海水 在来種 毒・危険あり 海の魚

トラフグ

Takifugu rubripes / Tiger puffer

かんたんに言うと

背と腹に小さなトゲがあり、胸ビレの後ろの黒い紋が白く縁取られる大型のフグ。肝臓・卵巣は食べられない部位。釣っても自分で調理しない。

トラフグ(水族館の展示個体)。胸ビレの後ろの黒い紋が白く縁取られている。

撮影: Totti / CC BY-SA 4.0

目次

大きさ

40〜80cm

すむ水

海水

在来種

毒・危険

毒・危険あり

下の「毒・危険」を確認

トラフグは、太平洋側は室蘭以南、日本海西部、黄海、東シナ海にすむ全長80cm以上になる大型のフグです(東京都中央卸売市場の衛生検査所・厚生労働省)。背と腹に小さなトゲがあり、胸ビレの後ろの上に大きな黒い紋があって、その周りが白く縁取られます。尻ビレは白か紅色です。

日本のフグでは最もよく知られた高級魚で、養殖も行われています。天然のトラフグは資源が減っていて、国の評価では、2023年漁期の漁獲量は135トン、親魚量は国が示した目標水準の案を下回っています(水産研究・教育機構, 2025年)。

フグ毒(テトロドトキシン)を持つ魚です。国は、肝臓・卵巣・腸を食べられない部位としています。釣れたトラフグを自分で調理したり、人に譲ったりしないでください。

毒・危険

トラフグもフグ毒(テトロドトキシン)を持つ魚です。 釣ったトラフグを自分で調理したり、人に譲ったりしないでください(厚生労働省)。

毒のある場所:研究データをまとめた表では、トラフグの肝臓は「強毒」(最大で1g当たり180マウス単位)、卵巣も「強毒」(最大250)まで測定されています。皮と精巣は「無毒〜弱毒」の範囲、筋肉は「無毒」でした(厚生労働科学研究, 2014年度)。国は肝臓・卵巣・腸を食べられない部位としています。個体ごとに毒があるかどうかは、見た目でも調理でも見分けられません。

法律上の扱い:国は、筋肉・皮・精巣を、都道府県が認めた「ふぐ処理者」が有毒部位を確実に取り除いた場合に限って食用として認めています。これは釣った人や買った人が自分でさばいてよいという意味ではありません。

養殖のトラフグでも肝臓は食べられません:無毒の餌で育てれば毒を持たないとする研究はありますが、国の食品安全委員会は2005年と2017年に、養殖トラフグの肝の安全性は確認できないとしました。厚生労働省は「天然・養殖を問わず、肝臓は有毒部位」として、2023年12月には、資格のある営業者が養殖トラフグの肝臓を客に出した食中毒を受けて、改めて注意を呼びかけています。個人が安全を確かめる方法はありません。

雑種の毒:トラフグとマフグの雑種では、肝臓で最大1g当たり1333マウス単位、皮で基準を超える毒が出た例があります(厚生労働科学研究, 2023年度)。雑種は見分けがつきにくいため、国は両親種を鑑別できない雑種は確実に排除するよう求めています。

毒の性質と症状:毒は加熱・塩もみ・水にさらすことでは消えず、有効な解毒剤はありません。食べてから20分〜3時間ほどで唇・舌先・指先のしびれが出て、運動まひ・呼吸困難へ進みます。人工呼吸で呼吸を保てば延命できるとされるので、しびれなどの症状が出たら、すぐに医療機関へ。相談は日本中毒情報センターの「中毒110番」(大阪 072-727-2499/つくば 029-852-9999、24時間)。

刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。

トラフグの見分け方

  1. 背と腹に小さなトゲがある(マフグ・ショウサイフグには無い)。
  2. 胸ビレの後ろの上に大きな黒い紋があり、周りが白く縁取られる(マフグの紋には白い縁取りが無い)。
  3. 尻ビレは白か紅色。尻ビレが黒いのは別種の「カラス」。ゴマフグはトゲがあるが、尻ビレがレモン色。
  4. 幼魚は背が白の虫食い模様で、成魚と印象が違う。トラフグとマフグ・カラスなどの雑種がいて、この組み合わせの特徴を崩すので、素人が見分けるのは難しい。尾ビレは公的資料に記述が無く、手がかりにしない。フグの比べ方はフグの種類と見分け方へ。

似ている魚との違い

似ている魚 どこで見分けるか
マフグ トゲが無く、尻ビレが黄色。胸ビレの後ろの黒い紋に白い縁取りが無い。50cmほど。トラフグとの雑種もいる。地域によっては「マフグ」がトラフグを指すこともある。
ゴマフグ トゲがあるのはトラフグと同じだが、尻ビレがレモン色で、背と体側に藍青色の小さな点が密にある。40cmほど。
ショウサイフグ トゲが無く、尻ビレは白。胸ビレの後ろに黒い紋が無く、尾ビレの下のふちが白い。35cmほど。

分布と生息環境

太平洋側は室蘭以南、日本海西部、黄海、東シナ海にすみます(東京都・厚生労働省)。専門メディアには北海道の全沿岸までとするものもあり、資料で食い違います。近年は東京湾口(浦賀水道)にも漁場ができつつあり、福島県でも延縄で水揚げされています。

沿岸から沖合の砂底。砂に潜る行動が知られる(水族館の解説)。産卵期は沿岸の水深30〜50mほどの、潮の流れが速く粗い砂や小石の多い海底。

生態(食べもの・産卵)

産卵:3〜6月ごろ(水産研究・教育機構は4月周辺、広域の管理方針は3〜6月と、資料で幅があります)。沿岸の水深30〜50mほどの、潮の流れが速く粗い砂や小石の多い海底に卵を産みつけます。

成長:1歳で平均37cm、5歳で53cmほど(調査海域で異なる)。雄2歳・雌3歳で成熟し、寿命は10年以上とされます。

食べ物:水族館の解説には甲殻類・貝類・ヒトデ・小魚などとありますが、野外で胃の中身を調べた公的な資料や論文は見つかりませんでした。

雑種:トラフグはマフグなどと自然の中で雑種ができます。東京湾口の遊漁船で釣れた402個体を調べた研究では、雑種が7.96%で、雑種の次の世代まで見つかりました(厚生労働科学研究, 2023年)。福島県から東京湾口では、多いときで1割ほどがトラフグまたはマフグに混ざって獲れたとされます。

資源:天然のトラフグ(日本海・東シナ海・瀬戸内海系群)は、2023年漁期の漁獲量が135トン、資源量が794トンで、いずれも減少傾向です(水産研究・教育機構, 2025年)。親魚の量は、国が示した目標水準の案(577トン)を、2022年・2023年漁期とも下回りました。放流も行われていますが、「放流だけで資源が回復する状況ではない」と水産庁は説明しています。

トラフグの釣り

東京湾口(浦賀水道)では、遊漁船でトラフグが釣れています(2023年)。釣れても、自分でさばいたり、人に譲ったりしないでください。トラフグは雑種も混ざるので、見た目で毒の有無は判断できません。

遊漁(釣り)での全長の制限や禁漁期は、県の漁業調整規則や遊漁船のルールで決まっていることがあります。今回は原本を確認できていないので、出かける地域の決まりを自分で確認してください。国の管理方針にある「全長30cm以下は再放流」は、漁業者のふぐ延縄に向けたものです。

家で飼えるか

水族館では飼育展示されていますが、家庭で飼うための公的・学術的な資料は見つかりませんでした。全長80cm以上になる魚です。飼えば毒が抜けて食べられるようになる、という資料はありません。研究で「無毒の餌で育てれば毒化しない」とされたのは、水を殺菌した専用の施設での結果で、家庭の水槽には当てはまりません。

