上がると、流れのやや速い瀬の砂利底に多くのオスとメスが集まり、入り交じって産卵します。きれいな小石に卵を産みつけ、すでに卵が産まれた場所には産まないという習性があります。

卵がかえるまでの日数は資料で違い、埼玉県水産研究所は「水温13℃前後で約3週間」、長野県水産試験場は「約1週間」(水温の記載なし)としています。水温が高いほど早くかえるため、条件の違いと考えられます。産卵できる大きさになるまでは2〜4年かかります。

ウグイの釣り

ほぼ一年を通して釣れる魚で、川の上流から下流、河口の汽水域、山の湖まで、すんでいる範囲で広くねらえます。ウキ釣りやミャク釣り(ウキを使わず糸の動きでアタリを取る釣り)が基本で、エサはミミズや川虫、練りエサ、ご飯粒などが使われます。大きな個体は小型のルアーやフライにも食いつきます。

ウグイは多くの川で漁業権の対象になっている魚です。対象になっている川では遊漁券(釣りの許可証)が要り、禁漁期間や禁漁区が決められていることもあります。対象かどうか・料金は川(漁協)ごとに違うので、釣る川を管理する漁協の遊漁規則を必ず確認してください。

家で飼えるか

水族館では展示されている魚ですが、家庭で飼うときの水温・水槽の大きさなどを示した公的な資料や専門的な指針は、今回の調査では見つかりませんでした。確実に言えるのは、全長30〜50cmまで育ちうるということです。小さな水槽で一生飼える魚ではないので、飼うなら成長後の大きさを前提に考えてください。

公的な研究機関では、ウグイを人工的に産卵させて放流用の稚魚を育てていますが、これは大きなコンクリート池に砂利を盛って速い水流を当てる方法で、家庭の水槽で再現できる規模ではありません。

基本データ

ウグイの基本データ
分類コイ科(Cyprinidae)
すむ水淡水・汽水・海水
別名アカハラ、Tribolodon hakonensis
大きさ200〜500mm

知っておきたいこと

学名は、長く使われてきた Tribolodon hakonensis から、2020年の属の見直しで Pseudaspius hakonensis に変わりました。古い図鑑や論文は Tribolodon のままなので、調べるときは両方で探すと見つかりやすくなります。種小名の hakonensis は、箱根の芦ノ湖の標本で名前が付けられたことに由来します。

