海水 在来種 海の魚

メバル

Sebastes inermis / S. ventricosus / S. cheni

かんたんに言うと

大きな目が特徴の、岩場や藻場にすむ魚。2008年にアカ・クロ・シロの3種に分けられ、今の「メバル」は3種の総称。卵ではなく仔魚を産む。冬〜春の夜釣りの人気魚。

水族館(海遊館)でシロメバルとして展示されていた個体。メバルは写真だけでは3種を確定しにくい(同定は水族館の表示による)。

撮影: ゆうき315 / CC BY-SA 3.0

目次

大きさ

20〜30cm

すむ水

海水

在来種

毒・危険

記載なし

公的資料に毒の記載は見つからなかった

メバルは、北海道南部から九州までの沿岸の、浅い岩場や海藻の茂った場所にすむ魚です。漢字で「眼張」と書くとおり大きな目が特徴で、釣れるものは20cm前後が多く、大きいもので30cm台になります。春を告げる魚「春告魚」としても親しまれています。

長いあいだ1種類の魚とされてきましたが、2008年の論文で、アカメバル・クロメバル・シロメバルの3種に分けられました。いま「メバル」と言うときは、この3種をまとめた呼び名です。ただし市場では今も3種を区別せず「メバル」として売られており、漁獲の統計も3種込みです。

3種を見分ける手がかりは、胸ビレのやわらかいすじ(軟条)の数と、新鮮なときの体の色です。ただし数は重なり合い、地域差や3種の間の雑種もいるので、見た目だけで確実に見分けるのは難しい魚です(くわしくは下の「見分け方」)。

もうひとつの特徴は、卵ではなく、お腹の中でかえした仔魚を産む(卵胎生)ことです。冬に仔魚を産み、その時期から春にかけてが釣りの最盛期で、夜の堤防でルアーをゆっくり巻く「メバリング」が人気です。

メバルの見分け方

  1. 目が大きく、口も大きい。目の下の骨(涙骨)に鋭いトゲが2本あり、尾ビレは深く切れ込まない(3種に共通)。
  2. 胸ビレのやわらかいすじ(軟条)の数:アカメバルはふつう15本、クロメバルは16本、シロメバルは17本。15本なら約9割がアカ、17本なら約9割がシロ。16本は判別が難しい。
  3. 新鮮なときの体の色(大人):アカメバルは暗い赤〜茶色で胸ビレ・尻ビレが赤〜オレンジ。クロメバルは背が青黒く腹が銀色で胸ビレが黒い。シロメバルは暗い褐色で腹が淡い。
  4. クロメバルは体の大きさの割に目が小さい(広島県が、生きたまま見分けられる目印として報告)。
  5. 数は重なり合い、九州北部ではシロメバルも16本がいちばん多いなど地域差がある。3種の間の雑種もいて(九州北部で12%)、確実な判別には遺伝子の解析が必要。

似ている魚との違い

似ている魚 どこで見分けるか
カサゴ 同じメバル科だが別の属。背ビレのトゲはカサゴ12本・メバル13本で、カサゴは目の下のふちにトゲが無い。カサゴは岩の隙間でなわばりを持ってほとんど動かず、メバルは岩のまわりを群れで泳ぎ、中層で頭を上にして止まることもある(どちらも仔魚を産む)。くわしくはカサゴとメバルの違い。
ウスメバル 名前は似ているが別の種。沿岸ではなく、沖合の水深40〜150mほどの岩場にすむ赤っぽい魚。
ハオコゼ 全長10cm前後の小さなオコゼで、背ビレが頭の上まで張り出し、背ビレのトゲに毒がある。メバルとの比較を示した資料は見つからなかったが、小さな岩場の魚を素手で触るときは注意。

分布と生息環境

3種をまとめると、北海道南部から九州、朝鮮半島南部にすんでいます。3種とも東北または北海道から九州まで広く共存していますが、すむ環境は種によって少しずつ違います。釣り専門メディアでは、アカメバルはガラモ場・アマモ場、クロメバルは外洋に面した場所や深めの岩礁、シロメバルは内湾に多いとされます(研究機関の資料での裏付けは未確認)。

