マイワシ
Sardinops melanostictus / Japanese sardine
かんたんに言うと
体の横に黒い点が並ぶイワシ。腹の縁に稜鱗がある。カタクチイワシは下あごが小さく、ウルメイワシは目が大きい。アニサキスと常温放置に注意。
撮影: harum.koh / CC BY-SA 2.0
目次
大きさ
15〜28cm
すむ水
海水
在来種
毒・危険
取り扱い注意
下の「毒・危険」を確認
マイワシは、日本の沿岸から沖合の表層を群れで回遊するイワシです。ふつうは15〜20cm前後で、大きくても25〜28cmほど(資料により25〜30cm)、寿命は7歳前後とされます。単に「イワシ」と言えば、ふつうはこの魚を指します。
体の横に黒い点が並ぶ(7個前後が1列。点が多い個体や2〜3列の個体もいる)のが、いちばんの見分けです。腹の縁には「稜鱗(りょうりん)」という鋭い鱗のギザギザがあり、えらぶたに骨のような条線があります(三重県・北海道)。
堤防のサビキ釣りで一緒に釣れるカタクチイワシ(下あごが上あごよりずっと小さく、口が大きい)やウルメイワシ(目が大きく、透明な膜に覆われてうるんで見える)とは、この点で見分けます。
海の中での数は、数十年の単位で大きく増減する魚です。国の2026年度の評価では、太平洋側は親魚が目標より少なく、日本海・東シナ海側は目標を上回っていると、海域で状況が分かれています。
毒・危険
マイワシは毒のある魚としては扱われていません。注意が必要なのはアニサキス(寄生虫)とヒスタミンです。
アニサキス:厚生労働省は、アニサキスが寄生する魚介類の例に「サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、ヒラメ、マグロ、イカ」などを挙げています。生で食べてから1時間〜数日で、激しいみぞおちの痛み・吐き気などが出ます。予防は−20℃で24時間以上の冷凍か、70℃以上(60℃なら1分)の加熱、新鮮なうちに内臓を取り、内臓を生で食べないことです。一般的な料理で使う酢・塩漬け・醤油・わさびでは死にません。症状が出たら医療機関を受診してください。
ヒスタミン:厚生労働省は、ヒスタミン食中毒の原因になる食品の例に、イワシを含む赤身魚を挙げています。魚が死んでから食べるまでの低温管理が重要で、ヒスタミンは熱に強く、調理しても取り除けません。魚はすぐに冷やし、えらと内臓を早く取ります。食べた直後から1時間ほどで、顔や口のまわりが赤くなる、頭痛、じんましんなどが出ます。持ち帰るときの温度や時間の目安は、確かな資料が見つかりませんでした。
釣り場でイワシ類のヒレや棘で刺されるという公的な記載は、見つかりませんでした。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
マイワシの見分け方
- 体の横に黒い点が並ぶ(7個前後が1列。2〜3列の個体もいる)。
- 腹の縁に稜鱗(鋭い鱗)があり、えらぶたに骨のような条線がある。カタクチイワシ・ウルメイワシには稜鱗が無い(三重県)。
- カタクチイワシは、下あごが上あごよりずっと小さく、口が大きく見える。大きくても15〜18cm。ウルメイワシは、目が大きく、透明な膜(脂瞼)に覆われてうるんで見える。体は円筒形。
- 脂瞼はマアジにもよく発達するので、「膜がある=ウルメイワシ」とは決められない。成魚で「黒点が無い=ほかの2種」と言い切れる公的な資料も確認できていない。サビキで一緒に釣れる魚の見分けはアジとサバの見分け方も参考に。
似ている魚との違い
| 似ている魚 | どこで見分けるか |
|---|---|
| カタクチイワシ | 下あごが上あごよりずっと小さく、口が大きく見える。腹に稜鱗は無い。大きくても15〜18cmで、マイワシより小さい。 |
| ウルメイワシ | 目が大きく、透明な膜(脂瞼)に覆われてうるんで見える。体は円筒形で、腹に稜鱗は無い。 |
| マアジ | サビキで一緒に釣れる。尾の付け根にゼイゴ(硬い鱗)が並ぶ。 |
分布と生息環境
日本の周辺に広くすみます。国は太平洋の「太平洋系群」と、東シナ海北部〜日本海北部の「対馬暖流系群」に分けて資源を評価しています(水産庁)。太平洋側では、春は水温の上昇とともに北へ、夏〜秋には三陸〜道東沖まで餌を求めて移動し、秋〜冬に南下して越冬します(北海道・神奈川県)。資源が多い時期は分布が日本海全域やオホーツク海まで広がります。
海の表層を群れで回遊する。沿岸〜沖合。資源が多い時期は分布が広がり、少ない時期は九州・四国・本州の沿岸が中心になる。
生態(食べもの・産卵)
産卵:太平洋側では11月から翌年6月、盛期は2〜4月です(北海道・神奈川県)。四国沖から関東近海の黒潮の内側で産み、卵は水に浮かぶ分離浮性卵です。1回の産卵期に数回産み、総産卵数は1個体で約10万粒とされます(北海道の古い資料)。
成長:北海道の漁獲物では、満1歳で約16cm、2歳で約19cm、3歳で約20cmです。この値は海域や資源の水準で大きく変わります。
食べ物:仔魚は動物プランクトンを食べ、成長すると発達した鰓耙(さいは)で小さな餌をこし取り、植物プランクトンも多く食べます。
資源(2026年度の国の評価):太平洋系群の2025年の親魚量は103.5万トンで、目標(143.2万トン、案)の0.72倍、漁獲圧は目標とする水準の4.43倍でした。1年前の評価(2024年)は目標の1.89倍だったので、1年で判断が逆になっています。対馬暖流系群の2025年の親魚量は114.9万トンで、目標(108.9万トン、案)の1.05倍、漁獲圧は0.37倍です(水産庁)。数字は毎年更新されます。
