アブラボテ
Tanakia limbata / Oily bitterling
かんたんに言うと
幼魚のころから体が黒ずむ小型のタナゴ。口ひげ1対・側線は完全。準絶滅危惧で、東日本などには持ち込まれた国内外来の個体群もいる。
撮影: Ffish.asia / CC BY 4.0
目次
大きさ
4〜7cm
すむ水
淡水
在来種
毒・危険
記載なし
公的資料に毒の記載は見つからなかった
アブラボテは、濃尾平野より西の本州、淡路島、四国の瀬戸内側、九州などにすむ小型のタナゴで、全長は4〜7cmほどです(国立環境研究所)。平野部の細い流れや用水路の岸ぎわにすみ、幼魚のころから体が黒ずんでいるため、ほかのタナゴと区別しやすいとされています。
ヤリタナゴと同じ仲間で、口ひげは1対、体の横の線(側線)は最後まで続きます。繁殖期のオスは体が暗い黄緑褐色になり、国立環境研究所は「いわば重油色」と書いています。背ビレと尻ビレのふちは黒くなります。
ほかのタナゴと同じく生きた二枚貝のえらに卵を産みます(春〜夏)。川の改修や二枚貝の減少などで数を減らし、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧です。一方で、もともといない東日本や四国の太平洋側などに持ち込まれた個体群もあり、そちらは国内由来の外来種として扱われています。
アブラボテの見分け方
- 幼魚のころから体が黒ずんでいる。メスも褐色で、ほかのタナゴより全体に暗く見える。
- 口ひげは1対、側線は最後まで続く(ヤリタナゴと同じ)。肩の斑や体の横の縦じまは無い。
- 繁殖期のオスは暗い黄緑褐色になり、背ビレ・尻ビレのふちが黒い。腹の中央に黒い線が出る。
- ヤリタナゴとの違いは、ヤリタナゴがヒレのふちの朱色と長い口ひげ、アブラボテが黒ずんだ褐色。ただし雑種(ヤリボテ)は外見で確実には分けられない(確実な判別は遺伝子)。くわしくはタナゴの種類と見分け方へ。
似ている魚との違い
分布と生息環境
もともとの分布は、濃尾平野より西の本州、淡路島、四国の瀬戸内側、九州(北〜中部)、壱岐・福江島です。日本海側は川ごとに飛び飛びです(国立環境研究所・環境省)。四国の太平洋側や東日本などにいるものは、人の手で持ち込まれた国内外来の個体群で、環境省の外来種リスト第2版(2026年9月)に「防除検討外来種」として載っています。
平野部の細い流れ・用水路の岸べ、湧水を水源とする細流。琵琶湖には少なく、湖の周辺の細流にすむ。
生態(食べもの・産卵)
繁殖:春から夏(3〜8月。地域や資料で幅があります)。マツカサガイ・カタハガイ・オバエボシガイ・ドブガイの仲間などイシガイ科の二枚貝のえらに、1回に数粒の卵を産みます。オスは産卵に使う貝を中心になわばりを持ち、少数の貝を強く守ります(国立環境研究所・兵庫県立人と自然の博物館)。
食べ物:ユスリカの幼虫など小さな底の生き物が中心の雑食です。
寿命:1年で成熟し、寿命は2年ほどとされます(兵庫県)。
産卵に使う二枚貝の幼生は、ヨシノボリの仲間に一時的に付いて育ちます。川の改修でこの関係が壊れると、貝もタナゴも戻るのに長い時間がかかります(兵庫県の報告では、改修から14年たっても貝が戻らず本種も減ったままの川があります)。
アブラボテの釣り
タナゴ釣りの対象になることがありますが、準絶滅危惧の魚です。外来種リストには「『たなご』として一部地域で漁業権魚種の可能性」とあるので、釣る場所の県や漁協の決まりを確認してください。県によっては条例で捕まえることを禁止している種もいます。釣った魚を別の川や池に放さないでください。放した先で、もともといる集団と交雑するおそれがあります。
家で飼えるか
