マフグ
Takifugu porphyreus / Purple puffer
かんたんに言うと
体にトゲが無く、尻ビレが黄色く、胸ビレの後ろに白い縁取りの無い大きな黒い紋があるフグ。肝臓・卵巣は猛毒。北海道で多く獲れるようになった。
撮影: Totti / CC BY-SA 4.0
目次
大きさ
25〜50cm
すむ水
海水
在来種
毒・危険
毒・危険あり
下の「毒・危険」を確認
マフグは、北海道からサハリン以南の日本海、北海道以南の太平洋、黄海・東シナ海にすむ、全長50cmほどになるフグです(東京都中央卸売市場の衛生検査所・厚生労働省)。体にトゲが無くなめらかで、尻ビレが黄色く、胸ビレの後ろに大きな黒い紋があります。トラフグの黒い紋は白く縁取られますが、マフグの紋には白い縁取りがありません。
猛毒のフグです。研究データでは肝臓・卵巣が「猛毒」、皮が「強毒」の範囲で測定されています。フグ中毒の検査記録が残っていた事例を集めた国の研究では、原因の種類としてマフグがいちばん多く出てきます。
近年は北海道で獲れるフグが増え、2019〜2022年は北海道のフグ類の漁獲量が全国1位になりました。2024年に北海道の市場の「ふぐ」を調べると、すべてがマフグでした(北海道立総合研究機構)。
毒・危険
マフグはフグ毒(テトロドトキシン)を持つ猛毒のフグです。 釣ったマフグを自分で調理したり、人に譲ったりしないでください(厚生労働省)。
毒のある場所:研究データをまとめた表では、肝臓・卵巣が「猛毒」、皮が「強毒」の範囲で測定されています(厚生労働科学研究)。東京都は、マフグは肝臓の毒が多いとされているとしています。岩手県大船渡で調べた36匹では、卵巣で最大1g当たり4350マウス単位、肝臓で3116の毒が出ました。国の基準で食用として認められている部位は限られていて、それも都道府県が認めた「ふぐ処理者」が有毒部位を確実に取り除いた場合だけです。その部位でも、大船渡の調査では基準を超えた個体がありました(凍らせた試料で、解かすときに毒が移った可能性が指摘されています)。
雑種の毒:トラフグの皮は食用にできますが、マフグの皮はできません。そのトラフグとマフグの雑種で、皮から基準を超える毒が出ています(厚生労働科学研究, 2023年)。
中毒の例:2022年9月、青森県で飲食店の従業員がマフグと推定されるフグの肝臓を自分で食べ、意識を失って入院しました。2012年3月には鳥取県で、販売業者から買ったフグを家庭で煮て食べ、しびれが出ました(資格の無い人が処理したマフグ)。
毒の性質と症状:毒は加熱・塩もみ・水にさらすことでは消えず、有効な解毒剤はありません。食べてから20分〜3時間ほどで唇・舌先・指先のしびれが出て、運動まひ・呼吸困難へ進みます。人工呼吸で呼吸を保てば延命できるとされるので、しびれなどの症状が出たら、すぐに医療機関へ。相談は日本中毒情報センターの「中毒110番」(大阪 072-727-2499/つくば 029-852-9999、24時間)。
刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
マフグの見分け方
- 背と腹にトゲが無く、なめらか。
- 尻ビレが黄色い(ショウサイフグ・クサフグは白)。
- 胸ビレの後ろの上に大きな黒い紋があり、白い縁取りが無い(トラフグの紋は白く縁取られる)。
- 模様は成長で大きく変わり、幼魚は背に白い斑点があってコモンフグに似る(コモンフグは背にトゲがある)。白い斑点が残ったまま大人になるものもいる。トラフグとの雑種もいて、素人が見分けるのは難しい。フグの比べ方はフグの種類と見分け方へ。
似ている魚との違い
分布と生息環境
サハリン以南の日本海、北海道以南の太平洋、黄海・東シナ海にすみます(東京都・厚生労働省)。北海道ではフグ類の漁獲が2016年ごろから増え、日本海では6〜7月、オホーツク海では10〜11月に多く獲れています(北海道立総合研究機構)。宮城県の定置網でも獲れています。
日本海では水深100m以上の大陸棚が中心とされる(山口県の標識放流)。北海道では日本海の大型定置網、オホーツク海の底建網で多く獲れる。
生態(食べもの・産卵)
山口県沖の研究では、産卵期は2〜3月とされ、隠岐・佐渡・北海道など日本海の各地に産卵場があると考えられています(天野ほか 2008 が引用した資料)。日本海では、2月から8月にかけて次第に東へ、10月から2月にかけて西へ動く傾向がありました。あまり動かない群れと、対馬海峡から北海道まで大きく動く群れがあると考えられています。
