オイカワ
Opsariichthys platypus / Pale chub
かんたんに言うと
川の中流から下流でいちばん普通に見られる魚のひとつ。夏の産卵期、オスは赤と青緑の婚姻色になり尻ビレが大きく伸びる。関東ではヤマベと呼ぶ。
撮影: かわむっちゃん / CC BY-SA 3.0
目次
大きさ
10〜16cm
すむ水
淡水
在来種(地域により国内外来)
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
オイカワは、川の中流から下流、湖や池にすむコイの仲間です。三重県の川の調査で「最も多く採れる魚」とされるほど身近な魚で、関東ではヤマベ、西日本ではハエ・シラハエなどと呼ばれてきました。大きさは全長15cmほどで、オスのほうが大きくなります。
ふだんは銀白色の体に、赤っぽい小さな横の斑が7〜10個ほど並ぶ地味な姿です。ところが5〜8月ごろの産卵期になると、オスは体の横が赤と青緑に染まり、頭や尻ビレに白いつぶつぶ(追星)が出て、尻ビレが大きく伸びます。川の魚とは思えないほど派手なこの婚姻色が、オイカワのいちばんの見どころです。メスは婚姻色が出ず、銀白色のままです。
本来の分布は北陸・関東から西の本州と、四国・九州の一部です。琵琶湖のアユを各地の川へ放流したときに混じって広がり、今では東北などにもすんでいます。ただし関東〜東海にはもともと東日本の系統がすんでおり、関東のオイカワがすべて外来とは言えません。
毛ばり釣りやウキ釣りでほぼ一年中ねらえる、川釣りの代表的な対象魚です。毒はありませんが、横川吸虫という寄生虫の幼虫が見つかった報告があるので、生では食べないでください。
毒・危険
オイカワに毒はありません。注意が必要なのは寄生虫です。静岡県の川で調べた研究では、オイカワの約半数(46.6〜56.7%)から、人の腸に寄生する横川吸虫の幼虫が見つかっています。食品安全委員会の資料も、淡水魚・汽水魚を生で食べないことを予防法としています。
甘露煮などで食べられてきた魚ですが、刺身などの生食はしないでください。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
オイカワの見分け方
- ふだんは銀白色で、体の横に赤っぽい小さな横の斑が7〜10個ほど並ぶ。体の真ん中を通る太い縦の帯は無い。
- 体の横の線(側線)が腹側へ下がって弓なりに曲がる。うろこはやや大きめ(側線のうろこが41〜48枚)。
- 尻ビレが長く大きい。とくにオスは産卵期に尻ビレが大きく伸び、メスとの違いがはっきりする。
- 5〜8月ごろのオスは、体の横が赤と青緑になり、頭が黒っぽくなって、頭や尻ビレに白い追星が出る。メスは銀白色のまま。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| カワムツ | カワムツは体の真ん中に太い暗い青色〜黒の縦帯が通り、胸ビレ・腹ビレが黄色。オイカワには縦帯が無く、赤っぽい小さな横の斑が並ぶ。カワムツのほうがうろこが細かい(側線のうろこ46〜55枚、オイカワは41〜48枚)。 |
| ヌマムツ | カワムツに似た縦帯のある魚で、腹ビレの前のふちが赤い。縦帯があるのでオイカワとは区別できる。うろこはさらに細かい(側線のうろこ53〜63枚)。 |
| ハス | ハスは口が大きく「へ」の字に曲がっているので一目で分かる。全長30cmに達し、小魚を食べる。本来の分布は琵琶湖・淀川水系と福井県の三方湖。 |
| ウグイ | ウグイは頭がとがって体が細長く、20〜30cm以上と大きくなる。産卵期の色は赤い縦帯3本で、オイカワの赤と青緑とは違う。オイカワのほうが体が平たく、尻ビレが大きい。 |
分布と生息環境
本来の分布(自然分布)は、北陸と関東から西の本州、四国の瀬戸内側、九州北部です。国外では朝鮮半島西岸・台湾・中国東部・ベトナム北部にもいます。
琵琶湖産のアユを各地の川へ放流した際に混じって運ばれ、東北地方や四国の太平洋側、一部の離島にも広がりました。遺伝子を調べた研究では、日本のオイカワは東日本・西日本・九州の3つの系統に分かれ、関東〜東海はもともと東日本系統の分布域です。濃尾平野(岐阜・愛知)では、ほぼ全域で琵琶湖由来の遺伝子が混じっていました。
関東でも、神奈川県の相模川などで在来の系統が見つかっています。つまり関東のオイカワは、在来の系統と、琵琶湖から運ばれた系統が混じっている可能性がある、というのが正確なところです。