アブラボテを家庭で飼うための公的な手引きは見つかりませんでした(水温・水槽の大きさ・餌の目安は確認できていません)。ほかのタナゴと同じく殖やすには生きた二枚貝が必要ですが、貝の家庭での飼い方を書いた公的資料もなく、アブラボテが使う貝の一つカタハガイは2025年に国内希少野生動植物種になっています。野外から貝を採ってくることはすすめられません。飼えなくなっても、川や池に放さないでください。
法律・ルール
環境省レッドリスト2020:準絶滅危惧(2020年版が最新)。種の保存法の国内希少野生動植物種でも、天然記念物でもありません。県のレッドリストでは、京都府で準絶滅危惧、兵庫県でランクCです。県の条例で捕獲を禁じている地域があるかもしれないので、捕る前にその県の決まりを確認してください。
もともといない地域に放せば外来種になります。自然分布のある地域でも、別の川の個体を放すと遺伝子が混ざります。
売るとき:Yahoo!オークションは環境省レッドリストの準絶滅危惧種も個人の出品を禁止しています(2026年10月時点)。メルカリとYahoo!フリマは生き物の出品自体が禁止です。
基本データ
| 分類 | コイ科(Cyprinidae) |
|---|---|
| すむ水 | 淡水 |
| 大きさ | 40〜70mm |
知っておきたいこと
ヤリタナゴとは自然の中でも雑種ができます。西日本の共存する11か所のうち8か所で交雑個体が見つかり、雑種(ヤリボテ)は子を残せることが多いとされます(兵庫県立人と自然の博物館)。
愛媛県の松山平野では、福岡県西部の個体群に由来する可能性が高いアブラボテが入り込み、在来のヤリタナゴと交雑して遺伝子が混ざっています(環境省の研究費の報告書)。もともとの個体群と、持ち込まれた個体群では、守るべきものが違います。
アブラボテは動物食が強く、ユスリカの幼虫など小さな底の生き物を主に食べます。藻類を食べる割合が高いヤリタナゴとは、同じ水路にすんでいても食べ物がずれています(愛媛の研究)。
よくある質問
アブラボテとヤリタナゴの違いは?
アブラボテは絶滅危惧種ですか?
アブラボテの国内外来とは何ですか?
アブラボテを売ったり飼ったりしてもいいですか?
数値の根拠と情報源
【名前・分布・特徴】国立環境研究所 侵入生物データベース(形・婚姻色・産卵・食べ物・分布)、環境省 生態系被害防止外来種リスト第2版(2026年9月11日)、兵庫県レッドリスト(寿命・産卵する貝・減少の要因)、京都府レッドデータブック、Eschmeyer's Catalog of Fishes。国外の分布は資料で食い違うため書いていない。
【生態・交雑】兵庫県立人と自然の博物館(2019年, 共存するタナゴ類・雑種ヤリボテ)、環境省 環境研究総合推進費の報告書(愛媛県でのヤリタナゴとの交雑・食べ物の違い)。
【法律】環境省レッドリスト2020、国内希少野生動植物種の一覧(令和7年2月現在)、Yahoo!オークション ガイドライン細則(2026年10月28日改定時点)、メルカリの禁止出品物。長崎県の条例指定は、原本が確認できず書いていない。
川魚のほかの種
淡水・汽水・海水
ウグイ
Pseudaspius hakonensis
川の上流から河口、海の沿岸まで広くすむ日本の代表的な川魚。春の産卵期は雌雄とも赤い縦帯が3本出る。寄生虫がいるので生では食べない。
淡水
オイカワ
Opsariichthys platypus
川の中流から下流でいちばん普通に見られる魚のひとつ。夏の産卵期、オスは赤と青緑の婚姻色になり尻ビレが大きく伸びる。関東ではヤマベと呼ぶ。
淡水
カワムツ
Nipponocypris temminckii
体の真ん中に太い黒っぽい縦帯、黄色い胸ビレ・腹ビレが目印の川魚。本来は西日本の魚で、関東・北陸以北では国の外来種リストに載っている。
淡水
モツゴ
Pseudorasbora parva
クチボソとも呼ばれる、池や水路にすむ全長8cmほどの小魚。小さく上を向いた口とヒゲが無いのが目印。肝吸虫がいるので生で食べてはいけない。