沿岸への来遊は別の話:国全体の資源が増えても、堤防や沿岸に来るかは年と場所でぶれます。神奈川県の定置網のマイワシは、2026年1〜6月が前年の56%・平年の23%でした。夏〜秋は小型(ヒラゴ〜小羽)が主体の傾向があります(神奈川県水産技術センター)。
マイワシの釣り
堤防のサビキ釣りで、小アジ・カタクチイワシなどと一緒に釣れることがあります。群れが岸に寄っているときは数釣りになりますが、寄ってくるかどうかは回遊次第で、居る年と居ない年があります。釣りメディアには「ほぼ周年だが回遊の有無で決まる」とあり、堤防に寄る時期を示した公的な資料は見つかりませんでした。釣果情報や釣具店で、その日の状況を確かめるのが確実です。
ウロコは薄くてはがれやすく、触るとすぐ傷む魚です。釣ったあとは、常温に置かず、すぐに氷や保冷剤で冷やしてください(理由は下の「毒・危険」の節)。
サビキには、卵巣・肝臓に猛毒があり皮にも強い毒があるクサフグなど、毒のある魚が外道で掛かることもあります。見慣れない魚は素手で触らないでください。
家で飼えるか
家庭で飼うための公的な手引きは見つかりませんでした。水族館の報道には「水槽にぶつかるだけで死んでしまうため、定期的に追加している」という館のコメントがあり、扱いの難しい魚とみられます(報道・確度は低め)。
法律・ルール
種の保存法・外来生物法の対象になっていることを示す資料は見つかりませんでした。国際自然保護連合(IUCN)の評価は「軽度懸念」です(世界のマイワシ類をまとめた Sardinops sagax として、2018年)。水産庁の資源評価では漁獲可能量(TAC)の対象で、令和8管理年度の案は太平洋系群66.1万トン、対馬暖流系群45.3万トンです(2025年10月時点・確定値は未確認)。TAC は漁業者向けの管理で、釣りの個人に数量制限がかかるかは、確かな資料がありません。
釣りの全長制限や禁止期間は、見つかりませんでした。全国の漁業調整規則・遊漁の規則は網羅していないので、釣る地域の決まりを確認してください。堤防や港は、施設ごとに釣り禁止・立入禁止・時間制限があります。
基本データ
| 分類 | ニシン科(Clupeidae) |
|---|---|
| すむ水 | 海水 |
| 大きさ | 150〜280mm |
知っておきたいこと
マイワシは数十年の周期で大きく増えたり減ったりします。漁獲量は1930年代に年160万トンでピークを迎えたあと、1965年には1万トンを下回り、1980年代に再び200万トンを超え、2000年代はごく低い水準まで落ちました(日本大百科全書・北海道・茨城県の資料)。
資源が多い時期は成長が遅く成熟も遅れ、少ない時期は早く成熟します。成熟の年齢は、資源が多い時期は3歳が多く、近年は1歳で成熟が始まり2歳でほとんどが成熟とされます(北海道)。
サイズで呼び名が変わる魚で、三重県では「ひらご(平子)」、高知県では幼魚を「銀虫」、中型を「中羽」、大型を「大羽」と呼びます。高知県の資料には、地域によってはカタクチイワシを「マイワシ」と呼ぶ、とあります。名前だけでは魚種を決められません。
よくある質問
マイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの見分け方は?
イワシは堤防でいつ釣れますか?
イワシは減っているのですか?
釣ったイワシを生で食べても大丈夫ですか?
マイワシの寿命はどのくらいですか?
数値の根拠と情報源
【名前・見分け方】三重県水産研究所(マイワシ・カタクチイワシ・ウルメイワシの魚種紹介)、高知県(平成28年度の資源評価の各魚種)、鳥取県水産試験場「鳥取の魚図鑑」、北海道(資源評価書46・図版)、日本大百科全書。学名は日本の水産資料の表記で、WoRMS・FishBase は Sardinops sagax に含める。FishBase の最大39.5cm・寿命25年は S. sagax 全体の値で使っていない。
【成長・資源】北海道総合研究機構(2020年度 資源評価書)、水産庁・水産研究・教育機構「令和8年度 我が国周辺水域の水産資源に関する評価結果」(2026年9月2日公開)、水産庁 TAC 意見交換会資料(2025年10月)。
【沿岸の漁獲】神奈川県水産技術センター 漁海況情報 第114号・第115号。
【危険・衛生】厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」「ヒスタミンによる食中毒について」(後者は要約での確認)。釣れる時期の記述は釣り専門メディア(確度低)のみ。
海の魚のほかの種
海水
ゴンズイ
Plotosus japonicus
黄色い縦帯とヒゲ8本が目印の海のナマズの仲間。背ビレと胸ビレのトゲに毒があり、死んでいても刺される。夜釣りで釣れたら素手で触らない。
海水
アイゴ
Siganus fuscescens
磯や堤防で釣れる、白い斑点の平たい海の魚。背ビレ・腹ビレ・尻ビレのトゲに毒があり、死んでも刺される。西日本ではバリと呼ぶ。
海水
ハオコゼ
Paracentropogon rubripinnis
浅い藻場や岩場にいる全長10cmほどの小さなオコゼ。背ビレのトゲに毒があり、刺されると数時間〜数日痛む。死んでも毒は残るので素手で触らない。
海水
シロギス
Sillago japonica
砂浜や内湾の浅い砂地にすむ細長い銀色の魚で、投げ釣りの代表的な対象。毒は無い。よく似たアオギスは絶滅危惧種で、色では見分けられない。