日本の資料ではコイ科とされますが、コイ科を細かく分ける新しい分類では「ウグイ科(Leuciscidae)」に置かれることもあります。

長野県の千曲川には、川の中に人工の産卵場(つけ場)をつくり、産卵に集まったウグイをとる「つけば漁」という伝統漁法があります。

よくある質問

ウグイとオイカワの違いは何ですか?
いちばん分かりやすいのは産卵期の色です。ウグイは雌雄とも赤い縦帯が3本出て帯の間が黒くなり、オイカワのオスは青緑と赤の派手な色になります。体つきも違い、オイカワは尻ビレが大きく(とくにオス)、ウグイは体が細長く頭がとがります。
ウグイとマルタの違いは何ですか?
産卵期の赤い帯の数で見分けます。ウグイは3本、マルタは黒い幅広の帯の下に1本です。マルタはすべて海に下る魚で、35〜45cmとウグイより大きくなります。産卵期以外は見分けが難しく、確実には頭の感覚管(マルタはえらぶたの下の管と目の下の管がつながる)で区別します。
ウグイは海にもいますか?
います。ウグイには一生を川や湖で過ごす淡水型と、海に下って沿岸や内湾で育ち、産卵のために川を上る降海型がいます。降海型のほうが大きくなります。
ウグイの産卵期はいつですか?
地域によって違いますが、おおむね3〜7月です。水温が11〜13℃に上がると、流れのやや速い瀬の砂利底に群れで集まって産卵します。埼玉県の荒川では4月下旬〜5月上旬、北海道では5〜7月です。
ウグイは酸性の水でも生きられるのですか?
はい。青森県・恐山の宇曽利山湖はpH3.4〜3.8という強い酸性の湖ですが、そこにすむ骨のある魚はウグイだけです。研究では、えらの細胞(塩類細胞)が発達して体の中の酸やイオンの調節をしていると考えられています。
ウグイは食べられますか?刺身にしてもいいですか?
古くから食べられてきた魚ですが、刺身など生で食べるのはやめてください。食品安全委員会の報告書で、ウグイは横川吸虫という人に感染する寄生虫の幼虫を持つ魚に挙げられ、予防法として生食を避けるよう示されています。家庭の冷凍で安全になるとも言えないので、食べるなら中までしっかり火を通してください。
「ハヤ」とウグイは同じ魚ですか?
ウグイの別名として「ハヤ」と呼ぶ地方は多いですが、ハヤはオイカワ・カワムツ・アブラハヤなども含めて川の小魚をまとめて呼ぶ言葉です。「ハヤ」と言われても、ウグイとは限りません。
ウグイを釣るのに遊漁券は必要ですか?
多くの川でウグイは漁業権の対象魚種なので、遊漁券が必要な場合が多いです。ただし対象かどうか、料金や禁漁期間は川を管理する漁協ごとに違います。釣る前にその川の漁協の遊漁規則を確認してください。
ウグイは家で飼えますか?
水族館では展示されていますが、家庭で飼うための公的な指針は見つかりませんでした。確実なのは、全長30〜50cmまで育ちうることです。小さな水槽で一生飼える魚ではないので、成長後の大きさを前提に考えてください。飼えなくなっても川や池には放さないでください。
数値の根拠と情報源

【名前・分類】学名 Pseudaspius hakonensis(FishBase、神奈川県水産技術センター)。旧学名 Tribolodon hakonensis(Sakai・Watanabe・Goto 2020, Ichthyological Research 67 による属の見直し。論文本文は未読で、変更の理由までは確認していない)。日本の資料はコイ科、FishBase はウグイ科(Leuciscidae)。

【大きさ・成長】全長50cmほど(神奈川県)、FishBase も最大全長50cm。降海型30〜35cm・淡水型20〜25cm(北海道水産林務部)。成熟まで2〜4年(長野県水産試験場)。寿命は FishBase に「最高8歳」の記録があるのみで、断定できる資料が無いため載せていない。

【見分け方】婚姻色(赤い縦帯3本・雌雄とも)と、尻ビレの縁・背ビレ前方の鱗数・鰾の形は天野・酒井(2014)水産大学校研究報告63(1) の検索表、神奈川県、農林水産省「田んぼの生きもの調査」資料、北海道。産卵期以外の雌雄の見分け方、幼魚どうしの見分け方は公的資料が見つからなかったため載せていない。

【分布・生態】北海道・コトバンク(日本大百科全書・世界大百科事典)・天野・酒井(2014)。酸性湖への適応は Kaneko ほか(1999)Zoological Science 16(6)。産卵水温・産卵場・同じ場所に産まない習性・ふ化日数は埼玉県水産研究所、多数のオスとメスが入り交じって産む点とふ化約1週間は長野県水産試験場(ふ化日数は両者で食い違うため併記)。

【寄生虫】食品安全委員会「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」(平成22年度)横川吸虫の項。肝吸虫・日本顎口虫・アニサキスの記録は長澤・片平(2013)「日本産ウグイ属魚類の寄生虫目録」生物圏科学52(広島大学)。一般向けの公的資料でウグイを肝吸虫の宿主と名指ししたものは見つからなかったため、本文では「記録がある」とだけ書いた。

【法律】外来生物法の対象外(環境省「特定外来生物等一覧」)。都道府県レッドリストは神奈川県の図鑑ページと、民間の「日本のレッドデータ検索システム」の集計による。漁業権は福島県内水面水産試験場の資料、群馬県・山梨県・大分県の遊漁規則で、対象の川と対象外の川があることを確認。

【飼育】家庭飼育の公的・専門的な指針は見つからなかった。人工採卵・種苗生産は福島県内水面水産試験場の成果資料による。観賞魚としての販売ページも確認できなかったため、価格は載せていない。