場所による種の割合の例として、広島県の能美島周辺の定置網ではアカ64%・クロ34%・シロ2%、福島県で獲れたメバルの約96%がシロメバルでした。

浅い岩場や海藻の茂った場所(藻場)。岩のまわりを群れで泳ぎ、中層で頭を上に向けて止まっていることもある。仔魚は海藻の中に集まって育ち、稚魚は流れ藻につく。3種で好む場所が少しずつ違うとされる。

生態(食べもの・産卵)

夜に活発に餌を追い、昼は岩陰や藻場に潜んでいるとされます。若狭湾のシロメバルの調査では、アミ類やエビ類などの甲殻類と、カタクチイワシやシロウオなどの小魚を主に食べていました。

卵胎生で、メスのお腹の中で卵が受精してかえり、仔魚を産みます。仙台湾のシロメバルでは11月に交尾し、12月下旬〜1月初旬に産みます。福岡県の豊前海の調査(3種に分けられる前の「メバル」)でも、産む時期は12〜1月と推定されています。

シロメバルは2歳から成熟し、成熟する最小の大きさは雌雄とも全長19cmほどです。福島県のシロメバルでは5歳以上でメスのほうが大きくなり、確認された最高齢はメス13歳・オス12歳でした。アカメバルとクロメバルの寿命は、今回の調査では確認できませんでした。瀬戸内海中央部では、アカメバルの成長がほかの2種より遅いと報告されています。

メバルの釣り

一年中釣れますが、最盛期は冬から春(おおむね11〜4月)で、夜釣りが中心です。手軽なのは堤防や漁港、大型をねらうなら磯や船です。

メバリング(ルアー):1〜2gほどのジグヘッドに2インチ前後のワームをつけ、ゆっくり巻くのが基本です。小型のミノーやシンキングペンシル、飛ばしウキの仕掛けも使われます。夜の常夜灯まわりは、明かりに集まるプランクトンを追ってメバルが寄るので狙い目とされます。エサ釣り:電気ウキを使ったウキ釣りでエビやイソメをエサにします。船では胴つき仕掛けでエビやイワシを使います。

地域の決まりに注意してください。 香川県では、自分で明かりをともして魚を集める漁法が禁止されていて、「めばる夜焚き釣り」がその例に挙げられています(港の常夜灯の下で釣ることとは別の話です)。広島県では、体長3cm以下のめばるを3月1日〜9月30日に採ることが禁止されています。大阪府は小さなメバルの再放流を呼びかけています。釣る地域の規則を確認してください。

背ビレやえらぶたのトゲは鋭いので、素手で強くつかまないでください。

家で飼えるか

家庭で海水魚として飼う方法や難しさを書いた信頼できる資料は、今回の調査では見つかりませんでした。水族館では展示されていることがあります。

参考までに、漁業の蓄養(獲った魚を網いけすで生かしておくこと)の試験では、クロメバルのほうが配合飼料によく餌付き、アカメバルは餌付いたあとの成長がよい可能性が示されています。アカとクロを一緒にすると、アカは底近く、クロは中〜上層に分かれて泳ぎました。

基本データ

メバルの基本データ
分類メバル科(Sebastidae)
すむ水海水
別名アカメバル、クロメバル、シロメバル
大きさ200〜300mm

知っておきたいこと

3種に分けた論文は、甲斐嘉晃・中坊徹次による Kai & Nakabo(2008)「Taxonomic review of the Sebastes inermis species complex」(Ichthyological Research 55)です。それまで「色の違う3つのタイプ」とされていたものが、形(ヒレのすじの数・うろこの数など)と遺伝子の両方から別の種であると示されました。

公的なサイトでも古い説明が残っていることがあり、「赤・黒・金など色で呼び分けるが、どれも同じ種類」と書いているページもあります。2008年以降の分類とは食い違うので注意してください。

広島県の水産海洋技術センターの水槽実験では、アカメバルは底近くにとどまりがちで、クロメバルは群れで中層〜上層まで泳ぎ回り、よく動いて餌もよく食べました。同じ「メバル」でも暮らし方が違います。

