海水 在来種 毒・危険あり 海の魚

ヒガンフグ

Takifugu pardalis / Panther puffer

かんたんに言うと

赤みのある褐色に黒い斑点、トゲが無く皮に小さなイボのあるフグ。肝臓・卵巣は猛毒、皮やヒレ・精巣にも毒。東京ではアカメフグとも呼ぶ。

ヒガンフグ(水族館の展示個体)。褐色の地に黒い斑点がたくさんあり、体にトゲが無い。

撮影: Totti / CC BY-SA 4.0

目次

大きさ

25〜35cm

すむ水

海水

在来種

毒・危険

毒・危険あり

下の「毒・危険」を確認

ヒガンフグは、日本各地の沿岸の岩礁まわりにすむ、全長35cmほどになる中型のフグです。背と体の横は赤みを帯びた褐色に黒い斑点が多く散らばり、腹は白く、体にトゲが無く、皮に小さなイボのような突起があるのが公的資料の挙げる特徴です。斑点の大きさや数は個体によって違います。

猛毒のフグです。研究データでは肝臓・卵巣が「猛毒」、皮・精巣が「強毒」に当たる値まで測定されています。ヒレは皮に含まれ、食品衛生法で売ることが禁止された部位です(三重県)。さらに、岩手県の越喜来湾・釜石湾、宮城県の雄勝湾で獲れたヒガンフグは、筋肉にも強い毒を持つ個体が多いため、国の基準で全身が食用不可になっています。

東京では「アカメフグ」とも呼ばれ、釣り船で狙われることもあります。ただし「アカメフグ」は別の種類のフグの標準和名でもあります。厚生労働省は、釣ったフグを自分で調理しない、人に譲らないよう呼びかけています。

毒・危険

ヒガンフグはフグ毒(テトロドトキシン)を持つ猛毒のフグです。 釣ったヒガンフグを自分で調理したり、人に譲ったりしないでください(厚生労働省)。

毒のある場所:研究データをまとめた表では、肝臓・卵巣が「猛毒」、皮・精巣が「強毒」、筋肉が「弱毒」の範囲で測定されています(厚生労働科学研究)。ヒレは皮に含まれ、売ることが禁止された部位です。2021年には三重県伊勢市で、ヒレが付いたまま売られていたヒガンフグが回収されました。国の基準で食用として認められている部位は限られていて、それも都道府県が認めた「ふぐ処理者」が有毒部位を確実に取り除いた場合だけです。

三陸の一部の海は全身が食用不可:岩手県の越喜来湾・釜石湾、宮城県の雄勝湾で獲れたヒガンフグ(とコモンフグ)は、筋肉にも強い毒を持つ個体が多いため、国の基準の対象から外されています。2014年の三陸産12匹の調査では、筋肉の毒は平均で1g当たり94マウス単位、最大648マウス単位で、報告は肉でも100g未満で致死量に達する個体が多いとしています。

中毒の例:三重県は、釣ったヒガンフグ(推定)の肝臓を家庭で食べた例や、飲食店が有毒な皮を客に出した例を紹介しています。

毒の性質と症状:毒は加熱・塩もみ・水にさらすことでは消えず、味やにおいでも分かりません。有効な解毒剤はありません。食べてから20分〜3時間ほどで唇・舌先・指先のしびれが出て、運動まひ・呼吸困難へ進みます。人工呼吸で呼吸を保てば延命できるとされるので、しびれなどの症状が出たら、すぐに医療機関へ。相談は日本中毒情報センターの「中毒110番」(大阪 072-727-2499/つくば 029-852-9999、24時間)。

刺された・食べて具合が悪いときは、自己判断せず医療機関に相談してください。

ヒガンフグの見分け方

  1. 背と体の横は赤みを帯びた褐色〜暗い褐色に、黒い斑点がたくさん散らばる。斑点の大きさ・数は個体差が大きい。
  2. 背と腹にトゲが無く、かわりに皮に小さなイボのような突起がある(コモンフグ・クサフグには小さなトゲがある)。
  3. 胸ビレの後ろの上に黒い斑が無い(クサフグにはある)。
  4. トゲが無いのはショウサイフグも同じで、大きなショウサイフグは模様が点状になる。フグは雑種も多く、素人が見分けるのは難しい(厚生労働省)。フグの比べ方はフグの種類と見分け方へ。

似ている魚との違い

似ている魚 どこで見分けるか
ショウサイフグ 同じく体にトゲが無いが、茶色の地に濃い褐色の虫食いのような模様(大きな個体では点状)で、尻ビレが白い。紛らわしいので模様だけで判断しない。
コモンフグ 褐色に丸い白点で、背と腹に小さなトゲがあり、尻ビレが淡い黄色。三陸の同じ3海域で、ヒガンフグと同じく全身が食用不可。
マフグ トゲが無いのは同じだが、暗い緑褐色にぼんやりした模様で、尻ビレが黄色、胸ビレの後ろに黒い紋がある。全長50cmほど。
アカメフグ 標準和名「アカメフグ」は別の種類のフグ。東京ではヒガンフグをアカメフグと呼ぶので、名前だけでは種類が決まらない。

分布と生息環境

日本各地の沿岸(太平洋側では北海道南部まで)から、黄海・東シナ海、朝鮮半島やロシアの日本海沿岸にすみます(厚生労働省・Catalog of Fishes)。

日本各地の沿岸の岩礁まわり。東京の市場には鮮魚でまとまって入荷する(東京都)。

生態(食べもの・産卵)