川の中流〜下流、湖や池。ウグイよりも水温が高く、流れのゆるやかな場所を好む。河川改修で平らな瀬が増えた川ではかえって数が増えているとの記述もある(富士市)。
生態(食べもの・産卵)
何でも食べる雑食性で、石についた藻類(ケイ藻・ラン藻)、水生昆虫、水面に落ちた虫、底の小さな生き物などを食べます。すむ場所によって食べるものが変わります。稚魚は流れに乗って河口近くまで下ることもあり、少し大きくなると川を上る傾向があります。
産卵期はおおむね5〜8月です。オスは良い産卵場所をめぐって、ヒレを広げて見せ合ったりからみ合ったりして縄張り争いをします。浅い場所で行うので、川辺から観察しやすい行動です。産卵は、岸寄りの流れのゆるやかな浅瀬の砂利底で、オスとメスが1対で行います。オスがメスに体を押しつけ、尻ビレと尾ビレで砂を巻き上げながら卵を産み、卵は砂利の中(深さ0〜14cm)に埋まります。親は卵を守りません。
大阪府の川の調査では、メス1匹は成熟した卵をおよそ1,000粒持ち、1回に約95粒ずつ、1日に約11回産卵していました。かえった仔魚は、産卵から7〜8日後の真夜中ごろに砂利の中から泳ぎ出てきます。卵や稚魚は、同じオイカワやほかの魚にもよく食べられます。
オイカワの釣り
ほぼ一年中釣れる魚で、川の中流〜下流や湖、都会の川でもねらえます。代表的な釣り方は次のとおりです。
毛ばり(蚊ばり)の流し釣り:小さな毛ばりを数本つけた仕掛けを斜め下流へ振り込み、流れに乗せて扇状に手前へ流します。同じ筋ばかり流すと魚に見切られます。ウキ釣り・ミャク釣り:練りエサや川虫、サシ、ミミズなどをエサにします。ピストン釣り:浅い瀬で、エサをつけた竿先を前後にリズムよく動かして誘う釣り方です。
オイカワは多くの川で漁業権の対象魚種になっていて(三重県・福岡県などで確認)、その川で釣るには遊漁券(釣りの許可証)が必要です。釣れる期間や料金は漁協ごとに違うので、釣る川の漁協の遊漁規則を確認してください。
家で飼えるか
飼うことはできますが、三重県水産研究所は「水槽で何匹か飼うと縄張り争いをするので、意外と飼いにくい」としています。水温・水槽の大きさ・水流など、家庭で飼うときの具体的な目安を示した公的な資料は、今回の調査では見つかりませんでした。
水槽での繁殖は、福岡県の水産試験場で成功例があります。小石を敷いた二重底の産卵床を用意し、水温が20℃を超えると産卵が始まり、かえる割合は最高88%でした。ただし卵を22℃以上の水に一晩置くとかえる割合が下がり、産卵直前に水温を5〜7℃上げないと産まなかったという報告もあり、温度の管理が難しい魚です。家庭の水槽での繁殖例は、公的・学術的な資料では見つかりませんでした。
法律・ルール
オイカワは日本の在来の魚で、外来生物法の規制対象ではありません。環境省のレッドリストにも載っていませんが、東京都・愛媛県・福岡県のレッドリストでは「情報不足」とされています(民間のレッドデータ集計による)。
多くの川で漁業権の対象魚種です。釣る前に、その川の漁協の遊漁規則(遊漁券・釣れる期間・大きさの制限)を確認してください。一部の県では、漁業調整規則で採ってよい大きさや期間が決められています。
ほかの川から運ばれたオイカワが在来の系統と混じってしまう問題が起きています。釣った魚や飼っていた魚を、別の川や池に放さないでください。
基本データ
| 分類 | コイ科(Cyprinidae) |
|---|---|
| すむ水 | 淡水 |
| 別名 | ヤマベ、シラハエ、Zacco platypus |
| 大きさ | 100〜160mm |
知っておきたいこと
学名は、日本の県の図鑑や近年の論文では Opsariichthys platypus(ハスと同じ属)が使われていますが、国際的な魚類のデータベース(Catalog of Fishes・FishBase)は今も Zacco platypus としています。古い資料はほとんど Zacco platypus なので、調べるときは両方で探すと見つかりやすくなります。分類の考え方によっては、コイ科ではなくクセノキプリス科(Xenocyprididae)に置かれることもあります。
「オイカワ」という名前は、琵琶湖のまわりで産卵期のオスを呼んだ方言が由来とされます。福岡県筑後地方の「ハヤの甘露煮」や、岐阜県の郷土料理「いかだばえ」の材料にもなってきました。
温泉水が流れ込んで水温が30℃近くある大分県の金鱗湖では、冬の12月にオイカワが産卵する様子が記録されています。水温さえ高ければ、季節に関係なく産卵できることを示す例です。
よくある質問
オイカワとカワムツの違いは何ですか?