年齢や成長、寿命を調べた資料は見つかりませんでした。北海道立総合研究機構も、マフグの研究は全国的に少なく、成長や回遊などの基礎的な知見が足りないとしています。野外で何を食べているかの研究も見つかりませんでした。
雑種:トラフグとマフグの雑種は古くから知られ、福島県から東京湾の入り口あたりでは、多いときで1割ほどがトラフグやマフグに混ざって獲れています(厚生労働省)。東京湾の入り口で釣られたフグのDNAを調べた研究では、雑種の次の世代まで見つかっています。
家で飼えるか
水族館では飼育展示されていますが、家庭で飼うための公的・学術的な資料は見つかりませんでした。全長50cmほどになる魚です。飼えば毒が抜けて食べられるようになる、という資料はありません。
法律・ルール
フグの処理(有毒部位を取り除くこと)は、都道府県知事などが認めた「ふぐ処理者」か、その立ち会いのもとでしか行えません。鳥取県や茨城県の中毒は、店で買った処理していないフグを家庭で調理したものでした。処理していない丸のままのフグは買わないでください(厚生労働省)。
2021年度から国の資源評価(日本海ブロック)の対象に加わり、調査が進められています。国際自然保護連合の評価は「低懸念」です。環境省・都道府県のレッドリストに載っている記録は見つかりませんでした。
基本データ
| 分類 | フグ科(Tetraodontidae) |
|---|---|
| すむ水 | 海水 |
| 大きさ | 250〜500mm |
知っておきたいこと
山口県が日本海南西部で標識を付けて放流したマフグは、多くが山口県沖で再び獲れましたが、島根県より東の海、北海道沖や岩手県沖まで移動したものもいて、移動の最長距離は約1,430kmでした(天野ほか 2008)。再び獲れたものの95%は水深100〜200mの大陸棚で、山口県沖では産卵期の2〜3月に多く獲れています。
2021年度からは、国の資源評価(日本海ブロック)の対象に加わり、調査が始まっています。ただ、県によってはマフグだけの漁獲統計が無く、ほかのフグを含む数字を使わざるを得ないとされていて(水産研究・教育機構)、資源の状態はまだよく分かっていません。
地方名は「ナメラ」「ナメタ」などのほか、東京ではマフグを「ショウサイ」と呼ぶことがあり、逆にショウサイフグやトラフグを「マフグ」と呼ぶ地域もあります(厚生労働省の通知)。名前でフグの種類は決まりません。
よくある質問
マフグとトラフグの違いは?
マフグは釣ったら食べられますか?
マフグの毒はどこにありますか?
北海道でフグが獲れるのはなぜ?
数値の根拠と情報源
【名前・見分け方】厚生労働省の通知(フグの名称一覧・地方名)、東京都中央卸売市場 衛生検査所、厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」、鳥取県ふぐ処理師試験。体の色の書き方は東京都(暗い緑褐色ではっきりしない斑紋)と厚生労働省(小さな黒い点が密で黒褐色に見える)で違う。
【分布・回遊・資源】北海道立総合研究機構(2025年, 北海道のフグ類の漁獲とマフグ)、天野ほか(2008, 山口県の標識放流)、水産研究・教育機構(令和5年度 資源評価調査状況報告書「マフグ日本海」)、島根県水産技術センター年報(2021年度に資源評価の対象に追加)、宮城県水産技術総合センター(2023年)。
【毒・中毒】厚生労働省(有毒魚の部位の表・自然毒のリスクプロファイル)、厚生労働科学研究(2014年度 部位別毒性の表と中毒の検査記録の集計、2015年度 大船渡の調査、2023年度 雑種の毒)、青森県(2022年の事例)、鳥取県(2012年の事例)、日本中毒情報センター。
【法律】厚生労働省「ふぐ処理者の認定基準」。IUCN は FishBase。
海の魚のほかの種
海水
ゴンズイ
Plotosus japonicus
黄色い縦帯とヒゲ8本が目印の海のナマズの仲間。背ビレと胸ビレのトゲに毒があり、死んでいても刺される。夜釣りで釣れたら素手で触らない。
海水
アイゴ
Siganus fuscescens
磯や堤防で釣れる、白い斑点の平たい海の魚。背ビレ・腹ビレ・尻ビレのトゲに毒があり、死んでも刺される。西日本ではバリと呼ぶ。
海水
ハオコゼ
Paracentropogon rubripinnis
浅い藻場や岩場にいる全長10cmほどの小さなオコゼ。背ビレのトゲに毒があり、刺されると数時間〜数日痛む。死んでも毒は残るので素手で触らない。
海水
シロギス
Sillago japonica
砂浜や内湾の浅い砂地にすむ細長い銀色の魚で、投げ釣りの代表的な対象。毒は無い。よく似たアオギスは絶滅危惧種で、色では見分けられない。