よくある質問

メバルは何種類いますか?
2008年の論文(Kai & Nakabo)で、アカメバル・クロメバル・シロメバルの3種に分けられました。それまでは1種類とされていて、いまの「メバル」は3種をまとめた呼び名です。市場では今も区別せずに売られています。
アカメバル・クロメバル・シロメバルはどう見分けますか?
胸ビレのやわらかいすじ(軟条)の数が、ふつうアカ15本・クロ16本・シロ17本です。15本なら約9割がアカ、17本なら約9割がシロですが、16本は判別が難しく、地域差や雑種もいます。新鮮な大人なら体の色も手がかりになります(アカは暗い赤〜茶色、クロは背が青黒く腹が銀色、シロは暗い褐色)。クロメバルは体の割に目が小さいのも目印です。
メバルは卵を産みますか?
卵は産みません。お腹の中で卵をかえして、仔魚を産む卵胎生です。シロメバルでは11月に交尾し、12月下旬〜1月初旬に仔魚を産みます。
メバルの寿命は?
福島県のシロメバルで、メス13歳・オス12歳の個体が確認されています。アカメバルとクロメバルの寿命は、今回の調査では確認できませんでした。
メバルはいつ、どうやって釣りますか?
最盛期は冬から春で、夜釣りが中心です。夜の堤防でジグヘッドとワームをゆっくり巻く「メバリング」や、電気ウキを使ったエサ釣りが代表的です。香川県では集魚灯を使う夜焚き釣りが禁止されているなど、地域の決まりも確認してください。
小さいメバルは持ち帰ってもいいですか?
都道府県によって決まりが違います。広島県では体長3cm以下のめばるを3〜9月に採ることが禁止されていて、大阪府は小さなメバルの再放流を呼びかけています。釣る地域の漁業調整規則を確認してください。
メバルに毒はありますか?
公的な資料にメバルの毒の記載は見つからず、FishBase も「人に無害」としています。ただし背ビレやえらぶたのトゲは鋭いので、素手で強くつかまないでください。
数値の根拠と情報源

【分類の経緯】Kai & Nakabo(2008)Ichthyological Research 55(3)(Crossref で書誌を確認。本文は有料のため、内容は安武ほか(2021)Ichthy 15(本文)、Eschmeyer's Catalog of Fishes、広島県水産海洋技術センターの資料で確認)。学名と著者は Catalog of Fishes。市場で3種を区別しないことは水産研究・教育機構の資源評価報告書(令和5年度、シロメバル太平洋北部)。

【見分け方】胸ビレの軟条数・体色・判別の限界・雑種12%・九州北部の地域差は安武ほか(2021)。クロメバルの目の小ささは広島県水産海洋技術センター。3種に共通する特徴は Kai & Nakabo(2008)の要旨。ソイ類・ハオコゼとの比較は資料が見つからず載せていない。

【分布・行動】3種の共存は広島県(Kai & Nakabo 2008 を引用)、場所ごとの種の割合は広島県と資源評価報告書(福島県)。3種の好む場所は Honda 釣魚図鑑・釣りコラムのみ。水槽での行動の違いは広島県水産海洋技術センター。具体的な水深は裏付けが無く書いていない。

【生態・繁殖】食べものと成長・最高齢・成熟・交尾と産仔の時期(シロメバル)は資源評価報告書(根本・石田 2006、明田ほか 2012、富川 2001 を引用)。豊前海の産仔期は福岡県の調査。瀬戸内海での成長差は Kamimura(2014)の要旨。1回に産む仔魚の数は研究・公的資料での裏付けが無く載せていない。

【釣り】Honda 釣り倶楽部(釣魚図鑑・釣りコラム)。規則は香川県の遊漁ルール、広島県漁業調整規則、大阪府「小さな魚は海へ返しましょう」と放流の資料。

【安全】3種に毒があるとする公的資料は見つからず、FishBase は「人に無害」。「東北では毒魚として知られる」という記述は出典が無く載せていない。メバルを名指しした寄生虫の公的記載は見つからなかった(食品安全委員会のアニサキスのリスクプロファイル2025にも記載なし)が、それは寄生虫がいない根拠にはならない。

【法律】環境省 海洋生物レッドリスト(2017)。国の資源評価は安武ほか(2021)と資源評価報告書。