オイカワのオスとメスはどう見分けますか?
ヤマベやハエはオイカワのことですか?
関東のオイカワは外来種ですか?
オイカワの産卵期はいつですか?
オイカワは食べられますか?
オイカワを釣るのに遊漁券は必要ですか?
オイカワは家で飼えますか?殖やせますか?
数値の根拠と情報源
【名前・分類】学名 Opsariichthys platypus は神奈川県水産技術センター淡水魚類図鑑(2025年更新)、Kitanishi・Onikura・Mukai(2018)PLOS ONE 13(1)。Catalog of Fishes と FishBase は Zacco platypus を有効名とし、科をクセノキプリス科に置く。属を移した原著論文は特定できなかった。地方名はコトバンク(日本大百科全書・世界大百科事典)、長野県水産試験場、福岡県の研究報告。
【大きさ】全長15cmほど(神奈川県)、成魚10〜15cm(農林水産省)、オスが大きい(国立環境研究所 侵入生物データベース)。FishBase の最大全長22.5cmは分布欄が大陸のみで日本の個体群のデータか疑わしいため使っていない。寿命は公的・学術資料が見つからず載せていない。
【見分け方】横斑・側線・側線鱗数・婚姻色は国立環境研究所 侵入生物データベース、農林水産省「田んぼの生きもの調査」同定資料、長野県水産試験場、富士市。カワムツ・ヌマムツ・ハスとの違いは同データベースの各種の項。
【分布】国立環境研究所 侵入生物データベース。系統と遺伝子の混入は岐阜大学プレスリリース(2018-01-24)と Kitanishi ほか(2018)。関東の在来系統は神奈川県。北海道に定着しているかは資料で食い違い、確認できなかったため書いていない。
【生態・産卵】産卵期・産卵場は国立環境研究所、長野県水産試験場、福岡県水産海洋技術センター研究報告(佐野ほか 2008)。卵が砂利に埋まる深さ・産卵数・仔魚の浮上は馬場・長田(2005)魚類学雑誌52(2)(英文抄録で確認)。冬の産卵は高濱・大倉(2009)大分大学教育福祉科学部研究紀要31(2)。卵の大きさ・水温ごとのふ化日数は日本の資料が見つからなかった。
【釣り】Honda 釣り倶楽部、DAIWA 釣魚図鑑、コトバンク(日本大百科全書)。釣れる時間帯の裏付けは見つからなかった。
【寄生虫】内田ほか(1999)日本獣医師会雑誌52(抄録で確認)、食品安全委員会「横川吸虫」ハザード概要シート。肝吸虫の宿主として日本の公的資料に挙がっているかは確認できなかった。
【法律】外来生物法の対象外(国立環境研究所の法的扱い欄)。都道府県レッドリストは民間の「日本のレッドデータ検索システム」による(各県の原本と判定理由は未確認)。漁業権は三重県内水面漁場管理委員会の公示、福岡県の研究報告。
【飼育】三重県水産研究所「おさかな図鑑」。水槽繁殖は福岡県水産技術研究所研究報告(浜崎・筑紫 1996)と佐野ほか(2008)。家庭飼育の具体的な目安と販売価格は確認できず、載せていない。
川魚のほかの種
淡水・汽水・海水
ウグイ
Pseudaspius hakonensis
川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。
淡水
カワムツ
Nipponocypris temminckii
体の真ん中に太い黒っぽい縦帯、黄色い胸ビレ・腹ビレが目印の川魚。本来は西日本の魚で、関東・北陸以北では国の外来種リストに載っている。
淡水
モツゴ
Pseudorasbora parva
クチボソとも呼ばれる、池や水路にすむ全長8cmほどの小魚。小さく上を向いた口とヒゲが無いのが目印。肝吸虫がいるので生で食べてはいけない。
淡水
ドジョウ
Misgurnus anguillicaudatus
田んぼや水路の泥底にすむ、口ひげ10本の細長い魚。空気を吸って腸で呼吸する。準絶滅危惧で、外国産ドジョウも各地に広がっている。