基本データ

トラフグの基本データ
分類フグ科(Tetraodontidae)
すむ水海水
大きさ400〜800mm

知っておきたいこと

トラフグは、親になると生まれた産卵場に戻って産卵するとされます。主な産卵場は瀬戸内海で、有明海・若狭湾・七尾湾などにもあります。ただし漁場では、別の産卵場で生まれた個体が混ざって泳いでいて、区別せずに獲られます(水産研究・教育機構)。

雄は2歳、雌は3歳で成熟し、寿命は10年以上とされます。1歳で平均37cm、5歳で53cmほどに育ちます(調査した海域で異なります)。

地方名に「マフグ」と呼ぶ地域があり(下関・広島・明石・高知・大分)、別種のマフグと混同しやすい魚です。シロ、ホンフグ、モンフグなどと呼ぶ地域もあります(厚生労働省の通知)。名前でフグの種類は決まらないので、標準和名で確かめてください。

よくある質問

トラフグの見分け方は?
背と腹に小さなトゲがあり、胸ビレの後ろの大きな黒い紋が白く縁取られ、尻ビレは白か紅色です(東京都・厚生労働省)。尻ビレが黒ければ別種のカラスです。ただしマフグなどとの雑種がいて、この特徴をくずすので、素人が見分けるのは難しいとされます。
釣ったトラフグは食べられますか?
釣った人が自分で調理して食べてはいけません。厚生労働省は、釣ったフグを自分で調理しない、人に譲らない、資格のある人に処理を頼めないなら食べないよう呼びかけています。国は、筋肉・皮・精巣を、ふぐ処理者が有毒部位を取り除いた場合に限って食用としています。
養殖のトラフグなら肝臓も安全ですか?
安全とは言えません。無毒の餌で育てれば毒を持たないとする研究はありますが、食品安全委員会は2005年と2017年に、養殖トラフグの肝の安全性を確認できないとしました。厚生労働省は天然・養殖を問わず肝臓は有毒部位としていて、2023年には養殖トラフグの肝臓を客に出した食中毒を受けて注意を呼びかけています。
トラフグの毒はどこにありますか?
研究データでは、肝臓・卵巣は「強毒」の範囲、皮と精巣は「無毒〜弱毒」の範囲でした。筋肉は「無毒」の範囲でしたが、毒の有無は個体で違い、見た目では分かりません。毒は加熱・塩もみ・水さらしでは消えません。
トラフグは絶滅危惧種ですか?
環境省のレッドリストに載っている記録は見つかりませんでした。国の資源評価では、天然のトラフグの資源量・漁獲量は減少傾向で、親魚の量は国が示した目標水準の案を下回っています。国際自然保護連合の評価は準絶滅危惧です。
数値の根拠と情報源

【名前・見分け方】厚生労働省の通知(フグの名称一覧・地方名・トラフグとカラスの中間種の注)、東京都中央卸売市場 衛生検査所、厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」、鳥取県ふぐ処理師試験。カラスの分類(別種か同種か)は資料で食い違う。

【分布・資源・成長】水産研究・教育機構(令和6年度 資源評価, 2025年7月公表)、水産庁の広域資源管理方針、水産庁の資源管理に関する検討会(2023年)。分布の北限は公的資料(日本海西部まで)と専門メディア(北海道全沿岸)で食い違う。天然と養殖の割合は、トラフグ単独の公的統計が取れず書いていない。

【毒・中毒】厚生労働省(有毒魚の部位の表・フグの衛生確保の通知・Q&A)、厚生労働科学研究(2014年度 部位別毒性の表、2023年度 雑種の調査)、食品安全委員会(2005年・2017年の養殖トラフグの肝に関する評価)、長崎大学(2010年, 養殖トラフグの肝の毒性の研究)、日本中毒情報センター。

【法律・販売】厚生労働省「ふぐ処理者の認定基準」、Yahoo!オークション ガイドライン細則(2026年10月28日改定時点)、メルカリの禁止出品物。IUCN は FishBase・Catalog of Fishes。