産卵:長崎県大村湾では1984年5月中旬、大潮の上げ潮の時間帯に、小さな砂浜で群れが産卵しているのが観察されました。卵は砂の上にばらまかれます。下関市の水族館の研究では、2月下旬に山口県の日本海側の定置網で獲れた親が、3月下旬に人工授精できる状態になりました。卵は沈んで物にくっつく卵(直径約1.3mm)で、水温約20℃で約9日でふ化しました(土井ほか 2014)。

同じ研究では、ヒガンフグの稚魚は5種のフグの中でゴマフグに次いで速く育ち、稚魚どうしのかみ合いが最も強く、若い魚は人影に近づいてくる行動が見られました。野外で何を食べているか、寿命が何年かを示した資料は見つかりませんでした。

ヒガンフグの釣り

東京湾などでは、フグを専門に狙う釣り船が「アカメフグ」としてヒガンフグを狙うことがあります(釣り専門メディア)。三重県は、釣ったヒガンフグ(推定)を家庭でさばき、肝臓を食べた中毒の例を紹介しています。

釣れたら、厚生労働省の呼びかけどおり自分で調理しない・人に譲らない、資格のある人に処理を頼めないなら食べないでください。釣り船での扱いは都県によって違うので、乗る船と地域の保健所に確認してください。

家で飼えるか

水族館では飼育展示され、下関市の水族館では人工授精から育てた記録もありますが、家庭で飼うための公的・学術的な資料は見つかりませんでした。全長35cmほどになる魚で、稚魚の時期にかみ合いが強かったという記録があります。飼えば毒が抜けて食べられるようになる、という資料はありません。

基本データ

ヒガンフグの基本データ
分類フグ科(Tetraodontidae)
すむ水海水
大きさ250〜350mm

知っておきたいこと

名前は春の彼岸のころにちなむといわれます。釣り専門メディアは彼岸のころの大潮に波打ち際で産卵するからとし、ほかに彼岸のころによく獲れるからという説明もありますが、由来を説明した公的な資料や辞典は見つかりませんでした。確認できた産卵の記録は、長崎県大村湾で5月中旬(1984年)、韓国で3月下旬〜5月中旬です。

長崎県大村湾の観察では、大潮の上げ潮の時間帯に、小さな砂浜で100匹足らずの群れ(大部分がオス)が昼も夜も産卵していました。産卵場所にはクサフグが集まり、ヒガンフグの卵を食べていたと報告されています(西川・道津 1990、要旨)。

呼び名にも注意が必要です。ヒガンフグの地方名として挙がる「ナゴヤ」「モフグ」は、ショウサイフグやコモンフグの地方名にも使われています(鳥取県ふぐ処理師試験)。名前でフグの種類は決まりません。

よくある質問

ヒガンフグは食べられますか?
釣った人が自分で調理して食べてはいけません。厚生労働省は、釣ったフグを自分で調理しない、人に譲らないよう呼びかけています。国の基準で食用にできる部位は限られていて、それも資格のある「ふぐ処理者」が処理した場合だけです。ヒレは売ることが禁止された部位で、三陸の一部の海で獲れたものは全身が食用不可です。
アカメフグとヒガンフグは同じですか?
東京ではヒガンフグを「アカメフグ」と呼び、釣り船の「アカメフグ釣り」もヒガンフグのことです。ただし「アカメフグ」という標準和名の別のフグもいるので、名前だけでは種類が決まりません。
ヒガンフグの名前の由来は?
春の彼岸のころにちなむといわれ、彼岸のころに産卵するからという説と、よく獲れるからという説があります。由来を説明した公的な資料は見つかりませんでした。確認できた産卵の記録は春(長崎県大村湾で5月中旬、韓国で3月下旬〜5月中旬)です。
ヒガンフグとほかのフグの見分け方は?
ヒガンフグは赤みのある褐色に黒い斑点が多く、体にトゲが無く、皮に小さなイボのような突起があります。コモンフグとクサフグには小さなトゲがあり、白い点の模様です。トゲが無いのはショウサイフグも同じで、尻ビレが白いのが目印とされます。ただしフグは雑種も多く、素人が見分けるのは難しいとされています。
数値の根拠と情報源

【名前・分類】厚生労働省の通知(フグの名称一覧)、Eschmeyer's Catalog of Fishes。アカメフグの呼び名は東京都中央卸売市場 衛生検査所と鳥取県ふぐ処理師試験。地方名の重なりは鳥取県ふぐ処理師試験。名前の由来は釣り専門メディア(Honda 釣り倶楽部)の説明のみで、公的な裏付けは見つからなかった。

【見分け方】東京都中央卸売市場 衛生検査所、厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」、鳥取県ふぐ処理師試験。

【繁殖・成長】西川・道津(1990, 大村湾での産卵の観察, 要旨)、土井ほか(2014, 下関市立しものせき水族館でのフグ5種の人工授精と飼育)、韓国の産卵期は Han ほか(2001, 要旨)。

【毒・中毒】厚生労働省(有毒魚の部位の表と三陸3海域の除外・自然毒のリスクプロファイル)、厚生労働科学研究(2014年度 部位別毒性の表と三陸産の調査)、三重県(中毒・違反の事例の紹介、2021年の自主回収)、日本中毒情報センター。

【釣り・法律】釣り船のアカメフグ釣りは Honda 釣り倶楽部。厚生労働省「ふぐ処理者の認定基準」。IUCN は FishBase。